耽読/程度を知る
Posted at 08/05/17 PermaLink» Tweet
昨日。仕事が終わったあと、夕食を少し食べ過ぎた。入浴後自室に戻り、布団を敷いたあとで『カラマーゾフの兄弟』を読んでいたらいつのまにか寝てしまった。朝食はほとんど食べられず。午前中は部屋を片付けたりしながら『カラマーゾフの兄弟』『文芸時評』を読みつづける。少し耽読しすぎて中毒的症状が出てきている気がしないでもない。
カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)亀山 郁夫,ドストエフスキー光文社このアイテムの詳細を見る |
『カラマーゾフの兄弟』。現在554/700ページ。おお、124ページも読んでいる。ずっとドミートリーの裁判が続いている。ドミートリーの性格描写のところ、「あらゆる両極端をいっしょくたにできるし、ふたつの深みを同時に眺めることができるのです。それはすなわち、頭上に高々とひろがる理想の深みであり、眼下に大きく口を開けた、悪臭ふんぷんたる底なしの深みです」というのが印象に残る。裁判の展開はまだまだこれからという感じだが、先のイワンの悪魔との会話といい、検事の論告の内容といい、ある種の小説の嘘という感じはするが、重要な内容なので、そこのアンリアルさはあまり問題にならないような性質のことなのだろうと思う。
文芸時評―現状と本当は恐いその歴史吉岡 栄一彩流社このアイテムの詳細を見る |
『文芸時評』。現在370/446ページ。ずいぶん読んだつもりだったのだが34ページしか進んでない。この部分は朝日新聞に連載された文芸時評について歴代の時評をかいつまんで説明しているのだが、昨日も書いたけれども私は青少年の頃朝日新聞の読者だったので、朝日の文芸欄が普通のものだと思っていたのだが、かなり特殊なものだったのだということがまざまざと理解されてきた。
自分が読んで印象に残った時評、というのはさすがに覚えていないのだが、今回読んでみて面白いと思ったのはまず山崎正和。この人は歴史教育不要論など少しピントのずれたことを言う人なのでちょっと期待してなかったのだが、「時代と文学の関係」の考察など、たとえば「不機嫌」という社会的気分の問題などについてその視点から時評を書いていて、面白いなと思った。この面白いと思うセンス自体が朝日の文芸欄に感化されてしまっているのだろうなとは思うのだけど。もうひとつ印象的なのは、純文学と大衆文学の境界線の「消滅」の原因は司馬遼太郎の「純文学の人間観察の精度を保ちながら、それをそのまま大衆的な読者のものにする」至難の技の成功による、という指摘。司馬遼太郎の位置をそのように総括するのは興味深い。吉岡は「一面の真理をついている」と言っているが。
富岡多恵子の「有名人という商売」という指摘は、現在の「セレブ」全盛のかなり早い時期の指摘だ。富岡と高橋源一郎の固有名詞の使用に関する論争も面白い。
少し耽読しすぎならしく、頭がぼおっとしている。程度を知るというのは難しい。
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