ことばを使った方法論/威嚇する目と気さくな微笑み
Posted at 08/12/29 PermaLink» Tweet
どうにも体調が悪くて困っていた。午前中は昼の買い物に出ただけであまりいろいろなことが手に付かなかった。午後インド帰りの友人から電話があって長電話して、夕方になってから銀座に出かけた。調子は悪かったが午前中よりはかなりましになっていた。
銀座は年の瀬で人の出は多いように感じたが、店の混雑は思ったほどではなく、不況なのかなと思ったり。教文館で本を物色し、ブックファーストに行ってちらちら見る。引力を感じるほうにいってみようと体調のよくないときによくある勘頼みの行動。目に飛び込んできたのは矢尾こと葉『レイキで心と体を浄化する本』(永岡書店、2008)だった。
レイキで心と体を浄化する本矢尾 こと葉永岡書店このアイテムの詳細を見る |
日記猿人時代から日記を読んでいる方が今レイキのヒーラーをやっていることは知っていたので、レイキというものに興味はあったのだけど、やや近づきがたい面もあり、今まで本を読んでみようという気になってはいなかったのだが、何だか目が合ってしまったというか引力のようなものを感じたので買ってみた。最初にマンガがあってそれがよく感じが出ていてどういうものなのかのあらましがわかる。といっても、私は野口整体にずっと通っているから、そういうことに関する感じ方はそういうものに全く関心のない人とは全然違うだろうと思う。しかし、著者はヨガや気功の知識もあるらしく、そちらの方面からの説明もあっていろいろと頷けるところも多かった。また、友人で宗教の信者の人からよく話を聞くのだが、その人の話の中からその宗教での自己(考え方とか感情とか)の持って行き方のある種の技術のようなものと共通するところも強く感じ、なるほどどちらも実際なかなか合理的な方法論なんだなと納得する。
最近ではポジティブシンキングの方法論などが出てきているので、昔に比べるとこういう表現に対する抵抗感は薄れているのかなあと思う面もあるが、何も知らない人はすごく壁を感じるだろうなあと思う面もある。しかしマンガというのはなかなかうまい手で、抵抗感はかなり薄らぐかもしれない。そういえばオウム真理教もマンガを使って教義を説いていたりしたが、あれは見るからに怪しくてマンガの意味があまりなかった。幸福の科学もアニメを全国ロードショーで公開していたなあ。実家の近くの映画館でそれをやっていたが、客がいる感じはしなかった。もうしばらく前に閉館し、今は駐車場になっているが。
いや、こういう言葉による自己の方向付けというのは合理的だとは思うのだけど、言葉というのは人間そのものを成り立たせている重要なものなので、その人の言葉の全体系が免疫的に拒否するということは十分ありえることだ。それを無理に導入しようとすると、その人の精神がやややられる可能性もある。受け入れても最初は「かぶれた」感じになり、それまでの友人が変なものを感じて遠ざかっていったり、いろいろ副作用は大きいに違いない。ことばというものは効果が大きいだけにそうしたマイナスの作用も時に巨大になり、時にその人自身やその人の人間関係を破壊することになるから、よっぽど気をつけなければならない。
そうやって人を孤立させ、取り込んでいくのがいわゆるカルトの方法論だ。しかし、たとえば今まで普通の進歩的左翼だった人が、あるとき右翼・保守傾向の思想に目覚めた、というときにも大体同じことが起こる。それまで話があっていた人と話しが合わなくなり、話をするのも面倒になってくる。改宗者の情熱で、最初は特に相手の言うことを否定したがるからなおさらだ。
まあ私もそういうことに近いことはいろいろなケースで経験しているしそういうことでだいぶ友達を減らした。後悔はしていないかといえばそんなこともなくて、今思えばもっと上手くやったら人間関係を維持できたと思える面白い友達もたくさんいる。しかしその当時は余裕がなくてそういうことは出来なかった。余裕というのは、自分と違う他人、また変化しつつある自分を、他人とどうつき合わせるかという結構難しいことをするときに、ものすごく大きな役割を持つと思う。人間の大きさというのはそういうものなんだろう。余裕があれば、自分と違う他人の意見もしっかり聞くことが出来るし、また他人と違う自分の意見も、必要があれば言いなければ言わない、相手を尊重しつつ自分はいささかも動じないといった態度を取れるに違いない。そういうところがどうも自分にはまだまだ足りないと思う。
そういうわけで、「レイキ」というのも見た目はオカルト性や秘儀性が高くて近づきにくい面もあるが、思ったよりは合理的・体系的なものだということがわかってきた。こういう方面のことというのは基本的に思想性をあまり伴わずに技術というか方法論でかなりのところまでいける。宗教等がそれを利用している面があるから宗教がかっているように思われてしまうのだけど。特に日本の新宗教は「病気直し」の伝統があるので、よりそういうものと混同されやすい。しかし、神業のような技術を持つ医者はやはりカリスマ的な信頼性をもたれるわけだし、そういう意味で信仰というのは本来超絶的な技術や能力に対する尊敬や畏敬の念から生まれるのだろう。「技術と信頼」、といえば「ものづくり日本」、という感じだが、「技術と信仰」になると宗教になる。ある意味それらの位置は結構近いところにあるのだろう。一番引っかかっていたのは言葉遣いの面なのだが、それはそういう言葉遣いをする(させる)理由がわかってきたので、そういう前提の下で読むと抵抗感はない。そういう前提を持つのは大変かもしれないとは思うけれども。
木村屋でスコーンを買う。メイプルシロップがついていたので即買いした。松屋の地下で焼肉弁当を買い、地元に戻って山崎デイリーでチーズパンと野菜サラダを買った。
今思うと私が昨日この本を買ったのはとても意味のあることだったのだと思うのだが、そのことについてはいずれ。
NYLON JAPAN (ナイロンジャパン) 2009年 02月号 [雑誌]トランスメディアこのアイテムの詳細を見る |
昨日買った『NYLON』という雑誌が案外面白い。こういう若者のストリート・ミュージック系の雑誌を買ってもわけがわからんだろうなあと内心思いつつ買ったのだが、案外面白かった。何でだろうと思っていたのだけど、今ぱらぱら見ていたら、たとえばモデルがこっちを見て笑っていたりいい表情をしていたりという案外単純なところにあるんだと思った。こういう若者たちというのはまあ我々のころもそうだが街であったら大体周囲を威嚇するような目をしているが、近づいて見ると案外気さくだったりする。自分も若いころはそういうことはよく知っていたわけだけど、今では威嚇される対象の側から抜け出す機会はないわけで、それがそういうものに対する敷居の高さを生んでいたのだということに気づく。ハイファッションのモデルは舞台上でも威嚇型や無表情型が多いので見ていて敷居が高いんだろうなあ。またデニム地というのは中学から20代前半にかけて一番身にまとっていた種類のものだから、判り易いということは事実ある。で、香水とかハイファッションとも重なる部分もあるからそのあたりの予備知識が増えていて分かりやすいということもある。こうやって一つ一つ面白いと思える世界が広がっていくのは楽しい。
全然関係ないが、山口百恵の長男が歌手デビューしていたというニュースは驚いた。
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