デザインとイラストレーション
Posted at 07/04/25 PermaLink» Tweet
デザインの時代だ、と思う。
「非言語コミュニケーション」という言葉があって、私の中でこの言葉は今までずっと「以心伝心」みたいな、しぐさとか肌のふれあいとか人と人とが言葉に依らずに直接にコミュニケーションをとることを意味していたのだけど、考えてみればデザインやイラストの視覚的な力、音楽などの聴覚的な力によるコミュニケーションも非言語であることには違いない。
中でもインターネットやパワーポイントによるプレゼンテーションの時代になって、視覚的なイメージの重要性というのは以前にも増して、いやあるいは革命的なくらいに高まっている。デザインやイラストレーションの力が非常に大きい時代だと思う。
どこかの省庁の話を読んだのだが、以前なら課長クラスになると部下の作った文書はほとんど目を通さず、どんどん仕事をやらせたが、今では課長自らがプレゼンテーションのときのパワーポイントの画面の文字の大きさや配置とか、色使いなどに口を出しているのだという。ただ文書を作れる人間より、デザインの出来る人間の方が求められている、というようなことも言っていた。その文章を書いた人は「パワポ亡国論」などと言っていたが、そのデザインがパワーポイントの画面にこだわるような表面的なことにとどまるなら問題であるけれども、机上の文書作成だけでなく現実面に出て行く必要が出来た、ということにつながっていくならあながち悪いことだけでもない。文章を書く力が圧倒的に落ちてきていることは事実でそれはもちろん問題なのだが、以前は衒学的な、あるいは枝葉末節にこだわったあまり生産的でない文章が氾濫していたこともまた事実で、あまりそっちにエネルギーが注ぎ込まれるよりは見やすさとか使いやすさなどの生産的な方向に考えが行くことは悪いことばかりではないと思う。文章人間対デザイン人間みたいな二項対立に話を持っていくのもあまり生産的ではないし、どちらの力も養っていく方向に考えた方がプラスだろう。
昨日帰郷。特急の中では『イラストノート』を読む。昨日は忙しくてあまりいろいろかけなかったけれど、これは『WEBデザインノート』と同じ誠文堂新光社の刊で、要するに同類のシリーズと見ていいようだ。誠文堂新光社というと私などは天文とか技術系の出版社という気がしてしまうが、こういうアート・ビジュアル系に出てきたんだなと思う。それともむかしからそういう側面もあったのだろうか。
この本はイラストレーター一人一人の話がとても面白い。寺山修司の天上桟敷のポスターも書いている宇野亜喜良からぴあの表紙を書いている及川正通、名前はあまり知らなかったけど最近よく見る若手のイラストレーターなど、それぞれがクリエイティブな話をしているのが面白い。見出されたきっかけや新しい仕事のきっかけがウェブであったり個展であったり、個展といえば画家だと思っていたがイラストレーターもそういうふうに個展を使ったりするんだなというのを知って面白いと思った。
自分のベースにあるものと仕事で制作するものの間に距離を感じたり、いつも同じ表現を求められて抵抗を感じたりするのは、基本がクリエイティブな仕事だからで、しかし依頼する側は新しい表現より今あるものを見てこれをやってくれと来るわけで、その間をどう取ってやっていくかというのは難しいことなのだなと改めて思った。伊藤桂司が「イラストレーションはもっと過激でエネルギッシュなものだ」といい、黒田潔が表現のために仕事とは別に個展を開いているというのもとてもよくわかる。大衆作家でも時に自分自身のためだけにでも純文学的なものを書きたくなるときはあるだろうしそれがまた必要かもしれない。そういうことと同じだろう。ウェブで物を書いているレベルの話しであってさえ、読んでもらおうと思って書くだけでなく自分の書きたいものを書かないと続かなくなるということはあるのだから。
仕事の仕方は、やはりみな正確で精密な、徹底的に自分の表現を伝える(表現したいことではなく表現そのもの)ことに心血を注いでいるという感じでプロだなと思う。自分にとっては、絵描きよりもイラストレーターの方が理解しやすいかもしれない。文章というのは基本的に複製芸術なので絵画や生演奏よりイラストレーションやレコード音楽の方に親近性があるのかもしれない。
やはり大量生産あって、それでいてなおかつ一人一人のところへ届くもの、というものに憧れる。デザインとかイラストレーションというものはそういう要素があるから、自分としてはとてもひかれるものがあるのだと思う。
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