『最終兵器彼女』批判とか「ランドリの世界の奴隷」とか
Posted at 08/11/03 PermaLink» Tweet
土曜夜に上京。疲れが出たのか、日曜日は起きたのが7時半過ぎだった。
10時前に『クローディアの秘密』を返しに図書館に出かけ、ついでに高橋しん『最終兵器彼女』の4巻~7巻を古本屋で購入。何系でもいいが、このマンガは切ない。これはラブストーリーであって状況は全部つけたし、バックグラウンドであって、最後まで何があったのかは説明されない。この作品を作品として成り立たせるためにはそれは必要な手法であったと思うが、いわゆる「セカイ系」を批判する人たちはその「捨象」自体を問題にするようだ。しかしこれは作品を構成する上で必要な要請であり、逆にそれが成功しすぎたために多数のエピゴーネンを生み出して、それがある種の知的不全性を生み出しているということはあるかもしれない。しかしそれをこの作品の罪とすることはあまり賛成できない。
最終兵器彼女 (7) (ビッグコミックス)高橋 しん小学館このアイテムの詳細を見る |
この作品は2001年の1月から10月に連載されたものだそうで、つまりある意味911テロを予告するものになっている。というか、全くシンクロニシティがあるというのは、人智を越えた作品の力とさえ感じられてぞくぞくする。まああんまりそんなことは考えないほうがいいが。私たちの世代、つまり40代くらいの人たちは「いずれ核戦争で人類は滅びる」というある種の世代的なイメージが刷り込まれている人が多いと思うし、そういう意味では基本的にこういう構想自体に抵抗がない、というかあああれね、みたいなところがある。もちろんそれは誰にでもあるものではないから、他の世代にそれが反映されたときに自我を歪ませる原因になる何かが発せられるということはあり得ることだが。というか我々の世代の自我自体がもっと前の世代が歪ませた何かが反映されているわけだが。
ある種の児童虐待の継承のような世代を超えて継承されてしまうトラウマのようなものかもしれない。それをいい始めるとペリー来航や三国干渉、第二次大戦の敗戦のような国民的トラウマが輪廻転生してこういう形で表れているという気はしなくはない。
一度に全部は読まず、欲しい本借りたい本は他にもあったので昼前に出かける。駅近くの図書館でその本があるのを確認して大手町に出、丸の内丸善で本を探す。
朝ビューカードの新しいものが届きその案内を読んで、モバイルスイカの設定やえきねっとの設定も変えなければならないし、今ビュースイカにデポジットされている金額も受け継がれないから払い戻しを受けなければならないということを知り、東京駅のアルッテでお金を払い戻す。927円しか残っていなかったが。オアゾから東京駅に行く途中で冊子を配っていて、何の気なしにそれを見ると丸の内周辺での食事の割引券がついていた。
ぱふ 2008年 12月号 [雑誌]雑草社このアイテムの詳細を見る |
丸善二階のマンガコーナーで『ぱふ』の12月号を買う。これは「最強まんがナビ・マガジン」と銘打たれている。小説における『ダ・ヴィンチ』のようなものかと思う。これを買ったのはおがきちかのインタビューが掲載されているから。これを買って5階に上り、「えん」で昼食。500円割引券があったので久々に一人で外食することに。しかし食べ過ぎた。やはり外食は今の自分には量が多い。
まぼろしの小さい犬フィリパ ピアス,猪熊 葉子,Philippa Pearce岩波書店このアイテムの詳細を見る |
帰りに駅近くの図書館により、河合隼雄『子どもの宇宙』で言及されていたフィリパ・ピアス『まぼろしの小さい犬』(岩波書店、1989)を借りた。
帰っておがきちかインタビューを読む。物語を作るときにはお話を先に考えて、それに必要なキャラクターを考える、という話にふむふむとうなずく。人にはいろいろな物語の作り方があるが、おがきさんはそうやっているのかと。ネガティブなキャラを作り出したのはいいが、ネガティブというのがどういうことか理屈ではわかっても、その心性が本当にはわからない、というコメントが可笑しかった。
猫耳が生えてくる病気という設定があって、それが次のストーリー展開と関係してくることにみな驚いた、という話があって、つまり猫耳というのは「萌え要素」、つまり「お約束」だとみんな思っていたという事実にむしろ私のほうが驚いた。日本というのはつくづく「お約束」文化なのだなと思う。『最終兵器彼女』で考えられた大状況の捨象というテクニックも、それが「お約束」と化すと、みたいな話なんだなと思う。
最終的に「私はランドリの世界の奴隷なんで、私の意志なんてない」という話になり、物語作家というのは多かれ少なかれそういうところはあるだろうなと思った。読み応えのあるインタビュー。
この日記はある種のイベントのこと、つまり出かけたことを中心に書いているけど、何もしてないときはずっと「思想を持ったキャラクター」のことを考えているのだった。つけたし。
…そういえば石川遼が優勝するシーンは見てたな。
夕方になって、つまり煮詰まってきたので出かける。先週銀座に行った記憶がかなり強く残っているので今週は神保町に行く。新御茶ノ水の駅で降り、太田姫神社の横を通って神保町に向かうと、角の所に行列のできるラーメン屋が出来ていた。行列がなくなったころに一度行ってみてもいいかなとは思った。駿河台下の交差点を渡って気が付いたのだが、神保町「古本祭り」をやっていた。そんなイベントに参加する気はなかったのだが、毎年そうなのだけど、こちらの意志に関わらず出かけるとやってるものなんだよなこの催しは。
王様の仕立て屋~サルト・フィニート~ 20 (20) (ジャンプコミックスデラックス)大河原 遁集英社このアイテムの詳細を見る |
ブックマートでマンガを物色したら大河原遁『王様の仕立て屋』の最新刊が出ていたので購入。毎週読んでるから必要ないようなものだが、これも読み返して見るといろいろあったなあと思う。それから『ぱふ』で取り上げられていた黒田硫黄を一冊買ってもいいかなと思い、『大金星』(講談社、2008)を購入。まだあまり読んでない。
大金星 (アフタヌーンKC)黒田 硫黄講談社このアイテムの詳細を見る |
それから三省堂と東京堂を回り、とんぼの本のコーナーでとんぼの本のカタログが欲しいなと思ったら、横にあった魯山人の本も欲しくなり、梶川芳友他『魯山人の世界』(新潮社とんぼの本、1989)を購入。もちろんカタログも貰った。帰りにガイアネットで三之助豆腐とみかんを二個買って帰宅。
魯山人の世界 (とんぼの本)梶川 芳友,吉田 耕三,井上 隆雄,林屋 晴三,小木 太法新潮社このアイテムの詳細を見る |
家に帰ったら疲れが出て、あまり何もしないうちに寝てしまった。しかしそういえばラミレスがサヨナラホームランを打ったのは見てた。
今日は朝起きていろいろしたのち、『最終兵器彼女』を最後まで読みきる。重い話なんだが、最後がやはり少し軽いかなという気はしなくはない。いや、この話しどういうふうにラストをつけてもやはり満足のいくものにはならないだろうなと思う。Wikipediaでみるとアニメ版も実写版も原作とは違うラストになっているということで、さもありなんと思った。しかし、「ちせ」がアイヌ語で家のことだというのは知っていたのにじーんと来た。(早稲田にはレラチセ=風の家=というアイヌ料理の店がある)もうひとつ。「いつか」というのは未来のための言葉なのではなく、「今」のための言葉なのだ、という言葉もじんと来た。セカイ系がどうだこうだということではなく、少なくとも今現在は私はこの作品の味方だなと思う。
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