新国立劇場バレエ研修所の発表会

Posted at 08/02/25

昨日は新国立劇場バレエ研修所の発表会に行った。とてもよかった。今でもうきうきした気分が残っている。

新国立劇場も東京オペラシティも多分行くのは初めて。昨日も土曜の春一番に続いて強風が吹き荒れていた。東西線は妙典―西船橋間が運転見合せ。私の使う駅は大丈夫だが、運休等にならないとも限らないので早めに出かけた。九段下で都営新宿線に乗り換え、京王新線に直通で初台で降りる。

初台といえば20号とその上の中央高速に直結する首都高、それと山手通りの交差点のところに巨大な吉野家があった、という印象しかないので、ここにオペラやバレエの殿堂が出来ると聞いたときは何か違和感があったものだった。

初台で降り、劇場の入り口に出ると強風。発表会は中劇場で行われるのだが、大劇場でオペラも行われていて、入り口はわりあい混雑していた。強風を心配して早く行きすぎたので、時間つぶしにオペラシティを歩く。空間の感じは、東京ミッドタウンなどよりはずっと雰囲気がいい。はいっている書店も舞台芸術関係の本が多いようだし、「日本弦楽器」なんて店が入っているのも感じがよかった。コンサートホールなどもあり、関係者らしき人が歩いていたりして、何というか「ものをつくる場所」という雰囲気が漂っている。

そこがいいんだなと思う。ミッドタウンには確かに美術館はあるけど、何というか貧乏な画学生や先端のアーチストが集まってくるような場所ではなく、「芸術なるもの」を消費しにやってくる小金を持った人たちのスペースという感じが漂っている。オペラシティには作り手の凛とした緊張感のようなものが漂っていて、私も身の引き締まる思いになったのだった。

ただ、ここに入りたいという喫茶店を見つけられず劇場に戻り、レストランに行ってみたがどうも混雑している。結局エクセルシオールカフェで時間を潰し、開場後に中劇場に入場したら思ったよりたくさんの観客。バレエをやっている小さな女の子たちがたくさんいるだろうという予想はしていたけれど、出演者と同じくらいの年の若い子たち、大人もかなりたくさんいた。中劇場とはいえ、定員は1100人以上。ほぼ満席だったのではないだろうか。入場料は1500円だが、1000人から集めれば150万円。国立の研修所の維持費の補助としては悪くないかもしれない。

しかし予想していたこととはいえ、観客の女の子たちがみなスタイルがよくスレンダーで何より素晴らしいのは姿勢がいい。歩き方が綺麗だし、ほとんどの人がバレエをやってる(た)のではないかと思った。目の保養、目の保養。スタイルがいいから体の線が割合出るものを着ていても嫌味にならない。バレエというのは根本的に体の線を見せる舞踊芸術だから、みな無意識のうちに体の線を出すことに抵抗がなくなるのだと思う。バレエといえば男性舞踊手の「前」が気になるというのが定番だが、あれも腰から脚の体の線を極限まで出すということのためにああなっているということを知ってからは私はあまり気にならなくなった。その辺りにいる子たちの着ているものを見ても、トルソーとしての肉体にひらひらと飾りとしてついているという感じで、肉体が主、衣装が従という関係がはっきりしている。日本の衣装は根本的に衣装を見せるために肉体があるというような感じすらするので多分日本的な美意識というのは「体(の線)を見せる」ということの対局にあるのだろう。文楽など日本の人形芝居では衣装の中にまともに体はない。女の人形に関していえば脚までない。そういう美意識とは対照的な身体のとらえ方をしているんだろうなあと考えながら、ロビーを往来する彼女らを眺めていた。しかし考えながらも目はしっかり保養していたと思う。

ロビーはガラス張りで、外は強風でも太陽が強く照り付けていたので温室のようになっていて、少し喉が渇いた。でもこういう雰囲気は好きだ。

演目はまずクラシカルで「ジゼル」のペザントのパドドゥ、「海と真珠」、「海賊」のオダリスクの踊り、牧阿佐美振付の「シンフォニエッタ」。「海と真珠」がとてもよかった。どれも舞台で実際に見るのは初めてだが、踊りも綺麗で幻想的だし、「海」のジュテが高い。一番充実しているように思った。

次はコンテンポラリー。ベジャールみたいのを期待していたのだがちょっと予想が外れた。ただひたすら綺麗で華やか、という感じ。まあ考えてみれば、発表会なのだし難解なものやる必要はないんだよな。平易で明るいものがこういう場の雰囲気にはあうのだなと思った。

最後がスパニッシュ。ギター、カンテ(歌)、パルマ(手拍子)の三人も舞台に登場した本格的なフラメンコ。フラメンコのカンテをちゃんと聞いたのは多分24年ぶり、アンダルシアで聞いて以来。3人ともめちゃくちゃうまくて感動した。踊り、最初はフラメンコにしては上半身が貧弱に見えてちょっとなあ、と思った。バレエは下半身の動きに注目が集まるが、フラメンコは上半身が豊かでないと魅力的でない。スレンダーなバレリーナにはスパニッシュは難しいんじゃないかと思ってみていたが、だんだん上半身も豊かにふっくらと表現されるようになってきて、結構満足した。

最後に研修生一人一人のご挨拶。高校を出たばかりの子たちがバレエ芸術への熱い思いを一人一人語るといい物を見たなあと実感させられる。眼福、耳福。今後の活躍に期待したい。

今回の公演は単純に楽しめた。難しい現代芸術でなく、かといって未熟な子どもの発表会でもなく、「総合芸術」であるためにいろいろなところに目が行ってしまう古典バレエの本公演でもなく、基本的な技術がきちんと身に付き、それでいて微笑ましい程度の未熟さが残る。失敗はあってもそれで興醒めになるということもない。全くいいものを見たという感じで心を暖かくして劇場を出ることができた。

***

新宿に出て久しぶりにカフェユイットをのぞいて見る。混んでたらすぐ帰ろうと思っていたのだが、運良く10分待ち程度で入れた。カシスのビールとホットアップルパイ(生クリーム・アイスクリーム添え)を注文。カシスのビールは甘いけれども美味しいし、アップルパイに合うと私は思う。混んでたので早めに出て、紀伊国屋でいろいろな本を立ち読み。おなかを少しこなしてから地下に降りて加穂音でロールキャベツ定食。これも久しぶり。また上に上がって本を立ち読みしてから帰宅。東西線はもう西船橋まで動いていた。

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by Luke Peterson

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