人の意見を、無意識のうちに自分の意見と思い込むこと/暗喩が疎外される時代
Posted at 08/08/01 PermaLink» Tweet
今日から八月なのだが、信州は涼しい朝になった。天気予報ではこれから夏本番、もっと暑くなるというけれども、体感的にはもう秋になったかのような涼しさ。これからもっと暑くなるんだろうか。あまりそういう実感はないのだが。
昨日も朝9時から夜10時前まで仕事。12時に一度抜けて所用と昼食、休憩をして2時に戻る。一昨日の忙しさから少し応援を頼んだのだが、昨日はそう忙しくはなかった。しかしこのところ毎度のことだが、終わる間際に忙しくなる。それで終了時間が遅くなってしまうのが難点。
魂にメスはいらない―ユング心理学講義 (講談社プラスアルファ文庫)河合 隼雄,谷川 俊太郎講談社このアイテムの詳細を見る |
河合隼雄・谷川俊太郎『魂にメスはいらない』は読めば読むほどいろいろなことを思い出してくる。面白いと単純にいえない部分がある。この本を読んでいると、自分がいかに河合隼雄に影響を受けているかということがまざまざと分ってくる。ここ数年は読んでいなかったのだけど、それはあえて避けているという面があって、この谷川との対談も持ってはいたがずっと読んでいなかったのだ。久々に読んでみると、さすがに河合の考え方と自分の考え方との間の距離感が少しは測れるようになっているけれども、以前はものすごく強い影響下にあった、というか、河合の考え方に著しく共感してしまって、河合の言うことが砂地に水が染み込むように入ってきた時期があった。今久しぶりに読んでみると、全部わかっていたということは当然なくて、自分の理解できるところだけ共感して取り入れていて、そのバックボーンになる部分にまで十分理解がいっていたとはいえないなあと思う。表面的に考えをなぞっている部分もかなりあったと思う。
河合が言っている内容を、無意識のうちに自分自身の意見だと思っていた部分もたくさんあるんだなあということに気がつく。それはもちろん共感できたからだからいいのだけど、一度そうやって外部化してみると河合の考え方の体形全体の中でその発言を位置付けてみると、自分の持っている考えの内容の総体とはそれなりにずれがある。そのずれについて考えてみることが、今の自分にとっては必要かもしれないと思った。
そういうことと重なるような重ならないような、なのだが、詩などの作品を作るときの私の意識は、今まで無意識というものを過剰に重視していたように思った。無意識に依存していたというか。しかし、無意識を働かせようと意識すると働かなくなるのが無意識というもので、どうも中途半端なことになっている作品が多いという自覚は無意識のうちにあった。この本を読みながら思ったのは、もっと意識的に書いている方がむしろ無意識もその応援に立ち現れるのではないかということ。この辺うまく言うのは難しいが、作品を書くときの意識と無意識の関係についてもっと考え、自覚的にコントロールしていかないといけないということを思った。
ユングは理論の組み立てを概念でなくメタファーで行っている部分が多く、それがユングが非科学的であると批判される元になっているのだけど、それはまた現代という時代がますますすべてが概念化されていく時代であることと無縁ではないと思った。この対談自体は1979年なのだが、30年近く経った今もその点においては全く状況が変わっていない。というよりますます進行している。谷川はそれを「暗喩的な見方は疎外されていくような時代の流れ」と表現しているが、暗喩の持つ広がりや幅、質感といったものがどんどん捨象されていってしまっていることが、現代の潤いのなさと無関係ではないと思う。暗喩が失われた世界は乾燥した積み木細工のように少し風が吹いたら崩れ去ってしまうのではないか、と思われてならない。
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