今日は本当のことしか言わない日/教養のための読書と行動のための読書

Posted at 08/04/01

今日は4月1日。mixiを見ていたら、いきなりあるマイミクさんが名前を変えていて何があったのかと驚いて、今日は本当のことしか言わない日だと言うことを思い出し、なあんだ、と思った。やられました。

読書記録、昨年の6月~8月をまとめてみた。6月の前半は読むものに苦労していた感があって、方向性がない。オルハン・パムクを読んだりDVDを見たり、安売りになっていたレンタルビデオでウッディ・アレンを見たり。音楽をいろいろ聴いてみたり、麻生太郎を読んだりiPhoneの本を読んだり、写真を見たり。じたばたしていた。6月の後半は『NANA』にはまる。すごい勢いで読んでいた。これも、じたばたの裏返しなんだなと今にして思う。

7月は、過去の芥川賞・ノーベル文学賞作品を読む、と決めて2000年以降の芥川賞作品を『蹴りたい背中』とか『猛スピードで母は』とか読み続ける。このあたり、ほとんど図書館で借りて読んだので蔵書は増えていない。オルハン・パムクも和訳された作品はなるべく読んだ。8月になるとまた方向性を失って、今までのものの繰り返しになったり、あちこち摘まみ食い的になっている。

このあたりの読書記録を見ていて思うのは、従来の私の読書は「教養のための読書」だったんだということだ。特定の目的意識を持ち、行動に結びつく読書ではなかった、と言うことだ。知識のバックグラウンドを広げるための読書、自分のフィールドを豊かにするための読書、しかしその本たち同士、あるいは本と自分との間に有機的な連関が少ない、そういう読書だったんだと思う。

ものを書くようになってからもなかなか、行動、つまり書くことに結びつく読書への質的な転換が出来なかった。だから逆に、書くことにおいても自ら対象に身を乗り出して行ったり、ゼロから作品世界を構築しようと言う主体性、行動性がない、雑感的な、立ち位置の変わらない文章しか書けなかったんだなと思う。「堂に入った」まま出て来ない、と言う姿勢を芝居のエチュードをしているときに演出家に批判されたことがあったが、つまりはそういうことだ。演技をつくるために、あるいは作品を作るために踏み出す一歩が足りない、そういう状態で、でもどう踏み出したらいいか迷ってはいたわけで、じたばたはしていたのだ。

その流れを変え、うまく方向性を作り出してくれたのがキャメロンのエクササイズだったと思う。つまり「やりたいことをやればいい」ということなのだ。しかし、さまざまな観念で凝り固まっていると、自分のやりたいことが見えてこない。それを解きほぐすのが彼女のエクササイズの眼目なのだが、それはそれなりに成功したと思う。

言葉を変えていうと、教養のための読書は自分を同心円状に太らせ、豊かにはするが、その中心にある「自分」はどんどん身動きが取れなくなる感じがある。アクティブに行動するためには、そのとき自分に必要なものに飛び込んで身につけていく、裸一貫の姿勢みたいなのが必要なんだなと思う。

「考える」「自分の意見をいう」ことよりもまず、「知る」「理解する」方が大事で、「創造」とはもともと「理解」の本道なのだ、とダンテも言っている、と塩野七生が『ルネサンスとは何であったのか』で書いている。そして「知る」「理解する」ことによってより「考える」「自分の意見を言う」こともいっそう明瞭になるわけだ。「知る」ということは、片手間で出来ることではないのだ。そのへんはまあ、甘いところだったと思う。

ルネサンスとは何であったのか (塩野七生ルネサンス著作集)
塩野 七生
新潮社

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奈良裕明『小説のメソッド』は小説の書き方の実践的な本で、だからここで紹介された本も小説というのがどういうものかということを分かるような本が多い。有吉佐和子や山本周五郎を読んで、小説とはどういうものかということが前よりずっとよくわかるようになったと思う。同様に、今読んでいる西脇順三郎『詩学』も、詩というものが前よりずっとわかるようになる本だなと思いながら読んでいる。

1週間でマスター 小説を書くならこの作品に学べ!―小説のメソッド〈2〉実践編 (1週間でマスター―小説のメソッド)
奈良 裕明
雷鳥社

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詩学 (1969年)
西脇 順三郎
筑摩書房

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