夢中になって話すと伝わらない/魂の奥底を揺り動かす力
Posted at 07/09/15 PermaLink» Tweet
昨日帰京。車中、『カラマーゾフの兄弟』を読んだり寝たり。わりあいあっという間に新宿に着いた。かなり没頭して読めるようになってきた。
地下鉄で地元の駅で降りて、何か軽い食べ物を買おうと思い、セブンイレブンに入ったら、矢沢あい『NANA』の最新刊が出ていた。早速買って帰る。この時間までにもう7回くらい読み返したか。
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連載の66話から69話に、特別読みきりの特別編[TAKUMI]。69話はクッキーの連載で読んだ。66話は未来編が中心、かなり現状と変化している内容がポロ、と書かれていて興味をそそる。ていうか思わせぶり。67話で事件が起こり、68話でその対応。69話は一応その再スタートという展開なのだが、68話が一番ショッキング。内容はネタばれだからかけないが、いくつか重要なキーになる言葉が出てくる。
結局寝たのは3時。朝起きたのは8時過ぎ。いろいろやっているうちに友人から電話がかかってきて話す。どうもなんとなく話がよく通じない。多分こっちに問題がある。『カラマーゾフの兄弟』に登場人物が「夢中になって」「熱っぽく」「我を忘れて」話したりまくし立てたりする、という描写が続出するが、これだ、と思うことを夢中になって話したりするときというのはたいてい相手には何を言いたいのか伝わってないし、全然見当違いのことを理解されていたりする。こっちにとって分かりきった当然の前提のことなど話したくないのだが、それを話さないと相手には何を言いたいのか全然伝わらない。
この「夢中になって話す内容」が本当に伝わる相手、というのが得がたい話し相手なんだろうと思うのだが、なかなかそういう人はいない。たましいの奥底にあるものについて話し合える相手というのは、もちろんそんな簡単にいるはずはないけれども。
『カラマーゾフの兄弟』は第1巻を読み終わり、現在第2巻の182ページ。第3編「女好きな男ども」、第4編「錯乱」を読み終え、第5編「プロとコントラ」に入っている。
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1-p.278「高みにいる人間」に「赦してもらう」という発想。これは何か分かる気がする。p.339「瞑想する人」。何も考えず、たたずんで瞑想に耽っている、そういう農民が、ロシアにはたくさんいる、というのが印象的。私もそれに近いときがあるからよく分かる気がする。
『カラマーゾフの兄弟』は、読み始める前に持っていた印象よりもずっと宗教的な作品だと思った。「聖なるもの」とか「たましい」の話。私は読んでいる間、たしかに目は文字を追っているし、頭は作品の展開を追っているのだけど、心の深いところでは何も見ていない、何かたましいが文字や書かれている内容のその先にあるものと会話をしている感じになってくる。内容の如何に関わらず、たましいがただかつかつとどこかを歩いているのを感じるのだ。
こういう感じを、今まで自覚したことはなかった。しかし、たしかに感じたことはあった。子どもの頃、『ナルニア国』のシリーズを読んで、とにかくただひたすらその世界にのめりこんだのも、最近では『NANA』にはまったのも、同じ「たましいの会話」が奥深いところで行われるという感じだということに気がついた。ただ、それが「たましいの会話」という言葉と結びつかず、感動の内容を表現しようと思っても表面的に書かれている内容について言うくらいしか出来ず、結局何も表現できないまま本題からずれていってしまっていたのだが、『カラマーゾフ』はまさにたましいの会話の話なので、そういう言葉を自然に獲得できたのだと思う。普段に比べて読むスピードはずっと遅いのだが、その世界に自分がはまっているその感じは抜けない。
東京はなんだか暑いな。気だるくて、集中力が失せる。
……ああそうだ。そういえばダンテ『神曲』の「地獄篇」もそういうたましいの奥底を揺り動かす力を持っているな。
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