WBCのチームにまとまりがあるわけ/大阪人と行儀の悪さ/小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』読了
Posted at 09/03/16 PermaLink» Comment(3)» Tweet
今朝。5時台に起きて家事をいろいろやった。頭の中で考えていて自分の書くことについての構想が具体的に一歩前進したのでそれについてかなり長いメモを書き、散歩に出かける。志演神社まで歩いてお参りする。「今月の言葉」は伊藤東涯の「人の長短は見易く己の是非は知り難し」。然り。「自分を知ること」が最も難しく、そして大事だということだと思う。
ステレオのレコード針を交換したいと思い、どこで扱っているのかネットで調べていて、たまたま見たニュースサイトでWBCの対キューバ戦の途中経過を知る。5-0で日本が勝っている。先日の韓国戦で悔しい思いをし、そのあと切り替えるのに時間がかかったので今日は見ないでおこうと思ったのだが、勝っていることが分かったので見ることにした。松坂は素晴らしいピッチング。そのあと岩隈・馬原・藤川とつないで完封リレー。日本の投手陣はほとんど失点がない。素晴らしい。野手では出場機会に恵まれていない川崎が9回に代打でヒットを打ち、さらに生還したのがよかった。次の試合で出られるとよいのだが。最終的に6-0。次の試合も勝ち残ってもらいたい。
今回のチームは雰囲気がいいので最後まで勝ち残れるといいなと思う。北京五輪のとき、どうしてあんなに雰囲気がよくなかったのだろうといろいろ考えていたのだが、やはりチームの結束を固める時間が足りなかったことがよくなかったのではないかと思った。今回はシーズン前なので選手・監督・コーチが帯同して同じチームでいる時間が長い。またイチローや松坂のように核になる選手がいることも大きい。北京五輪ではその両方とも欠けていて、五輪優勝に国中で結束した韓国に勝てなかったのだろう。星野監督の責任ばかりがクローズアップされるが、そればかりではないと最近は考えるようになった。
そういえば昨日は大相撲を見た。大阪の春場所、満員御礼。大阪府立体育会館を売却・廃止すると橋下知事が言っていたが、どうするのだろうか。施設自体が残ればその買主が大相撲の興行を続けることに賛成すれば問題はないが。解説の北の富士が言っていたが、大阪は朝青龍人気が凄いらしく、話題は彼のことばかりなのだという。他の地域とは一風違う空気があるようだ。モンゴルでも朝青龍のほうが白鵬より圧倒的に人気があるというが、共通したものがあるのだろうか。大阪では多少行儀が悪くてもあのくらいならいいという雰囲気だというが、まあそれは関西の気風としてわからなくもない。しかし船場とか本来の大阪の重鎮といった人たちはどう見ているのだろうか。そういえば船場吉兆の行儀の悪さはさすがに見逃されなかったけれども。
相撲自体は横綱二人は別格の強さだといっていたがそんな感じだった。魁皇が元気がないのが残念。日馬富士は四股名が。「日」という字のあとにはなるべく簡単な文字が来たほうが納まりがいい。「日田」とか「日本」とか。日と馬、って日本とモンゴル、というイメージだけど、そのあとに富士だしなんか馬がつけたしっぽい。勝てないのは名前のせいのような気がしてしまう。春馬富士でももっと躍動感がある。あるいは日馬だけでも。…やはり馬という字を使うのが難しいのか。奔馬とかなら字が納まるのだが。
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土曜日に小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』を読了した。やはり基本的にはメルヘンという感じがする。『博士の愛した数式』もメルヘン的であったが。リトル・アリョーヒンという存在がやけにリアルなのは、唇に移植した脛の皮から生える脛毛の存在があるからだが、そこもまた物語の要素として捨象するとやはり完全にメルヘンになる印象がある。
ほぼ全編、素敵な人が出てくるのだが物語が転回するときに不吉な運命が実現したり邪悪な存在が現れたりする。「大きくなることは不幸だ」というテーゼは、どういう意味なのかまだよくわからないところがある。単純に成長拒否、ピーターパンシンドローム的なものというよりは、もっとフェティッシュなものである気がする。
物語の中で気になる邪悪な存在が三人出てくる。一人は天才的な指し方をしながら破滅的で、リトルアリョーヒンを暴力的に破壊する。二人目は人間チェスでグロテスクな手を指し、取った駒である人間を我が物にする。三人目は、海底チェスクラブを主宰する事務局長自身。このそれぞれの邪悪さは、読んでいて村上春樹の小説の邪悪な登場人物、特に『ねじまき鳥クロニクル』の綿谷ノボルを思い出させる。非人間的な邪悪なオーラを放っているだけで実在感がない。このあたりは小川が村上の影響を強く受けていることを感じさせられる。基本的に幻想世界での出来事のような感じがするところが、悪と対峙する場面でもメルヘン性を感じさせることにつながるのだと思う。
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リトル・アリョーヒンは相手の下品さにペースを乱されながらも、「この対局には必ず勝たねばならない、相手を打ちのめすためではなく、相手の吐き出す毒を浄化するために、どうしても勝ちが必要なのだ」と思う。チェスというものの清浄な価値を信じる主人公に肩入れしたくなるのは、私自身が清浄な存在というものを信じているからだと思った。
リトル・アリョーヒンと何度も対戦し、彼をリトル・アリョーヒンたらしめた老婆令嬢と、主人公は老人専用マンション「エチュード」で再開する。すっかりチェスを忘れきっている老婆令嬢にリトル・アリョーヒンはチェスを教える。老婆令嬢は「チェスを初めて教えてくれたのが、あなたでよかった。私、チェスが好きになりそう。だってあなた、教えるのがとっても上手だもの」という。私はこの場面が一番好きだ。そして間もなく、静かにストーリーが終わることを予告しているようにも思う。耕治人の『どんなご縁で』を思い出す。
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最後の終わり方は、『星の王子様』のようだと思った。小川は全編すべて、ちゃんとリアリティのある設定をしているのだが、本質は本当にメルヘンだと思う。それはチェスという詩的なゲームを舞台に設定しているからだろう。それからもう一つは、澄んだ雰囲気の中に現実的な笑いという要素を混ぜないからでもあると思う。笑いという要素は、人を現実の場に立ち戻らせる力がある。この小説の中にはある意味滑稽と思われなくもないところもいくらでもあるのだが、それはむしろその滑稽さの本来持っている存在自体が持っている悲しさのようなものの方に大きく針が傾いているから、全く笑いを起こさせない。村上春樹と同じく、表現に関心はさせられるのだけど、心の動きを笑いという方向に持っていかないのが小川洋子の作劇術の、かなり根本にあることなのではないかと思った。
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"WBCのチームにまとまりがあるわけ/大阪人と行儀の悪さ/小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』読了"へのコメント
CommentData » Posted by 江草乗 at 09/03/21
こんにちは
そうだそうだ!と思いつつ読ませてもらいました。
ありがとうございます。
もう一度読み返してみます。
「星の王子さま」ももう一度読んで確認したくなりました。
耕治人の『どんなご縁で』は知らない本だったので
確かめてみます。
CommentData » Posted by kous37 at 09/03/21
コメントありがとうございます。
『星の王子様』を思い出した、というのは、夢のように消えてしまった、というようなニュアンスなんで、同意いただけるかどうかは?なんですが。
いわゆる認知症をあつかった作品やエピソードというのは結構胸を打つものがあります。白洲正子が『遊鬼』で書いていた福原麟太郎の臨終時のエピソードなどもいいなあと思います。
CommentData » Posted by kous37 at 09/03/22
今回もいろいろな記事を読んでいると原監督が批判されたりいろいろありますが、何とか勝ち残っているのにこれだけいわれるんだから大変なことだなと思います。星野監督のやり方にも問題はあったでしょうが、監督だけに責任を帰しても日本プロ野球の向上にはつながりませんものね。大局観に立った大人の反応を、もっと多くの人がしていくべきだと思いました。