読みたい本がたくさん紹介されている雑誌

Posted at 08/11/06

国道に沿って2、3キロほど歩いた。今まで歩いたことのない道なので、興味深い感じがする。今までは普通の集落としか思っていなかったところでも、実際に歩いてみるとそれぞれに趣があり、関心がひかれる。小さなお稲荷さんに手を合わせる女の人がいたり、大きな川の川原でマレットゴルフをやる老人たちがいたり、とても登る気にならない急傾斜の神社の参道があったり。それぞれにその土地の特徴がある。

まっすぐうちに帰るつもりだったが、『ダヴィンチ』の発売日であることを思い出し、少し離れた書店まで歩く。本当は片道30分くらいの道のりだったのに、結果的に1時間ちょっと歩いた。たまにはそういうのもいいだろう。

ダ・ヴィンチ 2008年 12月号 [雑誌]

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『ダヴィンチ』の目当てはまずは山岸涼子『テレプシコーラ』。ローザンヌコンクールの日常、日常といっては変だけど毎日の生活も描写されているので日常、という感じがする。主に「26番」との関わり合い。「26番」はどう考えてもキーになる存在なのだが、まだ正体がわからない。今まで出て来た登場人物との関係も考えるし、いろいろ思わせるものがある。26番に親切にしてあげたお返しからか憶えられなかったアンシェヌマンを教えてくれたり、ものすごく高い身体能力を見せたりする。来月は休載。続きが読めるのはもう来年か。今年も押し詰まってきたんだな、そう考えると。

そのほか気になった記事をいくつか。佐藤江梨子が選んだ一冊として安部公房『砂の女』が挙げられていた。私は読んだことがないのだが、紹介文によると多くの教科書で取り上げられているのだそうな。我々の頃にはまだ安部公房は取り上げられなかったけど、最近は村上春樹も取り上げられているし、教科書も様変わりしているのだなと思う。佐藤江梨子が文章を書く楽しさを教えてくれた作品、と言われると、安部公房のどういうところにそういう魅力を感じたのだろう?と興味が湧く。一度読んでみようかと思った。

マルク・レヴィ『夢でなければ』。フランスの作家マルク・レヴィが4ページに渡って取り上げられている。この作品は自分の子どもに向けて作っていた話を作品化したというもので、発売前にスピルバーグの目に止まり、映画化権が買い取られたのだという。私より一つ上の作家だから本当に現代作家だ。この作品もエピソードからして興味深い。自分の子どもに自分と価値観を共有できるようにと思って書いた作品だ、といわれたらこれは面白いに決まっている、という気がする。

岡野宏文・豊崎由美『それでも作家になりたいですか?』。豊崎由美という人は基本的に難癖ばかりつける生産的な発言をしない人という印象があったが、この記事では基本的にハリー・ポッターを賞賛していてへええ、と思った。その他ドラクエ、クオレ、ドリトル先生、その井伏鱒二訳、河合隼雄『ファンタジーを読む』、『スターウォーズ』、などなどさまざまな作品を評価していてなんだ、案外まともだなと思った。ドリトル先生など私も小学生の頃熱中したものだし、偉そうな口ぶりの記事が多くて辟易していたけど、そういうところを我慢すればプラスになることもいろいろあるのかもしれないと初めて思った。

望月哲男訳・トルストイ『アンナ・カレーニナ』。光文社古典新訳文庫での出版が完結したことに際して訳者へのインタビュー。「幸せな家族はどれもみな同じように見えるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」という例の有名な書き出しは私もよく使うフレーズなのだが、実際にはまだ読んでいない。トルストイは本当に大作が多くてチャレンジする前にやめてしまうことが多い、そういえばヴィヴィアン・リー主演の映画のDVDも安売りで買ったのを持っているのだがまだ見ていないや。

呉智英の『マンガ狂につける薬』。盗作問題を扱った『盗作の文学史』という本の紹介は興味深い。また、鷺沢萠が文学界新人賞を取った『川べりの道』が吉田秋生の『河よりも長くゆるやかに』に酷似している、と問題になった話が取り上げられていた。そういえばそういうことがあったが、あれは鷺沢だったのか。吉田秋生は鷹揚に構えて、『ラヴァーズ・キス』という作品で美少年の登場人物を「鷺沢」という名にして鷺沢萠にエールを送っているのだ、という話は初めて聞いた。

いろいろ読んでみたいと思うものがたくさん載せられていて、この号の『ダヴィンチ』は面白かった。

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by Luke Peterson

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