ピンク・レディーを聞く:やりたくなったらやっちゃいな/胸ゆれゆれ
Posted at 07/05/27 PermaLink» Comment(3)» Tweet
朝起きてネットで作業をしていたら、佐川急便がタワーレコードの荷物を届けに来た。届いたのは『ピンク・レディー ベスト』とアンジェラ・アキ『孤独のカケラ』。
ピンク・レディーを聞こうと思ったのは、木曜日に10時からやっているNHK-FM『ミュージックメモリー』で阿久悠が喋っていたことが面白かったからだ。今日改めて聞いてみて、いろいろ感じることがあった。
今日聞いていて印象に残ったのは『ウォンテッド』『モンスター』の2曲。『モンスター』はリアルタイムではほとんど聞いていなかったので、いい曲だったんだなと改めて思った。
この「おもちゃ箱ひっくり返し路線」が明らかに変わるのがヴィレッジ・ピープルの"In the Navy"をカヴァーした『ピンク・タイフーン』だ。当時はディスコサウンドが一世を風靡し始めた時期だった。ドナ・サマーの『ホットスタッフ』などと同時期。同じ種類のビートが生まれて、まずここでどうなの、という疑問が生じた。
歌詞もどうかと思う。この曲の日本語歌詞は阿久悠ではないのだが、質がかなり低いとしか思えない。「やっちゃいな、やっちゃいな、やりたくなったらやっちゃいな」とか馬鹿なんじゃないかと思う。当時の世相の中では、「やりたいことをやりたい放題やっている」と思われたピンク・レディーだが、歌詞などは一定以上の水準を常に保っていた。それを「やりたくなったらやっちゃいな」ではただのヤンキーである。寅さんではないが、「それを言っちゃあおしまいよ」ということがあるわけで、ピンクレディーはそれを言ってはいけなかったはずだと思う。セールス的にもこれは相当悪かったように記憶している。
次の曲が『波乗りパイレーツ』。これはまた阿久悠の作詞に戻っていて、サウンドもピンクレディー的に戻っていて安心感があるが、しかし歌詞が「あいつパイレーツ 波乗り乗りパイレーツ」はいいとしても「私サーファーガール 胸ゆれゆれサーファーガール」はどうなのか。歌詞的にも、「中高生男子」を再びターゲットに戻したのかという気がするが、女の子のものになってしまったピンクレディーを再び聞こうなんていう奇特な中高生男子がいるとは思えない。このへん戦略的に、いろいろと路線を変えようとして失敗している典型のように思える。曲としては悪くないんだけどなあ。
このあとの曲はどうも聞いていてちょっと悲しくなる感じがする。最後にすべてのものを流し去ってしまうアマゾンの大逆流「ポロロッカ」を題材にした曲が来たのがかろうじて洒落ているという感じだろうか。そのあともメンバーの二人は芸能界でずっと生き残っているが、そのことのほうがある意味凄いことだという気がする。
『ピンクタイフーン』が問題だなと思ったのは、日本のこの箱庭的芸能界で、おもちゃ箱をひっくり返した的世界で大成功を収めたピンクレディーが、より大きな世界の潮流、たとえばディスコダンスミュージックの中に自ら回収されていくことを求めたところにある。日本で成功した芸能人が世界進出を目指すということはときどきあるが、たいてい失敗している。日本の中での成功の条件を捨てて、グローバルスタンダードの世界で通用するものを作ろうとしてしまうのが、結局は最大の失敗なのだ。もともと日本での成功の要素に、そういうグローバルなものは必要ないし、むしろ邪魔だろう。日本で成功したからといって世界に出て行くときにそういうものを身につけようとしたところでもともと付け焼刃なのだからうまく行くはずがない。日本でのローカルな成功をもっと深めていくという路線の方が必ず成功するわけだ。
しかし、日本人には芸能人だけでなく一般に欧米コンプレックスがあり、日本のエンターテイメントなんて二流だと言いたくて仕方がない。日本のエンターテイメントは独自に独自な物を楽しむ文化なのであって、同じスタートラインに並べるべきものではないのだが、それが悔しいのか何なのか、ついグローバルな評価付けを求めて失敗してしまう。ピンクレディーの失敗はそういうところにあるのだと思う。
それならスポーツ選手の成功はどうなのかということになるが、そこにこそまさに世界での成功の鍵があるのだ。日本球界をでて成功している選手で、最も典型的なのは野茂とイチローだ。よく考えてみれば分かるが、二人とも日本では異端者である。数字で納得させて入るが、野茂のピッチングフォームやイチローの打撃フォームは完全に異端だった。日本で異端な基礎を持って、大リーグにも異端者として乗り込み、それで成功を収めたのだ。日本でオーソドックスなプレイヤーだった選手たちは、基本的にあまりうまく行っていない。オーソドックスなプレーでは大リーグの圧倒的な基礎体力の物量の前に歯なかなか歯が立たないのだ。
ある意味日本でも異端になるような、誰にも真似できないような技術の持ち主でなければ、世界で勝負することなど出来ないのだ。
それは日本製アニメの成功にも言えることだろう。日本でも決してオーソドックスとはいえないサブカルチャーが、それゆえのディープさを獲得し、そこが世界性を持ちえる。最先端のアーチストが油絵で勝負しようとしてもなかなか難しいが、アニメーションや、あるいはネットを使ったような新しいジャンルで勝負をかければ日本のアーチストでもいくらでも成功する可能性があると思う。もともとアートというのは何か枠の中に入ることではなく、枠を打ち破るためのものであったはずなのだから、それこそが行くべき方向なのではないかと思う。
グローバルで勝負するための方法がもう一つあるとしたら、それは完全にアメリカンスタンダードを理解し、それに沿ったものをそれだけの表現力を持って作り上げていくことだ。これは少し前にはほとんど不可能だと思われていたことだけど、最近はむしろそういうほうがたやすいと思う人たちのほうが多いのかもしれないと思う。まあ私などにとっては異質なことだけど、そういう新植民地的な傾向というのは世界的に強まってはいるんだろうなと思う。
***
アンジェラ・アキ『孤独のカケラ』を聞く。オーケストレーション、弾き語り、ピアノのインストゥルメンタル曲と三つ入っているが、弾き語りが一番いい。
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"ピンク・レディーを聞く:やりたくなったらやっちゃいな/胸ゆれゆれ"へのコメント
CommentData » Posted by A. T. at 07/05/28
ピンクレディがアメリカで出した「Pink Lady in USA」というアルバムが素晴らしい出来なので、ご興味あればお試し下さい。当時の日本での路線とは全く別の方向を探っていますが、一曲一曲がどれも相当に高いレベルだと思います。ピンクレディの隠れた実力を見る思いがしました。
これもまた、グローバルで勝負するために、アメリカンスタンダードに歩み寄った例かと思います。
http://www.amazon.co.jp/dp/B000HA48OW?tag=pinkladysexyd-22&camp=243&creative=1615&linkCode=as1&creativeASIN=B000HA48OW&adid=06H1G14SPQG9G09D6M70&
CommentData » Posted by kous37 at 07/05/28
情報ありがとうございます。とても評判がいいアルバムなんですね。そのままアメリカに進出するという計画はなかったんでしょうかね。
CommentData » Posted by 桃子 at 08/10/17
パフィが アメリカで 人気あると聞いて ショックが 隠し切れない
そんなに 魅力のある 人達とは思えない 所詮 漫画の影響で
日本ブームに うまく 乗っかっただけだろう ほら 昔 どこの馬の骨でも
白人特に アメリカ人で あれば 誰でも よく見える あんな 薄っぺらな
魅力のない人達と ピンクレディと 一緒に してほしくない 一体 この人達
何してきた人達 昔 間の抜けたような 歌 一発やが 大体 アメリカ人なんて 半分は 馬鹿の集まりだろうが ファン 層も ヨンさま 追っかけの
人達の部類だろうが