人文社会系の「古い教養」とネットの「新しい教養」/日本文化は死んだのかまだ生きているのか
Posted at 06/12/17 PermaLink» Tweet
金曜夜に帰京。土曜日は疲労困憊していて日記を更新できなかった。ただ、金曜の夜に東京に戻ったときに地元の書店で梅田望夫・平野啓一郎『ウェブ人間論』(新潮新書、2006)を買い、それを昨日は読んでいた。この本は最初の期待より面白い。かなり自分自身の深いところまで考えさせられた、自分自身の深いところに入っていくような本だった。
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ウェブ2.0の旗手で1960年生まれの梅田と、文学界のニュースターで1975年生まれの平野。梅田は慶応工学部卒で東大院修了、平野は京大法学部卒。いろいろな面で対照的なのだが、人文社会系の「古い教養」を代表する平野の方がネット文化の強い支持者であり「新しい教養」の代弁者といえる梅田より15歳も年下だという「ねじれの関係」もあって、そのあたりに議論の深みや私自身の奥深いところをインスパイヤーする力があったのだと思う。
身体的に不調だったので一気に読みきれず、少しずつ読む。うちの鍵・ドアノブがおかしくなっていて10月ごろ修理を依頼していたのが昨日になってようやく注文が上がってきて昨日取替え工事をしたのだが、もう23年前に建った集合住宅なので特注になっていて、電気錠の交換で4万4千円もかかってしまった。年末に痛いが、気持ちよく鍵が開閉するようになってやはり交換してよかったなと思う。その工事に午後2時頃から4時頃までかかる。終了後、友人に電話して共通の友人の近況について少し話すが、その人自身が頭痛が激しくしかもこれから出かけなければならないという話だったのであまり話せず。
久しぶりにgooで配布しているrssリーダー(アプリケーション版)を起動してみたらアフィリエイトアラートとかいうのがあって、あまり考えないうちにNTTレゾナントのやっているオンラインストアとアフィリエイト契約をした。このブログの右下にバナーを表示するようにしたのでこのブログを読みにきた方がついでにそのバナーをクリックして買い物をしていただければその1パーセントが広告料として私に入る仕組みである。ご興味のおありの方はどんどん買い物をしていただけると私はとても嬉しい。(こんな誘導文で買う人がいたらアフィリエイトも楽でいいんだけどなあ)
しばらく本を読んで、午後遅く読了。少し遅くなったが、体調がだんだん戻ってきたので出かけることにして、丸の内の丸善に出かける。少し気分が楽になっていたので楽しかった。丸善ではいろいろ本を物色したが、結局気になっていた手嶋龍一+佐藤優『インテリジェンス 武器なき戦争』(幻冬舎新書、2006)を買った。この本はまだ読みかけだが、これも相当面白い。
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対談者の一人、手嶋龍一氏はワシントン総局長の時代が長く、911などに関連してよくテレビでも拝見していたが、なんだか決まりきったことしか言わないつまらない人だなという印象を失礼ながら持っていた。「ブッシュ外交の鋭い分析」や「アメリカ社会批判」とか「911後の硬直化したアメリカ世論」などに対する快刀乱麻の社会科学的分析を期待しているほうにとって見れば、なんだか無難なことしか言わない人だなと思ったのである。しかし、最近の活躍を見ていると、それは全くこちらの見る目のなさのなせる業で、ものすごく奥深いところまで分け入ることのできるインテリジェンスの専門家であることが分かり、人を見る目のなさに恥じ入るばかりだ。しかしそれは逆に言えば私の視線、おそらく私だけではないが日本の文系のインテリの視線のある「狭さ」の現われなのだろうとも思った。この本は読みかけなので、また読み終えたら感想を書こうと思う。
大丸の地下や丸善日本橋店、コレドの地下の東急ストアなどによって夕食の買い物をし、帰宅。なんだか疲れていて、書こうと思えば書くことがないわけではなかったが、ブログも更新せずに早めに寝てしまった。ただ、『世界ふしぎ発見』のセイシェルの番組はとても面白く見た。ココデメール(海の椰子の実)というものもはじめてみたが、その木の巨大さには驚いた。200歳のゾウガメとか、蚤みたいに小さい蛙とか、なんだか誰が見てもびっくり、というようなものが多く、常勝将軍・ゴードンが「エデンの園」と伝えたのもまさに然り、と思った。
今朝もどうも調子が上がっていない。昨日『ウェブ人間論』を読んで考え始めたことが非常に自分の中で響鳴していてひとつの何かとして結実していく感じがない。反響し鳴り響き続けている感じがする。そこでまた甲野善紀氏の『隋感録』を読んで考えさせられたりして、切りがない。甲野氏はヨーロッパにいっての衝撃のことを書いているのだが、私自身もヨーロッパに行って非常に強く感じたのは、ヨーロッパには伝統が息づいているのに日本の伝統は先がなくなっている、ということだった。そこから日本の伝統に対する関心のようなものがスタートしたわけだし、甲野氏に関心を持つこと自体がそのあたりから始まっているのだが、古武術などを通して私などよりははるかに深く「日本の伝統」というものを探究してきた甲野氏に「もはや日本文化の炎は消え、僅かに炎の消えた後のマッチの軸木が赤くなっている程度のものを日本文化だと思っていたのが、外国に出て、それが炎の消えた後だということが分かってしまった」と書かれてしまうと、やんぬるかな、という感じになってしまう。
私などは、「どこか」にまだ日本文化は息づいていて、それを継承している人たちもいるんだ、という楽観的な部分もあるのだが、その「どこか」が「Somewhere over the rainbow」でしかないのだ、とまあそういうことをいっているわけである。まあそれはそうかもしれないし、それは深刻に考えすぎなんじゃないかという気もしなくはない。つまり、日本文化の基層というものをどのあたりに捕らえるかということで、雑木林は切り取られてもまだその腐葉土は残っているし、そこから雑木林が再生する余地はある、という感じを持っているのだが、もう完全に腐葉土も取り去られて赤土の上に近代文明が造成され、「緑ヶ丘」とか名前をつけられて伝統的な地名とも全く縁の切れた新しい「文明」が作られているのだ、という感じを甲野氏は持っているのだと思う。
そのあたりは、おそらくは「身体」に根ざしたものを基準に考える甲野氏と、そういう部分も踏まえながらかなりの部分は「言葉」に依拠して考えている私自身との違いなんだろうと思うし、どちらが正しい、というものでもないが、ただ甲野氏の感じた深刻さのようなものはやはり重大性を感じざるを得ない。このあたりのことは実は梅田・平野対談とも関係していることなので、エントリーを改めて書きたいと思う。
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