真理とか真実とか/謡のドラマツルギー

Posted at 09/02/10

昨日。夕方日本橋に出かける。山本山でお抹茶とねりきり。お抹茶は久しぶりだ。河岸を変えて栄太楼へ。久しぶりにぜんざいを食べた。かなりボリュームがあった。和の甘味尽くし。日本橋の丸漸、大手町の丸善と梯子をしてMCカフェでフォカッチャサンド。

友人といろいろな話をしたが、話をして思ったのは、私はその友人ほど真理についてこだわりがないということ。その友人はその真理が本当であるのか何重にも疑い、それを確かめようとするのだが、私はそこまで追究する気にならない。そこまで信じたいと思わないしだからそこまで疑おうとも思わない。あまりそういうことに関心がないのだ、ということがわかった。今までは、ほかの友達たちと比べたら自分は真理とか真実というものにこだわるなあと思っていたのだけど、その人に比べれば全然そんなことはない。実はそうなんだということに気づいたのが自分にとっての大きい発見だった。

今朝は6時前に起きていろいろ片付けたりしていたらモーニングページもブログも書かないうちに出発の時間が迫ってきてしまい、簡便に済ませることになってしまった。まあ今書けたからいいのだけど。

文藝春秋 2009年 03月号 [雑誌]

文藝春秋

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10時半出発、丸の内丸善に寄って、ふと芥川賞作品が掲載された文藝春秋が出てるんじゃないかと思って雑誌のコーナーを見たら出ていた。21世紀になってからの芥川賞作品は読破したのでこれもやはり読もうと思って買った。まだ未読だが。

風姿花伝 (日本の古典をよむ)

小学館

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特急の中で『風姿花伝・謡曲名作選』を読む。花伝書の部分は読了。後半に行けば行くほど面白くなった感じ。第六花修、第七別紙口伝の部分はいろいろと刺激的。自分は芝居をしていたことがあるので全体的に面白いのだけど、このあたりにくると有名なフレーズも多く、審美的な思想の側面からも読めるし、実践的、むしろ処世術的な側面もあっていろいろな読み方ができるところが面白いのだと思う。

特に印象に残ったのは、『「強き」美や「幽玄」の美は、似せる対象を離れて別に存在するものではない。』というくだり。(=原文では「強き・幽玄と申すは、別にあるものにあらず」)これは小林秀雄の有名な「美しい花がある、花の美しさというものはない」という言葉とまったく同じだ。この小林の言葉自体が能の鑑賞の後の感慨なのだから、この花伝書の言葉を自分なりに消化した末の言葉だったのかもしれない。

続いて謡曲の『忠度』を読む。今までちゃんと謡曲を読んだことがなかったのだけど、面白くて正直びっくりした。今まで謡曲にこんな明確なドラマツルギーがあるとは知らなかったのだ。実際にお能を見に行ったことは何度かあるが、謡の部分が理解できていなかったので、ドラマが理解できていなかったのだ。

平家が滅びて後、忠度の歌への執心のみが桜の形をとって生き残り、千載集に名を載せて欲しい一心で俊成ゆかりの僧のもとに老人の態をして現われ、そうがその正体を知った後にその霊の実態を現す。そして自らの死と死後の執心をドラマチックに語り、そしてその妄執も思いを伝えたことで晴れ、冥界に帰っていく。

これは物語や怪談、あるいはマンガなどでもよく出てくるパターンだが、その原型は複式夢幻能にあったのかと初めて得心した。ドラマ成立のパターンだけでいえば、『拝み屋横丁顛末記』と同じだ。もちろんそんな単純なものではないし深い教養のバックグラウンドと趣の深さが兼ね備えられたものだけれども、しかしそういうものだけでなくちゃんと演劇的なドラマ性があってそのことによって成り立っているのだということを初めて認識した。これは逆に謡曲を読まないとわからなかっただろう。正直謡は聞き取れないことが多いし。

しかしそれを理解できたことで、江戸時代の武士たちが教養として謡をやっていたということも理解できるし、方言の差異の著しい江戸時代末期に謡の言葉が幕末の志士たちの全国共通語として機能したという話も実感をもって頷ける。松岡正剛が謡はハイパーなメディアだというようなことを書いていたが、ようやくその意味が得心した。

まあ私も、最初は歌舞伎のセリフや長唄もほとんど聞き取れなかったのだから、謡だって慣れてくれば聞き取れるんだろうなあと思う。また機会があったらお能もどんどん見てみたいなあと思った。

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