前向きなことばと人間存在への絶望/経済学と常識
Posted at 07/02/09 PermaLink» Trackback(1)» Tweet
昨日。朝、簡単に日記を書いてアップしようとしたらダイヤルアップの調子が悪くてアップできなかった。仕事があったのでアップは後に回し、9時前の電車で出かける。松本で午前中仕事。思ったより時間がかかり、昼食が取れずに結局地元に戻ってきてから喫茶店でランチを食べた。一休みしてから別の仕事。こちらは少し暇な感じだったが、夜になってからはまあまあ。夜は『プロフェッショナル』を見る。MITのコンピューターの教授。なかなか面白い。この番組、壁にぶつかっている若手に何かやらせて育てる上司、という展開が多いな。『プロジェクトX』は「オヤジの慰撫史観」のような悪口を言われることが多かったが、『プロフェッショナル』は基本的に若者へのメッセージなのだな、と思う。まあ、前者の主題歌が中島みゆきで後者はスガシカオだというところからその違いは明らかだが。
移動の車中では『月刊全生』の平成13年11月号を読む。『野口晴哉先生25年祭』で話された話がいくつかあり、最晩年の野口師の様子などが語られていて、ふっと胸が突かれるようなところがあった。肥田式強健術の肥田春光師の再晩年もまたある種似ているところがあるのだが、野口師の方が明るい前向きの感じがあり、肥田師の方はある種の絶望が強い。こうした集団の始祖の晩年のエピソードというものは、どことなくその集団の未来を暗示しているところがあるような感じがする。もちろん肥田師の絶望というのも人間存在への絶望であって強健術への絶望とは違うのだが。野口師の「我は去る也 誰にも会うこと無し…我は去る也 心伝え 技授け 今や残す可き何も無し…」という遺稿の印象は明るい。
ジャンルは違うが、山岸会の山岸巳代蔵が臨終の際、「本当の本当は伝えられないまま死ぬんかいな」と言ったという話とはかなりの違いを感じる。このあたり、仏陀の晩年の「アナンダよ、世界は美しい」という言葉とイエスの十字架上の「主よ、なぜ私を見捨てるのか」ということばとの違いなども思い起こさせ、いずれも宗教の未来を暗示しているように思えるのと似ている。
まあ私は基本的に明るい方が好きだが、だからといって明るい前向きなことばを残した方が人間存在への絶望が皆無だったかというともちろんそんなことはないだろう。絶望の深さゆえの強さ明るさのようなものが面に出てくるのか、あるいは人間という種族への愛の強さゆえにことばが絶望的な方向になってしまうのか、の違いなのかもしれない。
あとはクー『「陰」と「陽」の経済学』の読み進め。第6章、日本国内におけるバランスシート不況論批判への反論のところを読んでいる。クルーグマンがクーとの対談(『文藝春秋』1999年1月号)で、金融政策だけで状況に対処しようとするなら年率200300パーセントのインフレになるというクーに対し、「だから現在の日本でも、200300パーセントのインフレが必要なのです」と瞬時に答えたというエピソードには唖然とさせられた。日本の経済を終戦直後のような混乱に陥れることが必要だなどと言い放つ「経済学者」が存在するということは一般の我々も覚えておいた方がいいと思う。マッドサイエンティストはいわゆる科学の分野にのみ存在するのではないのかもしれない。こんな人間がもし経済政策を握る立場になっていたらと思うと恐ろしい。少なくとも日本でそういう実験はしないで貰いたい。経済学者にも常識的な視点があるべきだろう。ラディカルであればいいというものではない。
「陰」と「陽」の経済学―我々はどのような不況と戦ってきたのか東洋経済新報社このアイテムの詳細を見る |
って、書いてきて思ったが、私は「暗くてラディカルなもの」より「明るくて常識的なもの」の方が圧倒的に好きなんだな。ジョン・レノンよりポール・マッカートニーが、ヘミングウェイよりフィッツジェラルドが、ドストエフスキーよりプーシキンが好きなのとそのあたりは同じことなんだなと思った。しかし世間というものは案外「暗くてラディカルなもの」を好むので、時に世の中がひっくり返ったりする。世の中にそういうある種の「リセット願望」が高まるとそういうリセットが起こるのだろう。それより前向きに積み上げていく方が私の趣味だな。株価が少しずつ堅調に上がっていって、あるとき一気に下落する、みたいな感じにどうも世の中というものはなっているようだ。上がるのはゆっくりだが下がるのは早い。
まあなんだか何を書いているのかわからなくなってきたが、のんびり明るい世の中が私は好きだ。
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