気圧低下/イスラム教徒は宇宙でもアラーを信仰する/不条理な跳躍

Posted at 07/08/02

天気がよかったり悪かったり。陽射しも強くなったり弱くなったり、かなりころころ変わる。熱く黒い雲が出てきたと思ったら急に雲が切れて強い日が射したり。台風が近づいている影響なのだろう。もう梅雨は去ったなと思わせる、夏の天気だ。

台風が近づいていることの副作用はもう一つあって、気圧が下がってきていることだ。私はどういうわけか気圧の変化に弱くて、特に今朝はだいぶ気持ち悪かった。でも朝からいろいろばたばたして、ちょっと気持ちが引き締まったので、なんとか乗り切っている。

昨日は午前中図書館に出かけて、藤沢周の『ブエノスアイレス午前零時』を借りようと思ったのだが貸し出し中だった。それなら他の藤沢作品を借りようと思ったのだけど、少し読んだ限りでは今読みたい感じのものではなかった。いろいろ物色してみたのだけど、結局平野啓一郎『日蝕』を借りた。

日蝕
平野 啓一郎
新潮社

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平野とこの作品については、私の記憶が正しければ佐藤亜紀とかなりやり取りというか論争というか紛糾というかがあったように記憶している。まだ少ししか読んでいないけど、かなりペダンティックな漢語の使い方が鼻につくのはまあご愛嬌として、そのように古色を演出しているのだけどどうしてもその時代の人っぽさがなく、現代の、それも日本人の知っていることを日本人の思考に従って書いていることは免れえず、まだこの作品の面白さを見出せていない状態だ。作品に出て来る古典古代の思想家の話がどのくらい面白いかにかかっているかもしれない。

***

オルハン・パムク『雪』は今320ページ。大体55パーセント読み進んだ。恋人の妹の、政治的イスラムのカリスマの愛人とカリスマに関するところが面白いなと思ったということと、もう一つは政治的イスラムに傾倒する宗教高校生がSF作家を志しているということが、よく考えてみたら皮肉で奇妙な話なのだけど実態なんだなと思った。イスラム教徒は、宇宙に進出してもやはりアラーを唯一神として信仰しているんだと言うことが、考えてみれば当たり前なんだけどそのように示されると眼から鱗が落ちた感じがした。


オルハン・パムク,和久井 路子
藤原書店

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自分自身の新しい小説のテーマを考えていて、カルメンマキ・甲野善紀・名越康文『スプリット』(新曜社、19981)を読み返していたのだけど、「自分がやりたいことがなんだか分らない」状態から「分った」状態になる間には、不条理な跳躍がある、という指摘がそのとおりだと思った。だから「分らない状態」を大切にしなければいけない、という指摘はそのとおりだと思った。しかし、実際にはなんだかわからなくてもとにかく何かやってみようと思うことが多いわけで、何がなんだかわからないうちに深みにはまってもうこれで仕方がないと思ったり、やらなきゃよかったと思ったりする。私の人生もそんなことの繰り返しだったからよく分るんだけど、分らない状態を大切にしつつ「不条理な跳躍」の訪れを逃さないようにすることが大切なのだと思う。

スプリット―存在をめぐるまなざし歌手と武術家と精神科医の出会い
カルメンマキ,甲野 善紀,名越 康文
新曜社

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今自分自身に当てはまるのは、一つの作品を書き終えたときに次のテーマがすでに決まっていること、あるいはすぐに書きたいものが出てくることもあるのだけど、(特に短篇を書いたあとはわりとすぐ次の作品が出てくる)何が書きたいのか、何を書くべきなのか、わからないことが多い。で、これは正直言って考えれば考えるほどわからなくなることが多い。じゃあいったい、考えるということにどういう意味があるのかと思うけど、考えなければ新しい作品のヒントもでてこない。「探すのを止めた時見つかること」もあるんだけど、そんなにうまくいくとは限らない。

でもそれをそう思っていれば、不条理な跳躍が訪れたときに必要なテンションを持っている(そのときに突然生じたってかまわないけど)こと自体のほうが大事なんだろう。使わなくてもたくさんのディテールを持ってるとか、タッチを持っているということのほうが大事なんだろうと思う。

ただその跳躍を不条理に感じるというのは、逆にいえば修業不足なんではないかという気もする。多分本当は、それは必然なのだ。必然の訪れを不条理に感じるということは、その必然の起こる「流れ」が見えていないということになる。鳥の目、虫の目だけではなく魚の目が必要で、その魚の目を見えるようになることが修行というものなのだろうと思う。

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by Luke Peterson

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