予告された殺人の記録/愛するところを持たない時代
Posted at 08/05/31 PermaLink» Tweet
今朝は雨が降っている。かなり強い。今日は畑の畝たてをするつもりだったが、これは無理だ。晴耕雨読というが、雨の日は家の中でできることをするということだろう。
昨日。仕事はコンスタントに途切れなく。一度に忙しくなるということはなかった。それはそれで助かる。しかし終わりを催促されたので、やりかけの仕事をひとつ忘れてしまった。カンでやってる部分があるから、ペースを乱されるとうっかりいろいろなものを忘れてしまうのだなと思う。夕食、入浴後、11時過ぎに就寝。
朝寝床の中でいろいろ断片的な思考が浮かんでくる。6時前に目が覚めたが起きだしたのは6時過ぎ。バロックの森を聞きながらモーニングページを書いて、少し活元運動。最近PCのスピードが遅いのでデフラグをかけ、朝食後、気になってることを確かめに職場に往復し、自室に戻る。雨は小降り、上がり加減だがまた降り出すかも知れないという感じ。
予告された殺人の記録 (新潮文庫)G. ガルシア=マルケス新潮社このアイテムの詳細を見る |
昨日ふと「小説を読みたい」という感じを持って自分で驚いた。ここのところそういう欲望をほとんど感じてなかったのだが、どうも自覚してなかっただけかもしれない。それで、郷里にある本棚から最初の20ページくらいしか読んでなかったガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』(新潮文庫、1997)を取り出して読み始めた。
他に小説は、小林多喜二「党生活者」(『蟹工船』に併録されている)と、フィッツジェラルド・村上春樹訳の短編集『マイ・ロスト・シティ』があったのだが、プロレタリア文学はしばらくいいや、と思ったし、『マイ・ロスト・シティ』もどうもつまらなかった記憶があるので、ガルシア=マルケスを優先した。
どうしてそんな気持ちを持ったのか不思議に思って自分の中を探ってみたが、どうも『カラマーゾフの兄弟』を読了したことと関係があるように思う。こんなに長大な小説が最後まで面白い、というのは自分にとっては意外だし発見だった。私は今まで、小説という文学形態に不信感をもっていたところがあったのだなと思う。その不信が、『カラマーゾフの兄弟』を読破したことで払拭されたようなのだ。つまり、小説全般に対する期待というものが私の中に生まれて、またどういう小説を自分が面白いと思うかという嗅覚のようなものが出来てきたということもあるんだなと思う。
カルヴィーノなど、いかにもお洒落で「面白そうな」小説よりも、ガルシア=マルケスなどわけがわからなそうな小説の方が多分私は好きなのだ。この『予告された殺人の記録』も、例によって登場人物が膨大で、新しいキャラクターが出てきたら書き留めておかないとそれがどういう人だか全然わからないし忘れてしまう。ロシア文学ほどではないにしても固有名詞が膨大に出てくる小説だ。でも一つ一つの出来事に質感があり、またラテンアメリカのマッチョな雰囲気というか、脂ぎった血の気の多さみたいなラテン感は、そうした場に置かれるのはちょっと御免被りたいとは思うけれども、読んでいる分には面白い。
現在48/158ページ。なぜ主人公、サンティアゴ・ナサールが殺されてしまったのか、その理由が少しずつ見えてきた。しかしすごい世界だなと思う改めて。
萩原朔太郎 (新文芸読本)河出書房新社このアイテムの詳細を見る |
『文芸読本 萩原朔太郎』。最初から順番に全部読むことにした。現在39/223ページ。朔太郎の小伝、谷川俊太郎・中野重治・萩原葉子(長女)の朔太郎をめぐるエッセイ。朔太郎の天才性と幼児性みたいなものが繰り返し語られている感じ。精神的に危機の時代の、北原白秋に送った「苦しくてたまりません サクタロ」と書かれた葉書などを読むと、相当危なかったのだなと思う。しかしこの時代に朔太郎の代表作のほとんどが書かれているらしく、芸術家と病の関係の不思議さを感じさせられる。『月に吠える』は自費出版だったが『青猫』は新潮社から出版された、ということは朔太郎が「売れる詩人」になった、ということを意味しているという指摘はなるほどと思った。しかし、結局父親の財産で食べていたので、収入は全部飲んでしまったらしく、死んだときは資産を増やしもしなかった代わりに減らしもしなかったのだという。これもまた何だか不思議な人だ。そんな話ほかに聞いたことがない。
中野重治の次の言葉が印象に残る。
理論的なものを愛していると自分で思い込みながら、実はその直感を愛していたので、論理の欠陥をつかれたというよりは、その愛するものが突かれたというふうにこの人には映るものらしかった。こういうよさも今は世間にあまりないようだ。
今は愛するものを突かれても平然としている人が多い。愛するところを持たぬのだろう。
朔太郎は「議論好きの議論下手」で有名だったのだそうだ。だから自分の直感を愛し、それを論理的に説明しようとするのだけど、大体無理がある強引な展開なのだという。
しかしこういうのはよく分るなあ。私も確かに、理論を愛しているわけじゃなくて自分が直感的に正しいと思ったことを愛し、信じているだけだから、論理的に議論になっても破綻してしまうことなどしょっちゅうだ。しかし現代のようにソフィストの跳梁する時代には、それではなかなかすまないのだよなあ。とは思うのだが。
『青猫』175/220ページ。何とか読み終えられそう。巻末の「自由詩のリズムに就いて」という「論文」が別に49ページある。いずれにしても青空文庫でも読めるので、貸し出し期間にそうこだわることはないなと思った。
それにしても薄ら寒い。もう五月も終わりなのにな。
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