自我と自意識
Posted at 08/01/16 PermaLink» Tweet
今日は腰痛の後始末というか、操法を受けに松本まで。電車で行ったら、松本駅のあたりでかなり強く雪が降ってきた。松本電鉄の駅から少し歩くので、止んでほしいなと思ったが、そうは行かず。それでもそんなには濡れなかった。
帰りは少しは小降りになっていたけど、松本駅の駅ビルで昼ご飯を済ませているあいだも降り続く。塩尻を出たころでこんな感じ。
しかし地元の駅に戻ってきたら、雪なんか降ったの?という感じ。普通電車で40分ほどだが、かなり世界は違う。明日はまた松本に仕事で行くが、さてどんななんだ。
ところで「自我」って何?という疑問が突然。長い間「自意識」と混同していたことに気がついた。「自意識」って、私の解釈では他者から見た自分を意識すること、なのだが、自意識は明らかに過剰であることが多かったとは思う。
「自我」、というのは多分もっと能動的なものだな。「自我意識」というのを広辞苑で引いてみると、Ⅰ-自己の能動性の意識、Ⅱ-自己の単一性の意識、Ⅲ-時間が経過しても同一であるという意識、Ⅳ-外界や他人と対峙して自分が存在しているという意識、ということになるようだ。心理学用語だな。
よく「自我の殻」、なんていうことを言ったが、それは主にⅣのことを言ってることになるんだろう。80年代は自我の殻を破る、近代的自我の限界をいかに超克するか、なんてことがよく言われていて、私も見田宗介のゼミなんかに出てたからそういうことはよく考えていたんだけど、実際のところその前提となる自我というものについてあんまり考えちゃいなかったんだなと今思えばそう思う。
「自我の殻」を破り、「我」を抜いて自己を解放するという思想は、それを実行というか悪用したオウム真理教事件以来カルトの常套手段として悪評紛々だが、もともとそれに近いことは禅の悟りのシステムとか、仏教の中には内在しているものではある。実際仏教のなかでもカルト化しやすい危険を秘めた部分ではあるが、だからこそある種の奥義でもある。いんちきな宗教者がつかったら非常に危険だ。
まあ私はあんまりそういうことを考えてなかったし、大体そっち系の話でも感覚的にこれは安全、これは危険、と置く距離を決めていたからオウムみたいな誰がどう見ても危ないだろうというようなものには近づかなかったけれども、まあその分そういう問題についてそんなに真剣に考えたわけではないというか、自我という問題にあんまりきちんと直面したことはなかったんだな。
自分の問題は「自意識」であって、「自意識」に縛られることはあっても「自我の殻」に閉じ込められることはあんまりなかった気がする。それは多分Ⅰの能動性の不足に由来するものであって、あんまり誉められたことではない。
そういえばキャメロンの"The Artist's way"の12週のエクササイズを終了させた。
ずっとやりたかったことを、やりなさい。ジュリア キャメロン,Julia Cameron,菅 靖彦サンマーク出版このアイテムの詳細を見る |
なかなかよく出来たレッスンだったが、今考えてみると要するにこのレッスンの眼目は自我の能動性の回復と活性化にあると言っていい。複雑な社会の中でそれぞれがそれぞれなりに必死に社会に適応していくうちに、自分のやりたいことを見失ってしまったり、あるいは最初から自分のやりたいことをうまく育てられないまま大人になってしまうことがすごく多いのだと思う。そういう意味では、「やりたいことをやる」ことは社会との折り合いのつけ方が最終的に問題になるわけだけど、実際には社会にぶつかる前に自分自身の自己規制によって花開かないまま枯れてしまうことの方が多いのだ。社会はむしろ、それが社会にとって有益なものなら結構寛容に受け入れるものなんだなと最近思う。自己規制によってそうした素晴らしい芽、美しい芽を摘んでしまうことは残念なことだ。自分にとってもプラスになるだけでなく、社会にとっても最終的にプラスになる部分が、多くなるようなレッスンなのだと思う。
まあ私が数十年ぶりに「自我」の問題なんかを考え出したのも、幸いなことにかなり「自我」の能動性が回復してきたからなんだろう。表現にとって、特に文章表現にとってこれは重要なことなんだと思う。まだ作品には結実するまで時間がかかりそうだが、ちょっとその辺のところを考えてみたいと思っている。
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