夏の一回戦/昭和末期の混沌とした時代

Posted at 08/07/06

昨日。昼から夕方にかけて仕事。暇。しかし昨日も体調が悪く、仕事場にいるのが精一杯。帰京の予定も一時どうしようかと思ったが、思い切って帰京。取り立ててどうということもなく帰ってこられた。ここのところの体調の悪さは、一体何に起因するものか。

ただ、夜から朝にかけて、腹を下したことは確か。しかしこれで腹の掃除になって、だいぶましになるのではないかと思っている。しかしさっき残っていた牛乳を飲んだらまたおかしくなりかけているので、これが一因だったのかもしれない。

そんなこんなで昨日から今日はだいたいゆっくり過ごしている。昨夜新宿駅に降り立って感じたが、いきなり夏だ。しかし、まだ梅雨が明けたわけじゃないし、またしばらくぐずついてじめじめした暑いんだか寒いんだか分からない日々になるんだろう。そういう意味では、まだ夏の前哨戦に過ぎないのだと思う。夏の一回戦、というところか。

昼ごはんの買い物に出るとき、外に出ると直射日光があまり熱いので、帽子を被っていくことにした。クロゼットをのぞくとグリーンのクロレッツの帽子と赤いバドワイザーの帽子があった。庇を縦に折ってかぶってみると、まあバドワイザーのほうがいいかなと赤い帽子を被って出かけた。和菓子屋のお兄さんはお愛想を言ってくれたがクリーニング屋のおばさんは黙り込んでしまった。この反応をどう判断するべきか。

ダ・ヴィンチ 2008年 08月号 [雑誌]

メディアファクトリー

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昨夜地元の本屋で『ダヴィンチ』を買って帰ったが夜はもう読む気力がなく、朝になってから読んだ。まじめに読んだのは『テレプシコーラ』だけだけれども。しかしこの話、1回の進むスピードがものすごくゆっくりしているな。第一部はもっと展開急だった気がするけど。23日に単行本が出る。

メランコリーの川下り
谷川 俊太郎
思潮社

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谷川俊太郎『メランコリーの川下り』23/100ページ。前も書いたけどこの詩集は1988年、昭和が終わる前の年の作品。何というか、何かが終わりそうで終わらない、何かが始まりそうでまだはじまっていない、そういう中途半端な時期の不安、のようなものがよく現れている気がする。そういえばバブル真っ盛りの時期ということか。あの頃、私は1986年に大学を卒業したけれども(卒業式はバイトに行っていて出席するのを忘れてしまったが)1989年まで就職しなくて、まあ今でいうフリーター生活。とはいっても塾のバイトをしていたので20万以上は月収もあったし、別に困ってはいなかった。劇団を続けていて、やることもあったし。しかしどういう方向に行くのか世の中も私自身もよくわかっていなかった。

平成になって、世の中の方向はだんだんはっきりしてきたのだけど、それは私の行ってほしいような方向ではなくて、どんどんなんだかイヤな方向に進みだした気がする。しかし、谷川のこの詩集は、そんな方向に行く前のよく分からない状態の日本というものが、何だかよく表れているような気がする。今まで読んだ範囲での話だけど。

そういえば今月号のダヴィンチの表紙、蒼井優が『二十億光年の孤独』を手にしている。『二十億光年の孤独』を選んだのが蒼井なのか撮影者なのか分からないが、これがカッコいい、という判断があったのだろうなあと思う。詩は確かにファッショナブルな物として消費されるという側面はある。しかし消費されるまで行くには大変な物があるのだけど。


***

死の淵より (愛蔵版詩集シリーズ)
高見 順
日本図書センター

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高見順『詩集 死の淵より』読了。これは昨日のうちに読了したのだが、一つだけ書いておこう。

おそろしいものが
背後から迫った
逃げると追いかけてきた
夢中で逃げているうちに
背後のものがおれの中を通り抜けて
おれの前を去っていった
   (中略)
あれはなんでしょうか
あれは死だと総入れ歯の男が荘重に言った
キザなことを言うとおれは思った
      (「おそろしいものが」)

死が追いかけてくる、これはまあ実感として感じられることもまたあるのだろうが、ある種陳腐なイメージではある。しかし、この恐ろしさの肉感的な感じは、もっとイヤな感じのするものだ。そして最後に、その正体が明かされる。

いやな臭いがする廊下でおれはつぶやく
あれは生だったのではないか

・・・これは実感としてよく分かる気がする。死よりもおそらく、生の方がずっと恐ろしい物なのだ。しかし人は、生に執着し、死を恐れる。それは逆に、恐ろしいがゆえに生を選ぼうという決断もまたあるのだろう。大概はそんなこと深く考えてはいないけど。生きているから生命の力が続く限り生きるだけなのだ。それが普通なのだけど、しかし抗がん剤の治療を受けている人の口から、もうそろそろいい、という呟きを聞いたこともある。私は何も言えなかったが、そう思うほど辛いこともこの世の中にはあるんだなあと思った覚えがある。

まあしかし、生きるということが大変なことだと、昔はそう思ったことはなかったなあということは言えるんだが。そう思ったことがなったころのことが昔、という時代なんだなあと思う。

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