金利引上げ/お金というメディアを使ったアート/引き締まる日本人
Posted at 07/02/22 PermaLink» Tweet
昨日。午前午後と自室でいろいろ作業をしたり本を読んだり。午後早めに仕事場に出てようやくネットに接続できる。自室のダイヤルアップの調子がよくない。午後から夜にかけて仕事。そんなに忙しくなく。ぼちぼち。夜は『その時歴史が動いた』の「鉄は国家なり」を見る。面白かった。
昨日日銀の政策決定会合があった。金利が引き上げられるだろうというのは私としては予想通りだったのだが、それでも対ドルレートが120円台になるというのは予想外だった。大方の予想では118円題になるだろうというものだったし私もそう思っていたのだが、20日から21日にかけてかなり円売りの圧力が高かったように感じた。決定後は一時119円台半ばまで急騰したが、また反転して売られれて120円台に突入。さっき見たら121円近くまで売られている。
当局の円売り介入はあったのか。金利引上げで景気の悪化を懸念して円安に誘導する、ということはありえないことではないが、先日のG7で市場介入はしていないと明言したばかりだし、それは難しいだろう。すると円安のトレンドを変えたくない誰かが円を売ってトレンドを支えたということなのだろうか。特にロンドン市場の開場時間がそういう傾向が強かった気がするが、果たしてどうだったのだろう。
今回この動きに注目してへえと思ったことの一つは、日本の金利が上がったことで円だけでなくアジア通貨が上がる方向に動いたこと。「いい物を作ってアメリカに売る」というビジネスモデルが一致しているアジア諸国は同じような動きで一括されているということなのだろうか。
金利の引き上げが今後経済の動向にどのような影響を及ぼすのか。経済の回復が確かなものになってきた以上、異常な低金利の引き上げは当然必要なことだし、金利生活者や年金生活者にとっては多少は一息つける状態に近づくことになるだろうけれども、もちろんまだまだ満足できる状態ではないだろう。『「陰」と「陽」の経済学』に書かれていたことが正しければ金利を引き上げても必要な企業は金を借りるだろうし、それ自体に問題はないと思う。金利安の弊害を多少とも是正することが今は必要なのだと思う。
***
昨日読んでいたのはキヨサキ『金持ち父さんの投資ガイド上級編』と野口晴哉『体運動の構造 第二巻』。『投資ガイド上級編』はこのシリーズでも非常に面白いものの一つだった。このシリーズは基本的にある種の「教科書」だし、そういう意味での面白さ、つまり知らないことを知っていくという面白さはあるが、わくわくする、という部分はやや足りなかったように思う。『上級編』は基本的にビッグビジネスの構築の話なので、そのあたりは血沸き肉踊るというか、私から投資を学びたいなら木曜日にペルーへ飛べと火曜日に言われるとか話がワールドワイドで、ある意味『ゴルゴ13』か何かを読んでいるような感じもした。「信頼できないペットとビジネスをするな」とか「人間の現実は信念と自尊心の境界だ」とか「ひとつのことを学ぶのに5年を投資する」とか「市場はいつも『今話題のもの』を探しているから、次に『今話題のもの』になるものを作り出さなければならない」とか、「ビジネスは私に資産を買ってくれる」とか、「ビジネスで成功するためには必ずしも「新しいアイディア」が必要なのではなく、「よりよいアイディア」を見つけ出せばいい」とか、「資本主義は永続的な創造的破壊だ」とかなるほどと思うような言葉がたくさんあって魅力的だった。
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「人間の現実は信念と自尊心の境界だ」という言葉は人間が何かをやろうという信念と今何者かであるという自尊心、プライドとか自己限定とか言い換えてもいいが、その境界に人間の現実は存在するということで、自己限定が強ければそういう自分でしかないが、何かをやろうという信念が勝れば何かをやることができるという話で、なるほどうまいことを言うなと思った。
このシリーズを何冊か読んできたが、ようやく少しずつこの著者の世界像が見えてきたように思う。朝目が覚めて布団の中でうつらうつら自分の昔のことを振り返っていて、「クワドラント」や「トライアングル」に当てはめて自分の人生を考え直してみるといろいろと面白く感じることが多かった。何かを物にするということはそれによって自分が動くところまでいって初めてものにできたということなわけだから、学んだことを自分の人生に落として考えてみなければあまり意味がない。そうやって見てはじめてその考え方の妥当性のようなものが見えてくるのだと思う。そうやって見ると、自分の生きてきた過程を再評価することができたし、それはそれでああこういうことだったんだなあと思うことも多い。単なる金儲け指南というよりも、人生をお金の面から考え直すカウンセリングというかアドバイジングというふうに考えた方がこのシリーズの趣旨に近いのだなと思う。
小説や学問が「言葉」というメディアを使ったアートであるとしたら、ビジネスというのは「お金」というメディア――お金は明らかに交換や価値の蓄積のための媒体=メディアだ――を使ったアートなんだなと思う。そしてその集積が世界経済であるとしたら、ほとんど世界中すべての人がそれに参加していることになる。そんなふうに考えてみるととても面白いなと思った。読了。
『体運動の構造 第二巻』は主に「引き締め」の話。第一巻が「弛め」の話だったから、二つの巻で野口整体の全体的な考えがわかるようになっている、という感じだ。いわゆる健康法というのはどうしても「鍛える」ということが先に立ってしまうけれども、「弛める」ということをまずやるということが野口整体のポイントなのだということがだんだん分って来た。日本人は引き締めとかきちんとやることが得意だがだらだらすることはどちらかというと得意ではない。だから「弛める」ということをまず先にやるというのは実は非常に日本人にあったやり方なんだろうと思った。
日本人とアメリカ人の関心事を比べてみても、休暇のときにアメリカ人のやることはダイビングだのサバイバルだの疲れそうなことばかりだが、日本人がやることはごろ寝だの温泉だの休めることばかりだし、家の中で重要なこともアメリカ人は気分を高揚させるようなことを重視し、日本人は風呂だのトイレだのいわばアメニティ空間にこだわる。ウォシュレットに高額をかける日本人の考え方が理解できないアメリカ人に「それ以外に何が出来るのか」と尋ねられて「便座が温まる」といったら大笑いされた、という話があったが、そういうことが大事な民族なのだ、要するに日本人は。それはつまり、それだけ「休める」ということがへたくそで神経を使わなければならないということなんだと思う。導引術の本を読んでいたときも、中国の導引はまずダイナミックな動き方からやるので難しく、それを日本では座ってやる方からやるように改良した、というのを読んだことがあるが、中国人にとってはダイナミックな方が実は簡単なのではないかという気もした。
李御寧が『縮み指向の日本人』という本を書いたが、この「縮み指向」というのは「引き締まり」というともっと実感に近いということなんだろうと思う。
『その時歴史が動いた』の「鉄は国家なり」は面白かった。鉄を国産化する過程に日本の技術力の向上の秘密があったという話は納得できるものがあった。日本人の技術力というものがこういう「引き締まり力」によって支えられているということを改めて感じた。
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