日本とフィリピン
Posted at 09/01/16 PermaLink» Comment(13)» Tweet
昨日はいくつかあった懸案のいくつかが大体いい方向に行きそうになったのでかなり安心した感がある。そのせいか、今日は疲れが出ていて、あまり積極的に物事をやる気にならない。寒いことも拍車をかけている。今朝はマイナス10度くらいだろうか。電熱線を巻いているのだが水道は凍った。昼くらいまでは出ないだろうなあ。しかもポットのお湯も切れている。さっさとどこかに出かけた方がいい感じもする。
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『フィリピンの事典』をところどころ拾い読みする。国家といえば、だいたい支配的な民族がいてそれが主体になって国家を形成するというのが普通の国民国家だと思うが、(日本は元より朝鮮半島も中国もそうだろう。カンボジア、ベトナムなどもそうだ。)フィリピンにはその概念は当てはまらないようだ。読んだ限りでは、いくつかの民族(というか言語集団)から成る「低地キリスト教徒」という集団があり、彼らはタガログ語やセブアノ語を話すおおむねカトリック教徒で、スペイン植民地以来の共通した文化基盤を持っていて、彼らがフィリピン国家の主体だということのようだ。フィリピンにはルソン島北部のイゴロットと呼ばれるいくつかの小数民族集団や南部のイスラム教徒がいて、彼らは文化的・社会的にも統合されているとはいえない印象を受けた。
総じて、フィリピンというのは国家としての凝集力が弱い感じがする。普通少数民族はいてもそれは多数派の支配民族の、少なくとも力による支配はかなり実効的に及んでいることが多いと思うのだが、フィリピンの場合は核の民族集団の凝集力も弱く、また必然的な結果として周縁の民族への支配力も弱い感じがする。
私は西洋史専攻なので、国家というものは国民国家を標準形としてみるわけだが、非西欧社会の国家というものは存在として国民国家を基準にしてもかなりかけ離れたものが多いんだろうという感じがわかった。アンダーソンが『想像の共同体』で、まったく違った文化的出自を持つ人たちが同じオランダ植民地下で教育などを通じてネットワークが形成されることによってインドネシア国家を作っていく過程を書いているようだが(サマリー的なものを読んだだけなので「ようだ」としかいえないが)フィリピンはそうした外的な規制力をスペインからもアメリカからも完全には与えられていないように思う。
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また、フィリピンでは軍の地位が低いということも、『想像の共同体』の理論に当てはまらないところだろう。中国などの例にみるように軍は反植民地闘争の輝かしい歴史を持っていることが多いのだが、フィリピンの場合はもともとマッカーサーが創設に関与した独立準備政府の軍であり、むしろ独立運動を抑圧する側の存在だったということで、エリートは軍に志願しないのだという。これはかなり特殊な例だろう。しかし考えてみたらこれは自衛隊のケースとまったく同じであり、占領下でマッカーサーに作られた自衛隊はアメリカの使い走り的に見られたりする傾向があるわけで、そういう意味では自衛隊が完全にアメリカから自立しエリートが幹部クラスを形成するようにならない限り、アメリカに牛耳られる状況に変化はないだろう。もちろんそう簡単にアメリカがそれを許すはずはないのだが。ああ、フィリピンのことを考えると日本がいかに植民地的な状況なのかがわかってきて胸糞が悪くなるな。
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"日本とフィリピン"へのコメント
CommentData » Posted by shakti at 09/01/16
>フィリピンのことを考えると日本がいかに植民地的な状況なのかがわかってきて胸糞が悪くなるな。
右翼の人は、本当ならば、改憲と叫ぶばかりでなく、国名の変更を要求すべきなんですよ。天皇を日本の元首にするだけでは不十分なのです。すなわち、「日本皇国」か「日本王国」あるいは「日本帝国」とか。(もっともどれをとっても西洋語に訳すのは難しいが)
というのは国名に政体が明記されないのは日本とカナダ、豪州くらいのものだからです。あるいはかつての南ア連邦とかマレー連邦でしょうか。いずれも植民地の名称です。なおフィリピンもいちおうは共和国と明記されています。(もっとも通称PI Philippine Islandsで国名じゃなくて地名にすぎない) 南アは、ボーア人の反動政府が人種隔離政策をやるにあたって、イギリス連邦に反旗をふりかざし、南ア共和国となったのです。なおマレー連邦は今の名前は何だっけ? スルタンが持ち回りで国王をやっています。
大日本帝国から日本国への移行は国体の無いクニというか地理名称(Japan Islands)への格下げだったのです! 誇りある独立を勝ち取ろうとするならば、日本皇国、日本王国、日本共和国、日本連邦共和国から選べ(笑)。決して「日本」や「日本連邦」にしてはいけない。(連邦と連邦共和国とが、じつはかなり大きな違いであることは、最近わっかりました)。
CommentData » Posted by shakti at 09/01/16
>フィリピンの場合はもともとマッカーサーが創設に関与した独立準備政府の軍であり、むしろ独立運動を抑圧する側の存在だったということで、エリートは軍に志願しないのだという
これは誤読じゃないのかな。フィリピンのエリートは植民地主義的なのだから、軍の親米的性格には問題がないからです。むしろ文民優位の風土のもとで、軍人の昇進等には議員のコネが必要だったりして、独自の権力をもてないところに原因があるというのが定説のはず。
CommentData » Posted by kous37 at 09/01/16
>shaktiさん
コメントたくさんありがとうございます。
何でフィリピンのことをこんなに読もうと思ったのか分らなくなっていたのですが、そういえば日刊マニラ新聞の社主で野口整体の創始者・野口晴哉の長男の野口裕哉の発言を月刊全生で読んだからだということを思い出しました。彼のフィリピンのとらえ方の角度がわかりやすかったからです。
国名に関しては、クウェートの英語の正式表記はState of Kwaitですし、マレーシアはMalasiaのみなので、ほかにも政体表示のない国名はあるんじゃないかと思います。日本語で「日本国」なのだから、State of Japan でもいいかもしれません。名を体を顕すというから、もちろん本来は右翼は大日本帝国に名称を戻すことを主張すべきだと思います。色々な意味で「日本」のみというのは妥協の産物ではあります。まあ徳川時代は日本帝国(日米和親条約とか)でしたのでそれでもいいでしょうけど。ちなみにこの場合の皇帝は将軍ですが。
「連邦」に関しては、ロシアはRussian Federationですし、そんなに問題があるようにも思えませんが…ただ日本連邦はないでしょう、内部に自治共和国とかがあるわけではないですから。
「フィリピンの事典」によると、(執筆者は江橋正彦という人)「フィリピンの国軍は、ほかの多くの発展途上国のそれと異なり、国内政治から伝統的に遠ざかってきた。むしろ、フィリピン社会では、「二流市民」として扱われ、国民の尊敬を得られなかった。タイヤインドネシアのようにエリート学生が進んで士官学校に入る現象は起きていない。軍の不人気の原因の一つは、フィリピン軍創設の経緯とけっして無関係ではない。軍の創設は正式にはコモンウェルス時代の1935年であるが、軍の前身である国家警察軍(PC)の創設はアメリカ植民統治開始期の1901年にさかのぼる。PCは宗主国であった「アメリカ合衆国に奉仕する軍」であり、ほかの近隣アジア諸国のような独立戦争を戦った「国民のための軍」ではなかった。むしろ独立運動を弾圧する側にあり、人びとから「売国奴」の汚名を着せられ、しばしば革命軍の攻撃を受けた。」とあります。
以上の記述をまとめてそう解釈したわけですが、やや方向が違ってましたかねえ。
CommentData » Posted by shakti at 09/01/17
>以上の記述をまとめてそう解釈したわけですが、やや方向が違ってましたかねえ。
そうですね、やや間違った解釈だったと思います。
一つの原因は、江橋さんの書き方にあろうかと思います。おそらく氏は、フィリピン軍人への軽蔑心もあって、いかにダメなのかを書きたかったのでしょう。気持ちは、よく分かります。
しかし、フィリピンの独立国家が革命によって樹立され正当化されたものではないのです。またフィリピン人は植民地根性の固まりのなさけない奴らですから、フィリピン軍を軽蔑するなんてできっこないのです。
つまり、エハシさんは、一つの文章の中に、フィリピン人一般の見方と、フィリピン愛国主義(左翼活動家)の見方との双方をごちゃまぜにしてしまっているのです。後半部は愛国主義の立場から軍を論じてしまっているのです。
私は愛国主義と左翼運動家に同情する立場ですからエハシさんの気持ちは分かります。だが、誤解を与える表現だといえます。
CommentData » Posted by kous37 at 09/01/17
なるほどなるほど。まあ言えば記述に左翼バイアスがかかっているということですね。まあよくあることですが、そういう誤解を思わずしてしまっているところはほかのことでもあるかもしれないと思いました。
同じように「官僚」のところを読むと、官僚は人事の停滞が著しく、有力な官僚は有力政治家とパトロン・クライアント関係を結ぶ傾向がある、とあります。ですから文民優位といってもその文民とは官僚ではなく、地方有力者との個人的なコネクションが支配するという点では軍人も官僚も同様だということなのでしょうか。
それにしても、どうも「事典」を読んでも一面的な理解になってしまいますね。そうしたことが多面的に書かれている概説書のようなものを読まないとどうも理解が偏ってしまうんだなあと思いました。
CommentData » Posted by shakti at 09/01/17
>文民とは官僚ではなく、地方有力者との個人的なコネクションが支配するという点では軍人も官僚も同様だということなのでしょうか。
そうです。官僚国家ではなく、議会制国家です。議員が力が強いのです。大臣よりも上院議員のほうが強い。(全国で24人)下院議員だって、なかなかのものです、もちろんですが。
これはアメリカの影響です。
CommentData » Posted by shakti at 09/01/17
>左翼バイアスがかかっているということですね
外国のことを理解することの難しさは、文脈を理解することの難しさですよね。フィリピンだけでなく、多くの国でかなり大変だと思います。たとえば、アフリカ人にホモはいますかと訊くと、全員が全員一人もいないとこたえる。それを鵜呑みにしていると、ホモはほとんどいないか厳しく抑圧されているんだなと思ってしまうが、そうではない等々。
他には例えば、鶴見良行がフィリピン人共産主義者に次のように説明されました。「フィリピン人はアメリカに植民地化されたため、アメリカ人に対する憎しみが強い。だから、たとえ脱走兵だろうとアメリカ人を手助けしようとはしないのだ」と。(これはベ平連脱走兵プログラムの中野出来事らしい)。知らないと、あ、そうなのか!とか思ってしまう。しかし、全然逆。植民地化されたからアメリカ人が大好きで、あこがれの的です。ちょうど日本人がディズニーを大好きなように。。。
なお、この場合の「左翼バイアス」という言葉は、「民族主義バイアス」と言い換えることができるようにしなくてはなりません。そうじゃないと、また、勘違いすることになるからです。
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さて問題は、こういう解説をしてくれる人がすくない。また、そういう本が少ないと言うことです。
CommentData » Posted by kous37 at 09/01/18
そうですか。そんなに議員の力が強いんですか。
もちろん日本でも議員の力は強力ですが、官僚は影でそれを操っているかんがありますからね。大臣より上院議員のほうが強いのか。24人とは、州の数よりずっと少ないんですねえ。
左翼であり、かつ民族主義であるということですね。日本では語義矛盾にとらえられそうな話ですが、スターリニズムはまあそうでしょうか。日本共産党もそれっぽい部分はありますが。
CommentData » Posted by shakti at 09/01/18
>左翼であり、かつ民族主義であるということですね。日本では語義矛盾にとらえられそうな話ですが、スターリニズムはまあそうでしょうか。日本共産党もそれっぽい部分はありますが。
ロシアや日本のような伝統のある民族と比較されるとちょっとニュアンスが異なってくるように思いますが、このあたりの解説は難しいです。民族主義のサブカテゴリーが左翼主義であること、そして民族主義的発想がまだまだ弱いということ、この二つを押さえてみてはどうかなと思います。(ただし日本共産党とフィリピン共産党の、建党当時の初期の稚拙さについては、かなり似通ったものがありす)。
ちょっと面白い話を書きます。日本人ならば、アメリカの利益になる「改革」というのは不味いと思うかも知れない。だが、仮に自分の親戚が日系アメリカ人ならば、そして自分も日系人になるつもりならば、アメリカ有利=自分の利益になるわけですよね。こういう感覚で物事を考えると違った見方ができます。
余談ですが、アメリカで生活して水村美苗のような民族主義者になるのは、とくに女性では異端ではないでしょうか。
CommentData » Posted by shakti at 09/01/18
もう一歩進めちゃうと、植民地=韓国というモデルから完全に自由にならないといけない。韓国は伝統国家が隣国に併合されちゃったわけで、いわゆる植民地ではまったくない。韓国というのは分割された弱小ポーランドみたないもので、決してアイルランドでもなければ、台湾でもない。植民地化されると宗主国の文化を愛するようになるのが世界の常識なのです。
日本人や韓国人が、韓国モデルにとらわれていると、植民地世界が全く見えてこなくなる! (だから韓国人は植民地について理解しようとしないし、99.99%の韓国人・韓国研究者はまったく分かっていないだろうと思う)。
CommentData » Posted by kous37 at 09/01/18
>植民地化されると宗主国の文化を愛するようになるのが世界の常識なのです
まあそうですよね、大体。韓国をポーランドと類比するのは正しいですね。
>民族主義のサブカテゴリーが左翼主義であること
これはどうかな。やはり日本では、左翼主義というのは「インターナショナリズム」だという理解が一般ではないでしょうか。日本でも左翼的文化人の方が海外のそっち系統の人とうまくやっているように思うし、民族主義のサブカテゴリーだといわれてもあまりぴんと来ないですね。
ところでアンダーソンの『比較の亡霊』を借りました。冒頭のスカルノのヒトラーの話はとても面白いです。われわれにとってヒトラーというのはあくまで西洋史の登場人物のワンノブゼムなのですが、欧米人にとっては大魔王ベエルゼゼブなんですよね。ナチズムもヒトラーも西欧文明が生み出したものだということを、彼ら自身が消化しきれてない感じがします。あの例を読んでもアンダーソンという人は面白いなと思いますね。
CommentData » Posted by shakti at 09/01/18
>>民族主義のサブカテゴリーが左翼主義であること
>これはどうかな。やはり日本では、左翼主義というのは「インターナショナリズム」だという理解が一般ではないでしょうか。日本でも左翼的文化人の方が海外のそっち系統の人とうまくやっているように思うし、民族主義のサブカテゴリーだといわれてもあまりぴんと来ないですね。
”inter-nationalism”というのは、Nationを前提にしているのではないのでしょうか? Nation以前に左翼主義は可能なのでしょうか。
たとえば酒井直樹の「日本語」の本がありますが、江戸期における日本語だとか翻訳の概念、一言で言えば、「日本」という同一性を問題にしています。同一性は決して自明ではなく、翻訳という概念も了解しがたかった段階があったということです。フィリピンのようなクニを理解するときにも非常に参考になります。さて、そういう段階において、日本に左翼が成り立ち得たのでしょうか。
>あの例を読んでもアンダーソンという人は面白いなと思いますね。
リョサの小説についての論文も刺激的だった。
CommentData » Posted by kous37 at 09/01/19
失礼、フィリピンにおいて、民族主義のサブカテゴリーが左翼主義だ、ということですね。それは十分分かります。ただこのあたりから、一般の、フィリピンに無関係の人たちの、特にアカデミズムや政治関係の世界の人たちの、理解は難しくなってくるところですよね。同じカテゴリーの政治集団が国によって属するところが違ってくるのはある意味当たり前なのに、日本での文脈から離れるのは自分の基盤を失うことにもつながりかねないのでやりにくいし、あるいは気づいていても気づかない振りをしたり、もう最初から見ないようにしたりしている傾向はあると思います。そのあたりがshaktiさんが非常にやりにくいところなんだと思いますが。
キューバなんかは明らかに民族主義が先にあって左翼主義が後にあるわけですし、そういう意味では左翼主義は一つの選択にすぎませんよね。