苦しみの本質
Posted at 07/06/27 PermaLink» Tweet
矢沢あい『NANA』14巻まで読了。ストーリーが華やかになってきた。作者自身が言うところの「商業漫画」の要素が強くなってきたと言うべきか。バンドがデビューすれば華やかになるのも当たり前と言えば当たり前なのだが。やはり最初の頃とはかなり性格の違う部分が出てきている。
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ストーリー展開や演出上いろいろ工夫がされていて切迫感がなくならないようになされてはいる。若い頃、無名の頃の金はない、愛ははっきりしない、野望だけがある、という痛切さが、11~14巻になると薄らいできている。その分読みやすいが。このあたりになると問題は「自由がない」ということになってくるが、これは10代20代を中心とする読者の側にとっては想像上の悩みと言うか、「金がない」切迫感(特に学生とかフリーターとか)に比べれば弱い気がする。着々と野望を実現しつつある男も出てくるし、「自由」の問題も「力」によって解決は可能だというものも見えてくる。
ただ、パンク・ロックのバンドを取り上げている意味がそこにあって、「売れて力も持ってる」連中などパンクでもなければロックでもない。そこに絶対的な矛盾が存在し、そこからやはり破綻が生じてくるだろうということは見えてくる。
今日は比較的天気がいい、やや曇りっぽくはあるが。梅雨の中休みか。
若者が抱えている悩みは「金がない」ということが大きいんだなと思う。もちろん夢や野望への焦りとかそういうものの痛さもあるが、金がないということは「いざというとき何も出来ない」ということでもある。私はそういうことがあまりぴんとこないほうなので、つまり金に関しては「ないならないなりに」と考えてしまう方なので、欲望と現実のアンバランスというものがあまり苦にならなかった。今でも金はないが、まあまあ金のある時代もあったので、逆に今のほうが金がないなあという実感がある。ただ若者の頃のように、自分のキャパ(能力)に無自覚ということはないから、若者の頃とは違う。
ああ、そういう意味では若者にとって一番ないものの一つは自覚なんだな。「自分が何者であるか」という、自分への理解という意味で。しかし若者というものは、つまりはまだ「何者でもない」、何者かになるための種子だけがある存在なのだ。だから何者であるかなどわかるはずがない。結局は何者であるかを探るよりは、(必要以上にという意味だが)「何者か」であるように努力するしかない。つまりそういう先の見えなさが若者の苦しみの本質ということになる。
ま、大人になると「先が見えてきてつまらない」などと贅沢を言うようになるわけですが。でもそれは若い頃にどれだけ苦しんだかということが反映されても来るんだよね。若い頃に分不相応にでかい野望に見も焦がれるように苦しんだ経験があるかどうかで、「先が見える倦怠」から救われる可能性は違ってくる。
いずれにしても人間というものは苦しむように出来ているということだろう。どうセなら意味のある苦しみを経験したほうがいいということなんだろうと思う。
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