勇気とは、物事を始める力。技術とは、物事を進める力。戦略とは、物事を終わらせる力。
Posted at 08/07/08 PermaLink» Tweet
昨日。午前中に出かけ、渋谷に。文化村でロシア・アヴァンギャルド展を見る。以前、『ロシア・アヴァンギャルド 未完の芸術革命』という本(だったと思う。今手元に見当たらない)を読んで以来、興味はあったのだが実際にまとまった作品群を見るのは初めて。しかし、知らない作家ばかりで(もう少しシャガールとかがあると思ったのだが)絵を見にいったというより、お勉強をしにいったという感じになってしまい、絵を見るときの幸せな感じにはならなかった。中心的に取り上げられていたのはマレーヴィチ。未来派的な感じが強いが、私はそんなに好きではないなあ。グルジアの画家、ピロスマニはいいと思ったが、その素朴派的な造形が、アンリ・ルソーとどちらがいいかといえば、よく分からない。もう少しまとめてたくさんの作品を見られたらもっと感じも違ったかもしれないのだが。
最近は、公立の美術館が力をいれている展覧会をたくさん見ているせいか、文化村くらいの規模の美術館ではちょっと迫力的に物足りなさを感じるのかもしれないなあと思う。20代の頃はとんがった展示が好きだったのだが。3分ほどのSF映像があったが、これはわりと面白かった。やはりロシア・アヴァンギャルドは映像と舞台の方がメインなんだろうという気がする。
外に出ると、ギャラリーで有元利夫の展示をやっているらしく、ラッキーと思っていってみたら9日からだった。残念。来週また来ようかな。渋谷駅で、特に用はないのだが副都心線に乗ってみる。明治神宮前で降りる。まあ何だかこれだけじゃよくわからない。各駅にステンドグラスが展示されているが、明治神宮前の野見山暁治の作品を見た。これは新日曜美術館でやっていた。彼はもう87歳だが、まわりがみんな死んでいくと戦場にいるような気がしてくるとか、生そのものでなく、生の痕跡のほうにリアリティがあるとか、美には恐ろしいものが秘められているとか、面白いと思うことをたくさん言っていた。できればじかに触ってみたかったのだが、それはできないようになっていた。
千代田線で表参道に出る。最初は乃木坂まで行って国立新美術館でエミリー・ウングワレー展も見ようかと思ったが、来週にとっておくことにした。乗り換えのとき、構内の紀伊国屋でチーズピタというものを買ってみた。半蔵門線で九段下に出て靖国神社に参る。近くのセーラー服の制服の小学校がちょうど下校時間で、大鳥居の前の信号が青になるとみんな「ワーッ」ッといって駆け出したのがここ数十年のあいだで一番かわいいものを見た気がした。南門前のゴンドラでまたパウンドケーキを買い、生ケーキの「シャンパーニュ」を買って帰宅。午後は作品制作に没頭。
夜、NHKスペシャルでサミットの首脳の個人代表、「シェルパ」の特集をやっていた。温室効果ガスの削減目標をめぐる虚々実々の駆け引き。フランスが削減に熱心なのは原発の売り込みとリンクしているとか、なるほどと思うことも多かった。たまにはこういうものも見た方がいい。
メランコリーの川下り谷川 俊太郎思潮社このアイテムの詳細を見る |
谷川俊太郎『メランコリーの川下り』読了。一番いいのは最後の表題作、「メランコリーの川下り」だろうか。昨日も書いたが、昭和末期の出口のない感じがすごく反映されているのだけど、それだけにとどまっていない物がある。まだ読み取れない物がたくさんある感じなのだが、ワンフレーズだけ上げておきたい。
数え切れぬ晴天に恵まれて、人類はここまでやってきたのだ。
宇宙にはどんな善意もないが、悪意もまたありはしない。
ただ隅々までびっしりと細部の詰まった、巨大な空白があるばかり……
この詩集で谷川は、「細部」とか「意味」という言葉にこだわっている。それがどのような苛立ちで、どのようなものがほしいのか、今のところまだよく分からないのだが。
ネットで谷川のことを書いてある文章を読んでいたら、谷川は思潮社で出した『21』という詩集で始めて現代詩人と認められたらしい。へえ、やはり『二十億光年の孤独』ではだめなんだ、と思う。
***
現代詩手帖 2008年 07月号 [雑誌]思潮社このアイテムの詳細を見る |
『現代詩手帖』で久谷雉の詩評を読む。久谷はバブル期の田中庸介や高畑淳四といった詩人たちを批判しているが、最近刊の同人誌は評価していた。このあたり、知らない詩人が多いのでまだ読んでいかないといけないなあと思う。
大人の見識 (新潮新書 237)阿川 弘之新潮社このアイテムの詳細を見る |
阿川弘之『大人の見識』117/191ページ。いろいろと含蓄がある話が多い。知っている話も多いけれど、思い出してみるとやはり面白いという感じ。
夜遅く、ネットで水無田気流のサイトを見ていて、感心する。このエントリに書いた通りなのだが、最近の自分の書いたことと重なることが多い。グールドの言葉は「井戸を掘る」ということ。カフカの言葉は、「私にとって代切なこと」ということに通じる。ブレヒトの言葉。思っていてもなかなかそうできない。勇気とは、物事を始める力。技術とは、物事を進める力。戦略とは、物事を終わらせる力。そう言い換えてみたらいいかもしれないと思った。しかし世の中は息の長い戦略を必要とすることもある。教育とか拉致問題はそういうものだろう。
三木の言葉は、蜂飼耳が谷川作品をめぐっての対談で言っていたことと似ている。表現されたがっている物をしてあげるのが詩人の仕事。この感覚はよく分かる。三木のこの言葉は極めて現代的な意味を持っていると思う。
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