朝日と強風/ぼくはたましいに耳を傾ける/私の偶像
Posted at 07/10/08 PermaLink» Tweet
今朝。起床5時半。昨夜は10時ごろ寝たので、朝目が覚めたのは早かった。ベランダに出る西の窓を開けると、向かいの後者の団地がうっすらと朝日を浴びて明るくなっている。まだ夜明け前だが、朝焼けの乱反射だ。今散歩に出れば、朝日を見られるだろう。飛び起きて外に出る。
パジャマで寝ていて少し汗をかいたので、半袖で出かける。少し寒いかと思ったがさにあらず。散歩道を通って中学校の南側に出、コミュニティ道路を歩いて丸八通りを渡る。少し雲が出ていて朝日は見えない。そのまままっすぐ行って、東西線が地上に出て来る所の横を歩いていくと並木道。ちょうど並木を歩いているときに日の出になって、木の陰に隠れて朝日が見えない。木の切れ間まで行って朝日を拝む。
そのまままっすぐ荒川に向かって歩く。清砂大橋に上る歩道を歩いて行って、途中から堤防に降りる道に下る。堤防に上って川原に少し降りる。雲がかなりあって、その隙間から朝日が見える。荒川は風が強い。海の方から強い風が吹いてくる。しばらく朝日に対面して、今度は清砂大橋に沿って歩いて帰る。マンションがすっぽんすっぽん建っていてなんだか違うところを歩いているみたい。昔はこのあたりはほんとに潰れかけたようなうらぶれた工場がすこん、すこんとあるだけだったのに。高そうなマンションがすっぽんぽんと建っていてなんだか奇妙な感じ。
マンションの間を抜ける道を北側に出てみたら、ちょうど東西線が地下に入る口(これが有名な地下鉄を入れる穴だ)のところを通ってさっきの並木道に出る。ウチのマンションも大きいと思っていたけど、このあたりに出来た巨大マンションと比べるとなんだか可愛いものだ。なんだか縮尺が違う感じがする。南砂町の駅を過ぎて普段見慣れた地元に帰ると、どれもこれもこじんまりした感じになって、なんだか奇妙な非日常体験をした気がした。
歩いているうちに平原綾香の『ジュピター』が頭の中に繰り返し流れて来て、ふと気がつくと、"Everyday I listen to my heart."という言葉が、とてもいい言葉だなと気がつく。
歌詞を調べて、曲が聴きたくなり、リッスンジャパンというサイトに登録してダウンロードした。210円というのは、多分中古でもCDを買うよりは安いんだろう。「毎日ぼくはぼくのたましいに耳を傾ける」そんなふうに訳してみた。
うちに戻ってきていろいろとものを書いて見る。そのうち電話がかかってきて友人と話す。気がついたらお昼を過ぎた。近場で買い物を済ませて昼食。そのあといろいろ書いているうちに欲しい本が出てきた。
3時過ぎに丸の内丸善に出かける。検索機で探したらあるはずの本が本棚にない。下の引き出しも開けてみたがわからない。店員に聞いても見つからず、別の店員を呼んできて、違う引き出しを開けたら入っていた。なるほど後一歩だったな。ジュール・ルナール/内藤濯選訳『ルナアル詞華集』(グラフ社、2003)を買う。
ルナアル詞華集ジュール・ルナール,Jules Renard,内藤 濯グラフ社このアイテムの詳細を見る |
その後4階に上ってマークスのスケジュール帳を買う。結局、ジュルネ・ド・パリのアイボリーにした。
2008 ダイアリー アポイントメント・プランナー/ジュルネ・ド・パリ/AV1(アイボリー)124844 1,260円(税込)
引っかかっていたのはこれが朝8時からしかスケジュールを書けないことだったのだけど、今年のスケジュール表を見たらやはり8時からしか書けなくて、まあそれでもどうにかなっているのでそれでいいかと思ったのだ。それから万寿屋の原稿用紙、200字詰めのものを買う。
どこかでお茶を飲もうと思い、東京駅から呉服橋の交差点に出、八重洲の町を日本橋の方に歩いて、ルノアールの前を通ったが、結局高島屋の向かいのボナールに入る。ルナールを読むのはルノアールかボナールか。おフランスな悩み。本当は悩まなかったけど。
コロンビアを飲みながらルナールを読む。読みながら、ああこれが私の文学体験の原点だったのだ、ということを確認する。読んで面白い、というのならナルニアがあった。しかしこういうものを書きたいという意識が無意識の底流となって自分の中にあったのは、これだったのだと思う。
風がページをめくる。しかし、読めはしない。
今年はじめての上天気。パセリ入りのオムレツといった感じがする。
貸し巣。どの枝にも水道あり。日当たりもよし。
時として、立ち止まっているように見える燕。
どの言葉も、心の中にくわっと入ってくる。詩というにはリアルすぎ、散文というにはポエジーがありすぎる。よく出来たアフォリズム。しかし芥川龍之介の『侏儒の言葉』のようなわざとらしさがない。「軍人は小児に似ている」とか、なんか俗情と結託しすぎだ。パセリ入りのオムレツとか、もうストレートを食らってヤラレタという感じ。
もともとこの本は『ルナアルの言葉』という題で、内藤濯(ないとうあろう:『星の王子さま』の訳者:為念)大先生がルナールの『日記』の中にちりばめられている警句を好き勝手に集めて訳したもので、2003年に改題されて再刊されたものだ。私がこの言葉を読んだのは、実は中学一年の国語の教科書で、一番最初の単元がこれだったのだ。当時の私は不本意ながら坊主頭にさせられて(そういう校則だったのだ)、ずいぶん腐っていたのだが、国語と音楽の女の年配の先生が担任で、これを授業でやったとき、妙に心に残ったのを覚えている。
授業で、「同じようなアフォリズムを作って見なさい」といわれて作った。のが、「人間は山の木を切って家を作り、庭を作って木を植える」というもので、これが馬鹿に誉められたのでよく覚えている。ルナールのセンスとは違うが、まあアフォリズムってこんなものかもしれない。まあパクリ臭いけどね。でも、このルナールの言葉のセンスにはほんとどこかに憧れがあって、今読んで見ると、自分が書いた詩でも散文でも結局はこのセンスを目標に書いていたんだな、ということがよくわかった。自分はなんだか目標を見失っていたのだけど、この本を手にしてみるとなんだか勇気が湧いてくる。こうした言葉に負けない言葉を自分は書いているか。いや、そこまで達してなくても、それを目標に努力できるというだけで、どれだけ心安らかなことか。今まで、この作家の言葉に負けない言葉を書きたいと思える作家がいなかったのだけど、確かにルナールは私の偶像なのだと思った。
改めて読んで見ると、ルナールはその日記も岸田國士によって訳されているらしい。これは以前は新潮文庫でも出ていたようだが、今では手に入らない。図書館で探すしかないだろう。私の日記も、フランス語に訳されるようなレベルになるようにブラッシュアップしていきたいものだと思う。
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