安倍首相はもっと評価されるべきだ/中国の情報戦略の戦線縮小傾向
Posted at 07/03/02 PermaLink» Tweet
昨日。午前中は職場に出て少し仕事をし、それを済ませてから少し離れた本屋に歩いていく。駅前の本屋が閉店してしまい、周りには郊外型の本屋しかなくなってしまって、少し困っている。昨日行ったのはその中でも比較的町に近いところなのだが、駅前の書店が復活してくれないかと思う。
ただその本屋自体は半分が文房具のコーナーで(どういうことなのか知らないが、諏訪地方の書店は文房具屋とのミックスが多い。そういう業態で発達してきたのだろう)本を物色したついでに文房具も見られるので助かる。結局SAPIOとバネ式のバインダーを一つ買い、散歩がてら帰る。行って帰って歩けば1時間近くかかるのでまあ運動を兼ねてと思うしかない。
SAPIOをよむ。この号は面白い記事が多い。井沢元彦の李登輝へのインタビュー。これは前の号からの続きなのだが前の号が見当たらないので買わなかったのかもしれない。李登輝が安倍首相を高く評価しているのが印象的だった。
「中国大陸と碁を打つには、布石を打たなくてはいけない。安倍総理がまず中国に足を運んだのは、布石として非常にいい。」「愛国心と倫理観は本来直結するものです。だから、中国大陸に本当の意味の愛国心なんてない。あるのは愛国主義や民族主義で、こういうのは結局、権力者がする遊び、民衆をあやつる遊びなんです。」
このあたり、私が感じてはいたけれどもうまく言葉にならないことを言葉にしてくれ、そしてその先までみせてくれた感じがして、非常にすうっとした。李登輝の発言には私は非常に感銘を受けることが多いのだが、彼の日本や中国を分析する目は非常にクリアーで、どこに問題があるのかを常に鋭く指摘することができ、そのあたりは感服するしかない。ただ外国の政治家であるから常に意見が入ってくるということはないし、歪曲された雑音が聞こえてくることも多いから、井沢のような人が心中を聞き出してくれると大変嬉しいと思う。
「安倍総理にはすべての資源と権力が与党にあるということを認識してほしい。国会も与党が過半数を握っている。だから、国会ですべての問題を処理できるよう運営する術を身につけることが重要です。」
この言葉は、あたりまえのことを言っているようで、ものすごく重要で見落とされがちなことを指摘していると思う。政治の世界では裏工作が重要だ、というような印象があるけれども、また総理直属のトップダウンみたいなことが奨励されているような印象があるけれども、議会制民主主義国家ではすべての問題は国会で処理され、立法化されたことが最も力を発揮することは言うまでもないし、官僚や族議員などの言わば政治におけるサブシステムを必要以上に評価することはなんというか玄人が陥りがちな陥穽とでも言うべきもので、愚直に国会で「すべての問題」を処理していくことが重要だと思う。
そういう意味ではさっさと防衛省昇格法案や教育基本法改正案を通過させた安倍首相の手腕は議会制民主主義の王道を行く手際のよさで、永田町の玄人雀が裏技ばかり評価する悪癖から安倍首相を酷評していてもそういうのはほっとけ、ということなんだなと思った。今まで国会の場で議論すら出来なかったことが議論できるようになっているということ自体が重要で、あまつさえ立法を成立させてしまうのだから安倍首相の手腕はもっと高く評価すべきなのだ。支持率が今のところ低くても、今の感じで政治的課題を解決していけば、自然に正当に評価する人たちも増えてくるだろうし、そうなれば支持率も上がるだろう。そういう議会制民主主義を正道に戻す役割として、安倍政権が持つ意味は大きいのではないかと思った。
台湾人の現状に対する苦言としては、「今の若い人は、自己を律するとか正直であるとか日本的な精神には注意を向けていない。」「中国人というのは口がうまい。ところが何一つ実行しない。口だけ。それと、信念のようなものがなく、精神面が弱い。今の台湾でも日本的な精神が薄れてきて、中国的になりつつあるんです。」ということを言っている。現実の現在の日本人の精神のありようとは別に日本精神というあるイデアがあると思った方が考えやすいが、自律、正直、信念と言ったものは、私のようなものにはともかく、そういうものを感じる人が多いことは事実ではある。つまりはある種の軽薄さが勝ってきているということなのだと思うが、もちろんそれは現代日本の問題でもあるだろう。
台湾から金沢に行くチャーター便が増えていて、加賀屋という旅館には年間で1万人以上が泊まっているのだという。それは烏山頭ダムを作った八田与一が金沢出身と言うことで、交流が盛んになっているのだという。
「西側としての価値を共有する」ということがよく言われるが、もっと深いところでの価値を共有しえる国はもっと身近なところにあるのだと思う。朝鮮半島のように近くても価値観がかなり根本的に異なる国もあるが、近いところからもっと交流を深め、その価値観を守り育てていける関係を築いていくことは重要だろう、と思った。
佐藤優「インテリジェンス・データベース」。中国のインテリジェンス(情報活動)で一番弱い部分が宗教に対する研究だ、という指摘はなるほどと思った。特にイスラム過激派に付いては近年までかなり自由に活動できていたので問題がかなり大きくなってしまい、東トルキスタン(新疆ウィグル自治区)の問題にはかなり神経を尖らせるようになってきた、という指摘は新たな認識を得たように思う。そして、「中国のインテリジェンス戦略の特徴として、標的を焦眉の脅威に対してのみに絞る、つまり戦線を縮小する傾向が挙げられる」という指摘はあっと思った。これは多分中国政府というか中国人という民族の本質を突いているように思う。
「一点突破、全面展開」という言葉があるが、「当面の敵」を定め、それを打ち破るために全力を尽くし、そのためには仮想敵とでも手を結ぶプラグマティズムのようなものが中国にはある。もちろんアフリカ諸国に「恩恵を施す」ような、新たな中華秩序を形成するといった努力も忘れないが、「敵を絞り込む技術」はアメリカや欧米以上だと思う。
そしてその「当面の敵」をイスラム原理主義においた、という指摘はそのとおりだと思うし、それによってかなり多くの疑問が解ける。ロシアと和解し、インドと和解し、北朝鮮問題を御し、日本の安倍首相も歓迎する。だから今がチベット政策を変えさせるチャンスだ、という指摘もそのとおりだと思う。
また、カトリック教会との対立解消の方向性の指摘は、「プロテスタント神学者」佐藤優の独壇場だろう。カトリック教会はカトリックの典礼とローマ教皇の叙任権を受け入れなければその教会をカトリックとは認めないわけだが、(こんな基本的なこともつい再確認してしまったが)ドイツ・オーストリア・スイスには儀式はカトリックと同じだが教皇の叙任権を認めない「古カトリック教会」が存在するということは初めて知った。これはドイツが「ローマの牝牛」だった頃の反発の名残りだろうか。中国のカトリックに対する姿勢の軟化はイスラム過激派に対する「共通の敵」意識によると佐藤は指摘するのである。
教皇ベネディクト16世の舌禍事件(ビザンチン皇帝パレオロガス朝マヌエル2世の「ムハンマドがもたらしたものは剣によって信仰を布教する命令といった邪悪と非人間性だけだ」という言葉を大学の講義で引用したことによりイスラム諸国が激しく反発し、教皇が事実上の謝罪を行ったこと)から、カトリック教会はイスラムに対する警戒感を一層強くし、それが宿敵共産中国との接近をもたらしているというわけである。これらの分析は非常に興味深いものがある。
小林よしのり「ゴー宣暫」の欄外に、「安倍晋三の資質は高く評価してるんだが、実に惜しい」という小林のコメントが出ていて、政府の政策や姿勢を一貫した立場から批判したり擁護したりしている小林としては、最近安倍政権を批判することが多かったのだけど、本当は高く評価したいという本音がポロリとこぼれていてちょっとこれも共感した。小林は中西輝政や岡崎久彦らの親米派を切れない安倍を歯痒く思っているのであるが、それをまるで諭すかのように李登輝が井沢元彦との対談で、井沢が「安倍総理はちょっと優しすぎるんじゃないかと。さまざまな意見を吸い上げようとして、意見の合わない人も内閣に入れて苦労している。「切るべきは切る」と言っていたはずですが、徹底していない。」というのに対し、「総理になったばかりだからですよ。切れないものを無理して切る必要はないと私は思う。」といなし、井沢も、「そうですか。指導者の立場にあった方にしかわからないこともあると。私は少し性急過ぎたかな(笑)。」と答えていて、可笑しかった。きっと小林も李登輝にそういわれたらなるほどと思うところもあったんじゃないかという気がした。
『カスタマイジング・ズープス』読了。面白かった。さらにphpやMySQLについても勉強してみようという気になった。ネットで何かやろうとするなら、それも当面は自分だけで何とかしないとするならば、こういうネット技術についてある程度以上は精通しておくことは必須だなと痛感した。まだまだ道は長いけれどもちょっと頑張ってみようと思った。
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夜は比較的仕事は暇だったが、今後に向けての話が少しあり、いろいろの兼ね合いの中でまあ何とかこれでいけるかなという方向性も少し見えたのでよかったと思う。夜はけっこう冷え込んだ。
野口晴哉『体癖』第1巻を読んでいて、鳩尾の左右に「癪」と呼ばれるものが出来ることがあり、左に出来るものを胃癪、右に出来るものを肝癪(癇癪ではない)という、という記述があって、右になんとなく変な感じがあったので少し押さえてみたらそれまであったなんだかわけのわからないイライラ感のようなものがすうっとなくなってへえと思った。『バーテンダー』を読んでいたときに、苛々している外国人客に「合わない靴で大変のようだから靴屋に行ったらどうか」と一目見て指摘したコンシェルジュの話が出ていたが、人間にとってそういう生理的なレベルでのいらいらはなかなか理由がわからなくてただイライラが募ることも多い。それをすべて心理的なレベルで説明しようとするから無理があるのであって、生理的なレベルでそれを分析することは合理的なことだと思った。
今朝もわりと寒い。
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