詩を訳す/『カラマーゾフの兄弟』/文学の市場化/メール便/関数描画ソフト

Posted at 08/05/10

昨日。午前中は本を読み、物を書くので大体の時間が過ぎる。午後は疲れが出て休憩。仕事に出かける。暇な時間は仕事関係の勉強をする。後半はまた忙しく。

The Fall of the House of Usher and Other Writings: Poems, Tales, Essays and Reviews (Penguin Classics)

Penguin USA (P)

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Edgar Allan Poe,"The Fall of the House of Usher and Other Writings"の詩を訳すことを思い立つ。『ポオ 詩と詩論』には主に入沢康夫訳のポーの全詩作品が載せられているので、自分の訳の拙いところを点検することもたやすい。"Stanzas"という作品の一節を訳してみるが、押韻のためにやたらと倒置が使われているし、古語や知らない言い回しがたくさん使われていてなかなか大変。しかし私もプラグマティックな言い回しよりもこうした詩の言い回しの方が訳していて楽しいので、散文を訳すよりこういうものを翻訳することをもっと早く思い立てばよかったのにと思った。訳が出来次第「蜂蜜壷」の方に掲載していこうと思う。朗読も。

ポオ詩と詩論 (創元推理文庫 522-5)
エドガー・アラン・ポオ
東京創元社

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ポーはボードレールへの影響が大きいくらいだから、不可知的な晦渋な表現が多いかと思ったら、この詩はわりとストレートな自然への賛仰でワーズワースとかの影響があるのかと思ったくらいだ。表現はレトリカルで後のものに比べてより難しくはあるが、詩人も作家も若いときの方が表現が難しいということはよくあることなので、(主に気負いによるのだろう)特には気にならない。

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー
光文社

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『カラマーゾフの兄弟』3巻、第3部第9編「予審」4「第2の受難」まで読了。予審、とは取り調べのようなものか。でも判事も同席しているので、日本の警察の取調べとは違い、やはり裁判の一環なんだろう。昨日酒を飲んで馬鹿話をした相手に今日は取り調べられる、という状況はやはりちょっと嫌だろうなあと思う。ドミートリーがつとめて機嫌よく自分のことをしゃべろうという気持ちはよく分るが、裁判手続きの理屈にぶつかるとその気持ちがすぐくじけてしまう、そのあたりの描写がやりきれないと思いつつそんなものだよなあとも思った。

文芸時評―現状と本当は恐いその歴史
吉岡 栄一
彩流社

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『文芸時評』第3章まで読了。第1章ではテクスト論派の批評原理、第2章では渡辺直己と糸圭(一字、すがと読む)秀美の毒舌批評、第3章では福田和也と中上健次の点数化について書かれている。

糸圭について知っていることはあまりなく、小林よしのりが『ゴーマニズム宣言』で糸圭に批判されたときにまとめて反論しているのを読んだくらいだ。小林の反論の中心は「糸圭はマンガの読み方を知らない」ということであったが、まあそうかなと思う。しかし文芸批評家にそれを言われて反論する小林は数百万部を出す商業誌で戦ってきたという自負があるので、衰退と滅亡ばかりが囁かれる純文学の批評家が手を出すには相手が悪すぎた、ということなのだろう。小林も後になってこのあたりのところを反省していると記したような記憶があるが、おそらくは現状認識、問題意識のかなりのずれがあって、どうもピントの外れたおじさん、という印象が残ったのには糸圭には気の毒だった。小林も国家や外敵を相手にしたら蟷螂の斧に過ぎなくなるが、異端の一文芸批評家が相手ではチベット虐殺のような感じになってしまう。人間とは不平等なものだ。しかし、この吉岡の文章を読んで糸圭は過小評価すべきではないと認識させられた。ただ、自分自身が純文学の現状というものを判っているわけではないので、(2000年以降の芥川賞をすべて読んだという程度だ)彼らの危機感についてそんなによく分っているわけでもない。というか、もともとそんなに期待してないというのが正直なところなのだけど。

福田和也は取り上げられている『作家の値打ち』『「作家の値打ち」の使い方』とも読んでいる。私の場合、福田の評価によって読んでみようと思った作品も多いため、福田の書いたことをそんなに客観的に見られないということもある。ただ、村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』がすごい作品だということは福田と一致していて、吉岡の評価とは異なる。100年後に村上春樹がどういう評価を受けているかということは、これからの世界がどういう方向に行くかということとも関わって、いまだによく分らないものだろう。ただ評価が一定しないということが、次代に高い定評を得ることにつながることもあり、そういう意味で面白い存在だとは思う。

中上はもちろん名前は知っているがほとんど読んだことはないが、引用されている文章は一番味わいが深い。貫禄が違うという感じだ。渡辺直己はよく知らないが、少しは読んでみてもいいかもしれないと思った。

ただいずれにしても、現代の文学界で一番大きな問題の一つが商業化、文学の消費財化にあるということはあるだろうと思う。ダヴィンチなど読んでいてもそういうことはよく感じる。まあ生業である以上書いたものが売れなければ話にならないが、中身の薄いものが大量生産されているという現状は確かにあるのだろうと思う。未熟な新人が十分な達成をできないというのはともかく、川上未映子のように若くて魅力的な才能に注目が集中し、出版業的に消費されていくさまは彼女のブログ『純粋悲性批判』を読んでいると痛々しく感じるところはある。売れないことも悲しいが売れることも大変だ。忙しさの一極集中の格差問題のようなものが、はっきりとあるということは、好みの多様化、ロングテール化のある一方で大メディアにおいてはある意味金太郎飴化が進んでいるということで、市場原理主義の悪い部分がストレートに出ているということなのだろうと思う。

そういう意味では、読者がいさえすれば自分の信じる文章を自分のペースでささやかにブログで発表していくくらいがのほほんとしていていいのかもしれない。マスを相手にするのは気が重いが、読者がほしいのは物を書く人間なら誰しも切実なことだと思う。

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Amazonのマーケットプレイスで注文していた本がなかなか届かないので佐川急便に問い合わせたら、メール便というのは溜まってから仕分けするので4、5日かかることがあるのだという。宅急便と同じように、次の日に届くというものではないのだそうだ。一応納得はしたが、郵送で早く送ってくれる人に比べれば不満は残る。今まで発送方法はちゃんと見てなかったが、今後はなるべく確認しようと思う。

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関数グラフの描画ソフト「GRAPES」というものの存在を知り、使ってみたがこれは面白い。高校レベルの関数ならどんなものでも描画できるようだ。二次曲線や指数・対数・三角のからんでくる複雑な関数を一発で描画できるのは、学習している方も楽しいだろうと思った。こういう工夫が、日本の理系離れに歯止めをかけることにつながるかもしれない。

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