コム・デ・ギャルソン/平原綾香/すべての存在に言葉を与えること

Posted at 07/10/09

来年の春夏物のパリコレが終了。コムデギャルソンの今回のショーはとてもいい。アニメ的、そういう意味で日本的なのに、間違いなくコムデギャルソンで、パリコレ。こういう作品を作れる川久保玲という人は相変わらず才能が炸裂している。すごい。テーマは「不協和音」だそうだ。なるほど。日本でコムデでパリ、不協和音を一つのファッションにまとめる才能が尋常でないことはこの写真を見ると実感される。

で、2月にあった今年の秋冬のコレクションも実は昨日始めてみたのだけど、これも好きだ。この会のテーマはキュリオシティー(変わったもの)だそうだ。確かに変だけど、それがとてもかっこよく見える。コムデはやっぱりいつも新しい。

平原綾香が自然に口をついて出てくる。『ジュピター』のさびの部分はもちろんなのだが、NHKの自然番組、『ダーウィンが来た!』の主題歌の「Voyagers」も歌っているということを知った。もっと積極的にこういうポップスを聞くといいかもしれないと思う。

横田早紀江さんが安倍前首相のことを、「きっと、又カムバックされると思う。神様が安倍さんを見放すことはない、そう私は信じているの」と言っておられるというのを読み、横田さんがいかに安倍さんに感謝しているか、そしてその再起を期待しておられるか、ということに感動を覚えた。やはり人々が安倍さんを信じ、安倍さんに期待したのは、完全に埋もれかけていた拉致問題を掘り起こし、政治の場に乗せ、そして中途半端ながらも一部の拉致被害者の帰国に成功した、その一本気さにあるのだということを改めて思う。政治の権謀術数の世界ではうまくやれない部分もあったのは確かだが、どういう形でも再び理想を語れる政治家として再起していただきたいと私も思った。

鈴木正三の「己に勝つを賢とし、己が心に負けて悩むを愚とす」(『萬民徳用』)という言葉を読む。問題を解決するためにあれこれ考えるのはいいけど、それが自分の心との戦いになり、そしてそれに負けることで悩むのは言われてみれば本当に愚かだ。しかし実にそういうことは多い。これも大事にした方がいい言葉だと思う。

『ルナアル詞華集』を読み続ける。早く読むことに意味はない。印象に残った言葉をいくつか挙げる。

ルナアル詞華集
ジュール・ルナール,Jules Renard,内藤 濯
グラフ社

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 夜。とつぜん太鼓の音が聞こえるような気がする。

あまりに静かだから。太鼓の音、という言葉になぜこんなリアリティがあるのだろう。
 森はひがな一日、木の枝で夜をいくらか引き止めている。

そう、森の中にはいつも夜がほんの少しある。あの感じを言い当てられた感じがする。
 蝶―――流浪している花。

美しいのに、なぜあんなに頼りないのだろう。
 ガラスコップのように清潔な空。

透明感。ガラスコップをよく洗うことで生じるあの清潔感が、空には最初からある。
 あんまりしんとしているので、私は耳が聞こえなくなったのではないかと思った。

この感じ、とてもよくわかる。一人で居るといつの間にか、世界に自分ひとりしかいないような気がしてくる。音がないと、耳がなくなったような気がする。孤独というのではないけど、自分の中で穏やかに何かに適応していくこと。

 枝に止まった小鳥、その頭の美しい不安。
そう、なんで小鳥ってあんなに落ち着かない感じがするんだろうね。あんなにきれいなのに。小さな美しいものって、本当にすぐ壊れそうで、その感じが小鳥の雰囲気とオーバーラップして不安という言葉が生まれる。そういう現場を、ルナールは見せてくれる。

つまり、ルナールのしたことは、「すべての存在に言葉を与えること」なのだ。ただそこにあるだけでは生じない存在や現象と人間との交流が、ルナールによって与えられた言葉によって動き出す。それが本来の詩の役割なのだ。『リグ・ヴェーダ』に「連れ立つ友なる二羽の鳥は、同一の実を抱けり。一羽は食らい、一羽は食らわずして注視す」という句があるが、この鳥に与えられた言葉が数千年の時を経て私たちが読んでいる不思議を思う。言葉は、どんなに不完全であっても、世界と私たちの間に与えられた交流の手段であり証なのだ。世界に言葉を与えることを怠ってはならない。ルナールの言葉は美しい。美しい言葉を与えることで初めて、世界は美しくなる。書く者自身にとって。そしてそれを読む者にとっても。

蛇足を付け加えれば、それはある種の善意であり、ある種の愛だ。そしてそういう善意や愛に対して、批判はありえる。言葉が一人よがりにならないためには、言葉が開かれていることが、つまり決め付けない言葉であることが大事だろう。私はこんなふうに感じたよ、あなたはどう?という言い方。決め付ける言葉を使うとそこで閉じてしまい、世界はただ作家によって利用される存在に貶められてしまう。世界を囲い込むのでなく、世界に風を吹かせるような、そんな言葉を使いたい。

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by Luke Peterson

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