南部坂雪の別れ

Posted at 07/02/15

午前中は仕事場でいろいろやっていたのだがどうも寒くて調子が上がらないので自室に戻る。整体の本を少し読み、自分の感じていたこと、やっていたことが基本的に感じ方が間違っていなかったことを知り、嬉しく思った。

SUPER JUMP今号の『王様の仕立て屋』86話の副題が「雪の南部坂」になっている。これは忠臣蔵、それも真山青果の『元禄忠臣蔵』、つまり実録もので大石内蔵之助が遥泉院を訪ねていく場面、つまり仇討ち決行の真意を秘めながら吉良側のスパイがいることに気づき表向きにはそれを出さずに永の暇をするという場面である。「南部坂雪の別れ」という題名で私は記憶していたが。どうも内容にあまり合致しないので何でこの題なんだろうと思っていた。

現在はナポリの重鎮、ベリーニ伯爵のスーツを作っているところなのだが、いろいろな行きがかりから双方とも面子を賭けた仕事になっている。展開をもう一度読もうと思い、SUPER JUMPのバックナンバーを積み上げて読んでいたら、82話の副題が「刃傷松の廊下」であるのを発見し、ああ、なんだそうだったのか!と思う。つまり、この仕事を作者は「赤穂浪士の討ち入り」に見立てているのだ。そう思ってその後の副題を追ってみると83話が「赤穂の無血開城」、84話「円山の討ち入り会議」、85話「祇園の内蔵之助」でちゃんと場面を追っている。86話はつまりいよいよこれから討ち入り決行という前夜の話だから、次号87話は当然「吉良邸討ち入り」になるわけだ。なるほど胸のすく仕掛け。しかし、いったいどれだけの人がこのことに気がついているんだろう。ボタンホールを手縫いにすることを別の号で「アルルの女」、つまり職人の片思いと呼んでいたが、こういう仕事も漫画家の片思いというか、どのくらいの気合で作品を書いているのかということを読者に判る人には判るようにしてある仕掛けなのだ。改めて感心させられた。

今まで気がつかなかったのが迂闊ではある。パリ編で窮地に追い込まれたときの題名が「愛しのロクサーヌ」、つまりシラノ・ド・ベルジュラックを引用していてそれが非常に印象に残っていたのだから、今回もそのあたりに気をつけているべきだったのだ。しかし本編の方が面白くて副題まで気が回っていなかった。しかも何号も続けて一つのテーマに仕上げるとは。改めて舌を巻いた。

王様の仕立て屋~サルト・フィニート~ 13 (13)

集英社

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Title background photography
by Luke Peterson

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