年期の入ったサウンド/じぶんのこどもを見つける力
Posted at 08/09/15 PermaLink» Tweet
宮代町ONAIRに友人主催の演劇祭&ライブを見に行く。最初はマイムの人でずいぶん上手くて驚いた。年期も入っているし、演技に無駄がない。特に右腕の演技がよかった。衣装も気が利いているし、小道具もよく考えられていた。すごいものだなと思ってサイトを見てみると、やっぱりすごい人だった。バーバラ村田さん。
二番目は政治ロックバンド。イギリスのバンド・アートベアーズのコピーとオリジナル。左翼系ロックバンドといってもいいのか。文芸色も強い。しかしパンフを読んで見ると風俗としての左翼ととらえられることに抵抗を感じるが、かといって左翼であることにアナクロであることの不安を感じていて正直でもある。手段としての左翼なのか、思想としての左翼なのか。連帯というものは左翼的にしか可能でないのか、という疑問もある。それは置いておくが、そういう傾向のものに対する限りない愛は感じる。久々にそういうものを聞いて懐かしく思った。青木熊さん。メンバーがそら庵の運営者。
三番目、最後のバンドに友人が。今日は26曲という気が遠くなるような曲数を演奏。それでも2時間弱か。しかしあまりに曲数をこなしているので、ソフトボールの上野投手を思い出した。
70年代音楽のやり残したことを全部やりたい、という感じのコメントがあって、そうかなるほどそういうものかと思って聞いていたが、ボーカルの声量が素晴らしく、またピアノ・キーボード・ウクレレ・ギターとひきわけるキーボード奏者、ピアニカも吹くボーカル、フルートも吹くギタリスト、ウッドベースとエレキベースをひきわけるベーシスト、パンチの利いたドラムと異様に豊かな音色のバンドで驚いた。本当に絵画的だ。最初はやや自分との距離を感じながら聴いていたが、おしまいのほうで80年代的な――ゲルニカとかあの時代の洋楽とかの――サウンドになってきて、大変楽しめた。このバンドを本格的にライブで聴くのは初めてなので、たいそうインパクトを受けた。FOMALHAUT。皆さんお疲れさまでした。
平原演劇祭第三部。今回は粒揃い。ライブハウスなので今回は1500円だった。奇しくも昨日の新国立劇場バレエ研修所の発表会と同じ。昨日は若手の初々しい演技。今日は年期の入った大人の演技とサウンド。毛色の違った物を楽しめた連休だった。
***
自分が自分であることを表そうとするとつい小難しいことを喋ッたり書いたりするのだが、小難しいことを喋るのはともかく書いていると、あまり人が寄り付かなくなる。読みにこないことはなくても、コンタクトを取ってくる人は大幅に減る。分かりやすいフレンドリーなことを中心に書いているとみなコンタクトを取ってくれるのだけど。人とあまり接したくない時期になるとつい小難しいことを連日書くようになるが、問題は自分の書きたいことの本質が小難しいことであることで、書いているうちにもう人に合わせるのが面倒になってしまうという難点がある。コンタクトがなくなるとどうしても独りよがりのことを書いているのではないかという不安に襲われるのだが、かといってコンタクトしてもらうために書き方を変えるのも変な話なので、小難しいことやあまり一般的でないことを書き続けている。この状態でいいのかなあといつも思うのだけど。
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桜井章一×名越康文『未知の力を開く!』(ゴマブックス、2008)読了。桜井の言葉を名越が独特の完成で解釈して解説した、という感じの構成。桜井の言葉に名越の感性が加わって、目がくらむほど遠くまで届いているという感じの項もあれば、あまり深くまで耕されていない感じの項もある。しかしそういうところですら、なるほどそういうことなのかと改めて考えさせられることがたくさんある。先日も書いたが、名越は桜井の対談者・言葉の掘り起こしをする人として、最も適した人なのではないかと改めて思った。
最も印象に残ったのが、麻雀をするときでも野性の感性がとても大事だと言う話で、ペンギンやオットセイはえさを取って返ってきて、何千何万もいる中で自分の子供はすぐわかる、という話だった。それに近い感覚が麻雀にも必要なのだという。自分の子供がどれだ、とすぐわかるように、無限のパターンのある役作りの中で瞬間的にひとつのことを選ぶ力が必要なのだそうだ。
この話は深く感じるものがあった。やりたいことがたくさんあっても、今やることはこれだ、と瞬間的に判断出来る力は物知りの力ではなく、そういう野性の力なのだ、ということなのだ。本をたくさん読んでいたり、知識をたくさん持っていたりすることは、そういうときに役に立つかというとそうでもない。むしろそれが邪魔になったり、それに振り回されたりする傾向の方が強いのだ。それは、「たった一つの自分の子どもを見つけること」は情報ではなく本能の働きだからだ。たった一つのことを探すためには、自分の感性をそういう意味で研ぎ澄まさなければならないのだと思ったのだった。
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