佐藤春夫『小説 智恵子抄』

Posted at 08/10/09

今日は昼前から松本方面で仕事。ライトグレーのスーツにウールのベストを着ていったら、歩いているうちに暑くなってきた。陽射しがかなり強くて、思ったより気温が上がってきた。着る物の調整は難しい。

昨日はノーベル物理学賞に続いて化学賞も日本人が受賞。一挙に4人というのは初めてだ。毎年数人受賞するようになれば、科学に関する一般の関心も上がるだろうと思うのだけど。

小説智恵子抄 (人間叢書)
佐藤 春夫
日本図書センター

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佐藤春夫『小説 智恵子抄』(角川文庫、1962)読了。光太郎と智恵子の関係で、知らないことがたくさんあっていろいろと考えさせられた。とはいってもこれは小説だと銘打っているので、どこまでが本当でどこからが創作なのか、よくわからないところがある。しかしいろいろとリアリティがあるところが多く、細かいやり取りはとにかくとして、智恵子の実家の没落とかに関してはだいたい正しいのだろうなと思う。

智恵子が晩年、切り絵に熱中していたというのはへええ、と思う。これは巻頭のカラーページに掲載されていて、こういうものを作った人なのかと思った。

細かいことだが、智恵子が発病した当時、精神分裂症というのは新しい病名だったというのは意外だった。それまでは『早発性痴呆』といわれていたのだそうだ。しかし、「簡単な比喩でいえばまずコンダクタアを失ったオーケストラか、綴じ目の壊れた書物みたいなとでも申しますか、精神は個々に働いてけっして活動していないではありませんが、統一を失っているわけです」という説明はわかりやすいと思った。現在「統合失調症」と言われているのもなるほどと思う。

あちこちに「智恵子抄」の詩が挟まれていて、佐藤春夫はこの詩を元にこの物語を組み立てたのだなということがよくわかる。今ではなかなか実在の人物たちにこういうフィクションをかぶせるのは難しくなっていると思うが、こういうことが出来たおおらかな時代なのだなと思う。

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