卵から林檎まで歌いつづける/エドガー・アラン・ポー『大鴉』『黄金虫』
Posted at 08/05/02 PermaLink» Tweet
昨日。午後から夜にかけて仕事。暇な時間を使って勉強していることが、かなり面白くなってきた。後半に入り、ばたばたと忙しくなる。結局帰ったのは10時過ぎ。コンスタントに忙しいとありがたいのだが、そうも行かない。寝る前に『ギリシア・ローマ名言集』を少し読む。面白いのが出てきた。しかし疲れがどっと出て布団をしく前にダウン。二時頃目が覚めて歯を磨き、ふとんをしいて着替えて寝る。熟睡。
ギリシア・ローマ名言集 (岩波文庫)岩波書店このアイテムの詳細を見る |
朝起きてモーニングページを書く。朝食後、『ギリシア・ローマ名言集』を読み、読了。クィンティリアヌスの言っていることが身も蓋もなくて面白いと思った。
一番笑ったのがこれ。
「哲学者のふりをすることはできるが、雄弁家のふりをすることはできない。」
全くその通りで思わず吹き出した。当たり前すぎる。しかし、Wilipediaでみると、クインティリアヌスは雄弁術を教育の根本ととらえ、哲学をそのライバルとして敵視していたらしく、それを知るとまたこの言葉の意味も変わってくる。
「(偉大な詩人について判断を述べるのは)控えめ、かつ用意周到でなければならない。というのは、よくあることだが、自分に理解できないと、その点を非難するなどということになってはいけないからである。どっちみち誤りを犯すのが避けられないとするならば、多くのことを否認するよりは、いっそのこと、すべてを容認する方がいい。」
よく分らない場合は容認しろ、という身も蓋もない指摘。でもそりゃそうだよな。よくわからないから否定する、というのは本当に迷惑な行為だから。でたぶん処世術的にもそうした方がプラスになることが多いだろうと思う、多くの人の思い込みとは反するが。
「野心はそれ自身では悪徳だろうが、しばしばそこからいろいろな徳が生まれる。」
これは深い。行動することによって徳が生まれる、その原動力としてなら野心は評価すべきだ、と考えてよいと思う。
「いろはを少しかじっただけで、もういっぱしの知識を得たつもりになる、これほど始末の悪いことはない。」
耳が痛い。(笑)始末が悪いしみっともない、ことはわかっていても。
そのほか好きな言葉。
「卵から林檎まで歌いつづけることだろう」(ホラティウス)
卵と林檎、二つの丸いもの。絵的にも面白い。卵は前菜、林檎はデザートだったそうだ。つまり食事の間中歌いつづけるということ。卵と林檎という比喩が私の心の琴を鳴らす。
「用心しているものにかぎってひっかかる」(プラウトゥス)
これも真実。用心しているものには、これだけ用心しているんだから、という安心感がどこかにある。それが落とし穴になる。で、ショックが大きい。よけい用心する、と悪循環に陥ると神経衰弱に陥る。
クインティリアヌスはほとんど邦訳がないが、京大出版会から全訳が順次刊行されるらしい。
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ポー詩集 (新潮文庫 ホ 1-3)ポー新潮社このアイテムの詳細を見る |
『ポー詩集』を読む。この表紙、よく見ると不気味だな。グロテスクといってもいい。好きなフレーズを少しずつ挙げる。
「花の真中に日もすがら/赤い太陽がものうげに横たわる」(不安の谷間)
「何と過ぎ去った幸福の夥しい情景が、/何と葬られた希望の、夥しい思いが現れてくるであろう。」
「今より私は/おまえの花の彩る海岸も呪いの国と思うだろう。」(ヅァンデ島の歌)
朗読してみるとその味わいがいい。思いついて『大鴉』(The Raven)の原文をネットで探し、プリントアウトしたのを朗読してみる。…これは素晴らしい。朗読するのが快感だ。途中、大鴉が現れてからはthyとかtheeとか古い言葉が出てきて難しく読みにくくなってしまうが、それでも細かく踏んでいる韻の快感は体を突き抜ける。原文は当然著作権がきれているので、少し練習して言葉も調べ、きちんと読みこなせるようにして、「蜂蜜壷」で朗読してみたいと思った。
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詩学 (1968年)西脇 順三郎筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
西脇順三郎『詩学』のうち、「ボードレールと私」をポーとの関連を探りながら読む。ポーに関してはそこら中に言及があるし、すべてを収拾するのは相当大変だ。もちろんポーは小説家でもあるから、そちらの方も読まなくてはならない。
今まで読んだことがあるのは、実は子どもの頃に読んだ『黄金虫』だけだ。あの暗号の解読。今でも鮮明に覚えている。まず英語だと断定し、一番出てくる文字である8がeであると仮定し、一番出てくる3文字の組み合わせをtheであると仮定し…と推論してついに文章を解読し、海賊の宝物を発見するというストーリー。文中に出てくる「北東微北」何ていう32方位の名称を覚えたのもこの小説だった。これしか読んでないけどかなり影響を受けている。
エドガー=アラン=ポー 怪奇・探偵小説集 (2) (偕成社文庫 (3123))エドガー=アラン=ポー,谷崎 精二,Edgar Allan Poe偕成社このアイテムの詳細を見る |
1840年代のアメリカというとどうしても後進国という印象だ。その中で世界文学となったエドガー・アラン=ポーはやはり奇跡的な存在なのだと思う。
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