JEミレイ「オフィーリア」/文学はダサいと思っていた/王監督引退など
Posted at 08/09/24 PermaLink» Tweet
ラ・ロシュフーコー公爵傳説 (集英社文庫)堀田 善衛集英社このアイテムの詳細を見る |
堀田善衛『ラ・ロシュフーコー公爵傳説』(集英社文庫、2005)、現在292/553ページ。主人公のラ・ロシュフーコー公爵自身の活躍が始まる。彼はモンテーニュと同様モラリストとして名を知られているがそれ以外のことはよく知らなかったので、帯剣貴族としてフランドルやイタリアの戦場で戦い、またルイ13世時代は王妃アンヌ・ドートリッシュの派閥に属してさまざまな陰謀にも加担していたということは知らなかった。カペー朝成立期から続く大貴族で、新貴族たちの進出が目覚しい中手元不如意になりながら宮廷周辺で活動を続ける姿を描くには、確かに先祖の歴史から語らなければ描ききれないだろうと思った。現在はルイ14世が即位しアンヌ・ドートリッシュが摂政、マザランが宰相の時代。リシュリューと確執があった彼とマザランとの微妙な距離関係が今読んでいるところのテーマという感じ。文人としての目覚めもそろそろ、というところか。
昨日午前中、渋谷文化村のジョン・エヴァレット・ミレイ展を見に行く。目玉はなんといっても「オフィーリア」だ。この一枚は彼の名を知らない人でも見たことがあると思われる。展覧会は全体に混んでいたが、この絵の前はやはり人だかりだった。
この人の絵は、技術というよりコンセプトや画面構成を見せるところがポイントであるように思う。もちろん技術も隙のないもので、肖像画も風景画も水準以上ではあるが、この人にしかない、というテクニックや絵としての特徴が特にあると言えるかどうか。「こういう雰囲気の絵」、というのはかなり大きな潮流となってあるように思う。しかしそれは後に続く人が模倣したということかも知れず、オリジナルはこの人なのかもしれない。自分自身に集中力がなかったせいか、混んでいることもあって、一つ一つをあまりじっくりと見る気にならなかった。カタログや絵葉書は買ったが。
画面構成という面では、優れているといっていいと思う。そういう意味ではデザイナー的という感じもする。一番好きなのは「マリアナ」だ。禁欲的な青いベルベットに身を包んだ金髪の女性が腰を伸ばし、背景の華やかな色使いの館の一角。これは成功していると思う。考えてみたら「オフィーリア」もそうだ。「両親の家のキリスト」はファン・アイクを思い出した。「信じてほしい(Trust me)」などは実に洒落ている。そのほか女性を描いた肖像画はみな華やかで、この人の人気、またこの展覧会が休日とはいえこれだけの混雑になっていることもむべなるかなと思う。肖像がもうまくはあるが、西洋美術館にあるヴァン・ダイクのどっしりとした量感に比べると、どうしても物足りない。
しかし、考えてみたらこうした軽さ、しなやかさ、自由さというものが「イギリスらしさ」ということかもしれない。ミレイの作品も、どれを見てもどこかが誰かに似ている気がするのだが、それだけ自由にいろいろな作家の特徴を取り入れているということなのだろう。そういう意味では実に達者な作家で、そこがちゃんと評価されているのもイギリスならではなのかもしれない。そういう魅力を私ももっと積極的に評価するべきなのかもしれない。
帰りに銀座のメガネドラッグに寄って、先日新調しためがねを取りにいった。度は敢えて同じにしたのだが、より薄く軽くなるレンズを選択した。しかしいまいち焦点が合わせ難いな。中長距離を見る分にはそんなに支障はないが、短距離が上手く合わない。今までのもののほうが今のところ使いやすいが、まあそれはそういうものかもしれない。
午後一休みしてから神保町に出かける。一休みといっても日本ハム=ソフトバンク戦を最後まで見て、またその後相撲を最後まで見たから一休みというには長いが。いろいろと考え事をしながら何軒か書店を回り、結局買わなかった。そういえば若い頃、私は文学はダサい、アートなら非言語の美術や音楽の方がかっこいいと思っていたことを心の底の底の方から思い出した。なぜそう思っていたかというと、文学は人生を語るものだったからだと思う。別に語ってもいいのだが、って言うか私も人並みにそういうことで悩んだりもしているが、そういうことをアートに持ち込むのはあまりかっこいいことと思えなかったのだ。
考えてみればそれは今の文学でもそうで、文学が多かれ少なかれ人生を描いていることは間違いない。立ち読みした雑誌で豊崎由美が楊逸を「何でいまどきこんな近代文学を読まされなければならないんだ」とこき下ろしているのを読んだが、じゃあ近代文学と現代文学の違いって何だろうと考えた。思ったのは、近代文学が人生はなぜ生きるか、ということがテーマになっていることが多いのに対し、現代文学は人生をどう生きるか、ということがテーマになっているのではないかという気がしたのだ。近代文学のほうが根本的で現代文学のほうが差異的とでもいえばいいか。いや、この表現はこなれてないな。昔から文学のテーマは「人生如何に生くべきか」であったしただ訳せば「どう生きるか」にしかならない。近代文学は国家や政治や社会が障害になるが、現代文学は国家や政治は外れてきていることが多いとでも言うか。少なくとも日本では。社会も大上段にその弊害を論ずるというより、その中でいかにしなやかに生きるかとか、自分の持つ社会に対する違和感をどう表現するかとか、そういう感じになってきているというべきなのか。2000年以降の芥川賞作品は一通りすべて読んでいるのだけど、それらすべてを概観してこれ、と一言で言うのはそう簡単ではない。しかし楊逸が異色であるのは確かで、それを語る言葉を探して行きたいと思う。そんなことを書店をめぐりながら考えた。
夜中に暑くて目が覚めて思い立っていくつか整体体操をして見たが、これが割合うまく行って体が少し楽になった。朝は5時過ぎに起きて洗濯したりトイレの掃除をしたり。新聞と水とスーパージャンプをコンビニで買ってくる。秋の朝の空気は気持ちいい。
スーパージャンプ。今号は「フレフレ少女」が泣けた。
朝日新聞を読む。一面に王監督の引退が大きく出ている。昨日ソフトバンク戦を見ていて、アナウンサーがしきりに試合終了後に記者会見を予定している、という話をしていたので、そうだろうと思っていたが、やはり淋しいニュースだ。長島が「今のパリーグの隆盛の一因も王監督の功績の一つ」と言っていたが、そうかもしれないと思う。強さだけなら、西武の黄金時代だった80年代後半から90年代、あの頃には近鉄に野茂もいたし、オリックスにイチローもいて、セリーグに全く遜色はなかった。しかし今のようにパリーグの試合がセリーグに劣らず取り上げられるようになったのは日本シリーズのON決戦以来かもしれないと思う。パリーグの球団はどこも特徴のあるチームになった。唯一出遅れていたオリックスも今年の活躍で特徴がはっきりして来た。確かに王監督がいることでパリーグの存在感が増したということは否めないように思う。やはり偉大な選手であり、監督だった。
大阪サントリーミュージアムの「青春のロシア・アヴァンギャルド展」に出品されていたカンディンスキーなどの作品が真正さに疑義が寄せられ、展示中止になったとのこと。この展覧会は文化村でやったのを見に行った。確かにカンディンスキーはごく初期の物で、本人らしい筆致もないものだった。極端に言えば誰の作品でも分からない感じ。
インドの国内でのテロ事件、国際テロ組織でなくインド国内のイスラム教徒の過激は組織の存在が明らかになったのだという。始めて知ったのだが、インド国内のイスラム教徒は低カーストからの改宗者が多く、貧しい家業を受け継いでヒンドゥー教徒との社会的・経済的格差が残っているのだという。中上流階級は独立の際にパキスタンに移住したと言うのだ。なぜ人口の13%ものイスラム教徒がインドにいるのか不思議だったのだが、この記事を読んで初めて納得した。私は今新聞をとっておらず、ニュースはネットとテレビだけなのだが、それだけでは情報が偏るなと痛感する。なるべく新聞を読もうと思う。
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