誰も喜んでいない民主大勝
Posted at 07/07/30 PermaLink» Tweet
雨が降って気温が下がったせいか、それとも気圧が下がったせいなのか、急激に眠くなって二度寝してしまった。少し寒くて長袖を着て、布団をきちんとかけても暑くない。参議院選の結果が出た後の今の日本と、同じような感じなのかもしれない。
今回の選挙はみな自民党の惨敗だといっているが、結果を見れば民主党の圧勝だ。自民党結党以来、参議院で第一党の地位を失ったことはなかった。民主党が選挙結果ではなく勢力分布として第一党になったのは初めてなのだし、他の中小野党もみな後退か現状維持なのだから、「民主党勝利」なのだ。なのにそれを喜んでいる声がほとんど聞かれない。自民党の敗北をしたり顔で批評している人はたくさんいても、民主党の勝利でこれからに希望が膨らむ、という感想を述べている人は今のところ全くみていない。
明らかに今回の選挙結果は、自民党の選挙戦略の失敗に起因している、ということなのだ。そして「自民党に入れないよ」という票をすべて掬い上げることに成功したのが民主党なのであって、「自民党批判受け皿政党」としての小沢民主党の戦略、「受け皿戦略」は完璧だったといってよい。国会の開会中から一人区を精力的に回り、投票日には倒れて静養している小沢の戦略は、「民主党はこれをやる」ということより「自民党はダメだからうちに入れてね」に尽きたのではないか。選挙のプロとしての小沢の力を再確認させられた。しかしその結果について、民主党の議員たち自体もこれほどの勝利には戸惑っているように思われる。それで、「誰も喜んでいない民主大勝」という印象を与えているのだと思う。
この結果を受けて政局はどのように推移するか。まだ全然分からないけど、外れたらご愛嬌ということで許していただきたいのだが、安倍首相は続投し、中川幹事長をはじめとして主だったところは総退陣。閣僚も、問題発言等の責任がある人たちはみな首にされる、といった感じで党内粛清の嵐が吹き荒れるだろう。麻生外相は残しておかないと後が困るから横滑りがあるかもしれないが、閣内には残るだろう。(だいたいあの発言は田中真紀子の方が悪質だ。それで新潟では民主現職が落選したのかもしれない)
片山虎之助参院幹事長の落選など、安倍首相と傾向の違う大御所の影響力はますます弱まり、今回の当選者37人のうち18人は新人だし、「美しい国」批判発言の高知の現職も落選した。現実には、安倍首相の党内基盤は返って強まるかもしれない。世耕・山本をはじめ安倍を支えた現職は一人区でも生き残ったし、中山恭子首相補佐官、自衛隊のヒゲの佐藤など、安倍と路線を一にする人たちも当選してきている。
実態はどうかはよくわからないが、印象としては安倍首相は正々堂々と素手で狡知に長けた小沢民主党に立ち向かい、敗れたという印象で、実際にはあまりダメージを受けてないのではないかという気もする。批判されたのは事務所費問題等の現象面に過ぎず、理念の面では実質的な議論があまりなかった。憲法問題を問う選挙だったはずなのに、ほとんどそんなことはどっかに行ってしまってたと思う。逆に争点にならなかったのだから、それを批判されたわけではないと首相が判断してもそんなにおかしくない。
勝ったことで民主党は返って路線闘争が深刻化する可能性もある。民主党が勝って誰も喜ばないのは、結局民主党がどういう党なのか、何を目指す党なのか、誰にもわけが分からないからだ。自民党は負けたことで、シャープに新保守主義路線に純化していく可能性を孕んでいるように思う。その良し悪しは別として。
株式市場はそれなりに値を下げているが、相当部分は選挙結果は織り込み済みだったのだろうという印象。しかしこの後の政局の展開によってはかなり不透明感が高まるだろう。もし安倍首相が辞任を言い出したら暴落は間違いない。というか、早々と続投を表明したのは経済情勢的には悧巧だったと思う。日銀総裁に竹中、というのも案外冗談とは言えなくなってきたような気もする。
手負いになった安倍政権は逆に野党にとって怖い存在になるのではないか。来年の正月に政権の座にいるのは、やはり安倍氏ではないかと思う。「昭和の妖怪」の孫は、まだその本領を見せてないのではないかと思う。(一部ホラー調でお送りしました)
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