流れは福田へ/「冷笑の福田」対「ゴリ押しの小沢」/天成のクラウン
Posted at 07/09/14 PermaLink» Tweet
今週は何しろ安倍首相の辞任ショックが大きい。政治家に期待しても仕方がない、というのが今まで習い性だったけど、安倍首相には実際かなり期待していた。政治家としての生を全うするためには、やはりスターリンのような鋼鉄の神経が必要なんだなあと改めて思う。そういう意味では問題のある大臣さえ辞めさせられなかった「優しい総理」では、この生き馬の目を抜く世界ではやっていけないんだなあと思う。
イギリスのブレア首相などを見ていると、わりあい普通のセンス、普通の神経でもあれだけやれるんだなと思っていたのだけど、ブレアにあって安倍さんにないものは一体何だったんだろう。まあしかし考えてみると、ブレアは古いゴリゴリの労働党を、「クール・ブリタニア」のキャッチフレーズの元資本主義路線を大きく取り入れた「ニュー・レイバー」に変化させ、その実績の元に政権を取ったわけだから、政権奪取の過程が「小泉さんの事実上の禅譲」だった安倍さんとはタフさにおいても違うんだろう。安倍さんのような人が政権につくには、多分そういう道しかなかったのだと思う。それだけにガラスのようなもろさはあっても防衛省昇格・教育基本法改正・国民投票法と一定の成果をあげることは出来た。ただそういう戦後レジームの見直し問題は、しばらくのあいだ停頓することは避けられそうにない。
自民党は、麻生幹事長後継で決まりかと思っていたら、福田元官房長官がやる気を見せたとたん、雪崩を打って福田後継の流れが出来た。対中国恭順路線の福田が政権についたら、北朝鮮問題も米朝の方向に擦り寄るだろうし、このままでは百年経っても拉致問題は解決しない、という方向に行きそうだ。自民党の各派も、麻生幹事長の「巧妙な立ち回り」に嫉妬・反感がかなり強かったようで、その感情的な流れが福田後継をあっという間に押し上げたような気がする。
県連レベルでは麻生支持も一定はあるようだが、国会議員の趨勢はもう福田だろう。小泉・中川が福田支持ではもう動きそうもない。それにしてもそうなると森・小泉・安倍・福田と四代続けて清和会(旧福田(赳夫)派)ということになる。それでもみんな福田に乗るわけだから、派閥政治などと言うけれども派閥の意味あいがもうすでに昔とは全然変わっていると言うことで、そういう政治構造の分析をもっときちんとやってほしいと思う。
福田後継となれば「冷笑の福田」対「ゴリ押しの小沢」の対決となる。さあどんなことが起こるか。安倍政権時代と違い、何か期待をもって政治を見るということができなくなり、醒めた冷たい目で見るようになる気はするが、それでも日本で暮らしている日本人である以上、無縁であることは出来ない。わたしは福田より麻生の方が「より少なく悪い」と思うけれども、多分世論調査でも福田支持の方が強いのではないかな。今日はマンガ・アニメなどの麻生関連株(笑)もかなり売られていた気がする。
***
個人的なことだが、ちょっと変な自信をもってしまったことがあって、今週はそれがことごとく裏目に出て大いに反省した。観察の結果こういうことがいえる、ということにしたがって先週までは特に欲もなくやってきたのがうまくいっていたのだけど、今週は「自分は出来る」という気持ちになって失敗してしまったという感じだ。来週以降は原点に戻ってもっときちんと観察し、「これは面白そうだ」と思うものをきちんと見出していく方向でやらないといけないなあと思った。私の人生、そういうことが多いな。そういえば今朝、別れた嫁さんの夢を見た。最近全然見てなかったんだけど。あの結婚の失敗も、その手のことだった。いや上記の失敗は、別に女性に関することではないけど。
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ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』第1巻、現在266ページ。第2編「場違いな会合」がなかなか面白かった。ロシア独自の登場人物、みたいなのがたくさん出てくる。民衆の悩みや苦しみを聞き、救いを与えるゾシマ長老。今の日本でも、瀬戸内寂聴などたくさんの信者?を集める説教者というのはいるけれども、民衆に救いを与える発言の内容は、瀬戸内よりも美輪明宏の方がゾシマ長老に近いと思った。日本は結局ある特定の宗派というよりは、もっと混沌とした信仰が主流だし。
カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)ドストエフスキー,亀山 郁夫光文社このアイテムの詳細を見る |
「神がかり」と呼ばれる存在は、プーシキン『ボリス・ゴドゥノフ』を読んだときには「瘋癲行者」と訳されていたと思うが、この作品の中でもかなり重要な存在のようだ。スメルジャコフの母・リザヴェータのエピソードは何か心を打つものがある。こういう人が大事にされた帝政ロシアという社会は、案外悪いものではなかったのではないかという気もしてしまう。こういう極端な存在が神に近い、という観念がロシアにはあるのだなと思う。それはロシアだけのことではないが。それにしてもなぜ、ゾシマ長老はドミートリーに跪いたのだろう。この謎はどこかで解かれるのだろうか。
それにしてもこのフョードルという親父は可笑しいな。人間のあらゆる弱さ、汚さ、ずるさ、開き直り、女好き、だらしなさ、強欲、そういうものすべてを体現しながらどこか憎めない。すぐ捨て鉢になって無茶苦茶な道化を演じてしまうところなどは天成のクラウンとでも言うべき存在なんだなと思う。召使のグリゴーリーも好きだな。こういう人物造形の確かさが、小説世界を支えているんだなと改めて思う。苦しみの中で生きている人には実在感がある。日本とは違う実在感だとは思うけど。
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