ダイヤモンドとプラチナ/食べるということ/そこにいけば何かがある
Posted at 07/02/14 PermaLink» Trackback(1)» Tweet
昨日帰郷。行きがけに丸の内の丸善に寄り、宮下規久朗『食べる西洋美術史』(光文社新書、2007)を買う。〆鯖のお弁当を買って新宿で特急に乗ると、通路を挟んだ反対側の席がよく喋る声の大きいおばあさんともぞもぞ喋るお爺さんの夫婦で、大きい声が耳に入ってきて参った。自信家の育ちのいいらしいおばあさんの声が車内に響き渡っているとなかなか読むものに集中できず、苦労する。
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最初は『食べる西洋美術史』を読んでいたが、途中でまた『商品先物取引』に換える。昨日読んでいたのは商品ごとの価格のチェックポイントというところで金、白金、石油というところだった。金は王水に溶けるということは知っていたが、それを利用して他の金属と分離して純度を高めるということは知らなかった。どのような行程なんだろう。化学の参考書でも見ればわかるのだろうか。プラチナの需要が日本のエンゲージリングやダイヤモンドの立て爪用の需要が一番多いというのも(中国が参入してきてそれも変化しつつあるようだが)へえと思う。確かに日本人は宝石といえばダイヤモンドでリングはプラチナという感じだが、世界的に見れば何を使うのが多いのだろう。ダイヤモンドもプラチナも白系の色で、多分それは日本人の好みに合うということが大きいのだろうけど、きっと国によって宝飾の需要は全然違うのだろうな。金が一番需要が多いのはインドだということだし。このあたりの話、人文地理や化学などの分野での関心が呼び起こされて興味深い。
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『食べる西洋美術史』は現在81ページ。「食べる」という画題は西洋美術には多いが日本や中国には見られない、西洋美術に特徴的な現象だという話は面白い。性、エロティシズムに関する画題は洋の東西を問わず多い(それ以前に宗教的な性質を持つものの方が万国共通なのだが)が、言われてみるまで食べるというが大については考えていなかったのでなるほどと思った。
食べるという行為はもちろん生存に欠かせない要件なのだが、家族というものが生まれたのはもともと食べ物を分け合ってともに食べるという人類特有の行為から生まれた、という話ははじめて聞いたがなるほどなあと思う。私などは一人で食事をすることが多いが、確かにそれは食事に一番必要な何かが欠けているという感じがすることは多い、もちろんあまりそういうことは考えないようにしているのだけど。(そういえば今日はバレンタインデーだ。風雨が強いけれども。今年の愛も荒れ模様、ということだろうか。)食べるという行為を共有しなくなると家族がバラバラな感じになってしまうのは、つまりは家族の根源的な意味にもとるからということなんだなと思う。
西洋美術で食べるということに関する画題が多いのは、キリスト教という宗教の「罪」と「救済」の両方に食べるということが関わっているからだ、という指摘はなるほどなあと思う。つまり、人類の罪の根源はアダムとイブが知恵の木の実を「食べた」ことに始まっているわけだし、救済の秘蹟であるミサでは象徴的なキリストの肉と血であるパンと葡萄酒を「食べる」。これは最後の晩餐におけるキリストの言葉に基づいているわけで、「最後の晩餐」という食に関するテーマは教義の根本をなしているわけである。
従って最後の晩餐という画題がキリスト教美術で選ばれるのは当然のことなのだが、ここでパンと葡萄酒以外に描かれるものは肉よりもさかなの方が多いといい、それは「イエス・キリスト・神の・子・救い主」の頭文字をとると「魚(イクトゥス)」になるからだといい、ローマの弾圧時代は魚はキリストの隠語だったのだという。そういう話はとても面白い。
食べることは基本的に罪につながるのだが、食べ物を施すことはキリスト教で重要な意味を持つというのも再認識させられた。聖者が食べ物を施した貧者が実はキリストだった、という話は光明皇后が背中を流したらい病患者が実は観音菩薩だった、という話を思い出させられるが、貧者に施すということがストレートに宗教的な意味を持つ伝統が西欧社会にリアルに残っていることの意味がリアルに感じられた。慈善ということが救済に直結するものとして人々を動かすものであるということはキリスト教社会の教義の根本から来る伝統なのだなと思ったが、もちろん日本にもそういう伝統はあるにしてもあまりドグマティックなものではないから逆に弱くなってしまうのかもしれないと思う。慈善と救済が裏表であることは日本人には偽善的な感じがしてしまうが、善を装うというより救済のための義務だと観念できればそれは行動原理となるわけで、その辺は日本人のナイーブな感じ方とは観念のあり方が違うのだと思う。彼らの慈善はもっと必要に迫られてのものだし、マザーテレサなどはものすごい行動家で政府にも世界にもどんどん働きかけてタフな交渉をしていたという話を聞いたことがある。そんなことは偽善で出来ることではない。しかしそういう慈善が絶対善の社会になるとそれはそれでどこか歪みが生じてしまうのではないかという気もするし、そのあたりのところはまだ私も考えがまとまっていない部分もある。
西欧においてはアートは実はエロチシズムと直結しているというのは村上隆の本で読んでなるほどと思ったが、食という欲望に関係する行為が表現されるということもまた西洋美術のそうした傾向と関係のあることなんだろうと思う。まだ読みかけだが新しい視点が導入されてとても面白い本だと思う。
昼から夜にかけて仕事。終わった後サイトの手直し。『読書三昧』は完全に『本を読む生活』に移行完了。大変だったー。一つ一つのページの充実度をあげるのはこれからの作業だが、感想だけでなくその本に関連する情報もそこで見れば調べられるというふうにしていきたい。そこにいけば「何か」ある、というサイトにしたいと思う。このブログを読みに来ていただいている方も「何か」面白いところがあると思っていただいているから見に来ていただいているのだろう。そういうSomethingをいつも見つけていくことが大変出し面白いしやりがいがあることなんだろうと思う。
朝は起きたのは6時前だった。暗闇の中でFMをつけると邦楽をやっていた。支度をしてセブンイレブンに出かけ、『スーパージャンプ』を買う。お目当ては『王様の仕立て屋』と『銀のアンカー』。だったが、確かに二つとも十分に期待に応えていた。何しろ今月は第二水曜が14日だったのでこの号を読むまで3週間待たされたのだが、十分にその期待に応えていた。しかしこの続きを読むのがまた2週間後かと思うと殺生だな。
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from 月灯りの舞 at 07/02/23
『食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む』 ??? 宮下 規久朗:著 光文社/2007.1.20/880円 西洋、とくに地中海諸国は古来、食べることに貪欲であり、 食にかける情熱はしばしば料理を芸術の域にまで高めた。 また、食べ物や食事は西洋美...
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