学問は私を自由にする
Posted at 09/02/28 PermaLink» Tweet
朝9時。天気がいい。小鳥がさえずっているのが聞こえる。土曜日の朝。
FMはいつもと違う番組で、N響の特集をやっている。開局何十周年とかの記念だったと思う。
自分と学問の関係について少し考えてみた。学問との付き合いというのは別に大学に入ってから始まったわけではない。考えてみたら物心ついたときから始まっているのだ。いや、極端に言えば物心つく前から始まっていたのかもしれない。
もともと私は不思議なものが好きだ。多分それは物心もつかないうちからそうで、でもそれは多分誰でもそうなんだと思うが、いつまでもそればっかりにはこだわっていられないのが普通なんだと思うが、私はどうもそういうものにつかまって逃げられなくなってしまう質なんだと思う。たとえば私は宇宙というものがあって、それが果てしがない、無限の存在だということを知ったときに、ものすごく興奮を感じた。不思議なものがあるということに対する純粋な感動と興奮というものをありありと繰り返し感じることができる。
また歴史に関する本も、戦前の子ども向け歴史の本を田舎の小さな小学校の図書館で読んだり、転校した小学校の棚にあったおそらくは先生向けの漢文の『史記』を読んで、返り点の読み方を理解して漢文が読めるということを発見しつつ、「三皇本紀」の中国の超古代の皇帝たちの不可思議な文字と名前に感動したりしていた。
私は子どものころから天文学と歴史が好きで、大学を選択するときも天文学のある理学部に行くか、歴史学のある文学部に行くか迷って最終的に文学部を選択した。今朝考えていてわかったのだが、天文学に対する関心というのは空間の不思議に対する関心で、歴史に対する関心というのは時間の不思議に対する関心だったのだ。我ながら何故こんな全然関係ない二つの学問のあいだで迷うのか不思議だったのだが、時間と空間ということで自分の中では一貫性が存在したのだということに気がついて驚いた。
まあだから、私の学問への志というのはそれで身を立てるとかそういう身の振り方的なところからきているわけではなく、時間と空間の不思議を思う存分味わって感動し興奮したいというきわめて単純で原初的なところから発しているのだ。
学問は私を自由にする。宇宙の秘密を解き明かしていく天文学や、自分が生まれる遥か昔のことを物語る歴史の本を読んでいることに、私は自由を感じた。今思えばそれが私の、学問に対するスタンスの原点だった。
同じように子どものころ読んだ「ナルニア」にしても「ドリトル先生」にしても、想像力を無限に羽ばたかせてくれる感じが好きだった。
もっと知りたい。もっと理解したい。そういう欲望が、自分を突き動かして、たくさんの本を読み漁ってきたのだろう。何しろ空間と時間と想像力といえばあらゆることが包摂されてしまうから。
辛い環境にあるときも、本を読めばその辛さを忘れ、自由を味わうことができた。それは小説世界に沈潜することではなく、知らないことを知り、理解していく知的興奮そのものだった。何でもかんでも知りたかったので、小学生のころに離婚訴訟のときの慰謝料請求権について書かれた文章とかまで読んだりしていたから、私の話を聞いている周りの人たちは何を考えているのかわからなかったに違いないと思う。
指導ということも原点はその、知らなかったことを知った喜びを他の人にも伝えたい、というところから始まっているのだと思う。
不思議なものに対する憧れがすべての出発点だ。それは誰にでも共通することだと思うけれども、生命として人間が生きているときに、欲望として何がその人を突き動かすかというのは、結局人それぞれなんだろう。しかし純粋に「知る」ということは確かに、喜びの一つであると思う。
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