昭和天皇の侍従長/戦前の華族社会

Posted at 06/12/02 Trackback(1)»

昨日はなんだかんだと忙しく、昼間は張り詰めて緊張した状況にあったし、夜は人手不足で大忙しだった。ただ気持ちが忙しいという部分が多く、現実にはそれほどものすごく忙しかったというわけでもない。なんだか疲れが出てうとうとしたが、そのあとは割合元気が出てきて、人間というものはふしぎなもんだなと思う。

夜は外で食事。薩摩黒豚の林檎ソースというのが案外美味しかった。夜風呂に入ろうとしたらぬるくて入れず、お湯を汲んできて足湯をした。(地元の市内は温泉が出るので、温泉組合というのに入っていると、各家庭には家に温泉を引いているところもあるし、また道端にタンクがあってそこでお湯を汲むことも出来る。共同浴場が地区内に二つあり、これも組合員ならいつでも入れる。)

入江相政『いくたびの春』(TBSブリタニカ、1981)を読み始める。昭和天皇の侍従を長く務め、最後には侍従長を務めた著者は、学習院の高等部を出たあと東大の国文に入り、『狭衣物語』を専攻して学習院に奉職、昭和8年には教授になったが昭和9年には侍従として宮中に入ったのだという。実家の爵位については書いていないが華族であることは間違いなく、入江家は冷泉家の分家筋なのだという。著者の父も冷泉家から養子に入っている。

いくたびの春―宮廷五十年 (1981年)

ティビーエス・ブリタニカ

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大正・昭和前期の華族社会・学習院界隈の話はどれを読んでも面白いなあと思う。貴族社会に最も近いものが、日本にもあった時代があった。犬養道子の『ある歴史の娘』でもそうだし、華族赤化事件を描いた『侯爵家の令嬢』だったか、書名はあいまいだが、そのあたりの話も面白かった。この時代の華族の若者たちはみな能天気で明るく、変ないたずらをしたり育ちのよい人たちの屈託ない社会、という感じの描かれ方をしている。そこにマルクス主義の問題意識を突きつけられたら、ころっと参ってしまう人たちもたくさんいただろうなあと思うくらいは純粋だ。

入江も、学習院の教授として弟のような生徒たちとずっと古典を講読して行ければよい、と思っていたというが、この当たり、昔はそういうタイプの先生たちがたくさんいたなあと思う。私も教員になったのはそういう教師像が頭にあったからなのだが、時代はそういうものの存在を許さない方向に変化してしまった。そういう意味で言うと、ある面人間社会というのは退化しているのだと思う。

描かれているエピソードはどれも面白いが、侍従として天皇の名代で各地に派遣されるときに周りの扱いと、母や妻を疎開させてその疎開先から娘を学習院の疎開先に連れて行くときの肩身の狭い思いとのギャップがすごいなと思う。もちろん明治人らしい謙譲や言わずもがなのことは言わない口の堅さのようなものがあるからかかれていないことももちろん相当たくさんあるのだろうということは思わせるが、しかしそれでもかなりいろいろなことがかかれていて、非常に興味深いことは多い。特に宮中の内部、侍従たちの様子についてかかれた文章などあまり読んだことがないから、そのあたりは読んでいて非常に興味深いと思った。もちろん文字通り墓まで持っていってしまった話はいくらでもあるだろうけれども。未読了。

今日も朝からちょっといろいろあって忙しかったが、日記を書くくらいの時間は出来たのでこうして書いている。天気がよくなってきた。すべてが上手く、よい方向に行くとよいのだが。


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