名前負け/読むことと酔うこと
Posted at 08/05/22 PermaLink» Tweet
昨日。午後から夜にかけて仕事。最近忙しい。忙しいのはいいことだ。今朝は朝職場に出かけて資源ごみを捨て、朝食後は母に頼まれて家の畑を耕す。最近こういう肉体労働はほとんどやっていないのでなかなか疲れる。私は名前の一字に「耕」という字が入っているのだが、これでは名前負けだなと思った。頑張って一応全部耕したが、鍬のくさびが抜けてどこかに行ってしまった。磁石か何かで探さないといけない。
午前中は主に萩原朔太郎の作品をネットで、といっても青空文庫で探し、ダウンロードする。朔太郎は私にとって一番大きなインパクトを貰った詩人でありながら、実は主要な作品以外あまり読んでないし、研究書もまともに読んだことがない、ということに今更ながら気がついたのだ。若い頃にあまりインパクトがあった作家というのは、返って読まないこともあるのではないかという気がする。インパクトが強すぎてまともに読めないのだ。私にとって朔太郎はそういう詩人で、「読む」ことなどできない、ただ「酔う」のみ、という感じだった。今でも読んでいてそういう酩酊感を覚える、そういう意味では私にとって稀有な作家だ。しかし主要な作品だけでなく、『青猫』の一つ一つの作品をきちんと読んでいくと、私の脳裏に映った朔太郎がもっと明確な像を結ぶようになってくる。考えてみると、少年期から青年期にかけて、私の中にはそういうよく分らないイメージの魔法使いがたくさんいた。どうも私は、理性よりも幻想性の中に生きている人間だったらしい。そして多分、今でもかなりの部分、そうなのだ。幻想というべきか、妄想というべきか。
そうした『魔法使い』たちの作品を読めないということのうちには、読むことによって自分の中のイメージが崩れることを恐れる、という面がなくはない。高村光太郎や谷川俊太郎はもっと分り易いけれどもやはり魔法使いだったのだが、多くの作品を読んだり周辺的な情報を読んだりしているうちにだんだん魔法が解けてくる感じがあった。しかし今朔太郎を読んでいると、人物像のリアリティは出てくるものの、魔法そのものの実在性のような感じがしてきて、非常にスリリングだ。詩人というのは、結局現実の世界に生きてはいないのだなと思う。ポエジーという不可思議な世界の中で生きることを選択した人たちは、普通の意味でのリアリティーの中に帰ってくることはもうできなくなってしまっているのではないかという気がする。
その他読了した本もあるのだが、またの機会に書きたい。
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