チャップリンのステッキ/電離水素領域

Posted at 06/11/16

昨日は少し本が読めた。夜の仕事はまあまあの忙しさ。このくらいの感じが自分にはちょうどいいが、営業的にはもう少し忙しいほうがいいのだろう。家に帰ってきて夕食を取りながらテレビを見ていたらずっと津波のニュースをやっていた。北海道にはあまり被害が出ていないようだが、千島列島はどうなのだろう。救援活動等がどうなっているのか、少々心配な感じがする。

野村進『千年、働いてきました』読了。このあとのどのエピソードも面白い。ブリキ製造業がカンテラを作ることでガラスの技術を得、それが鏡の分野への進出の始まりで(ところで鏡台作りが静岡の地場産業であるということははじめて知った)、トヨタにバックミラーを納めるようになり、今では全国の4割のシェアを持つのだという。岡山の林原産業のエピソードなども実に面白いものが多かった。

千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン

角川書店

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老舗の企業が成功するのは結局本業を守りつつその応用分野への進出程度にとどめることで、本業が何かという意識を捨てたらダメだ、という話はなるほどと思った。どうやったら独創的なアイデアを見つけられるか、という問いに対し、林原社長は単なる組み合わせだと思う、という。著者はそれを敷衍し、「チャップリンのステッキ」というたとえを使う。どた靴もだぶだぶの服も山高帽も付け髭も使い古されたギャグの小道具に過ぎなかった。チャップリンの独創は、それらを組み合わせてそれにステッキを加えたに過ぎない、という話である。しかしそれによって統一性が生まれ、全く新しいスタイルのコメディアンが誕生したと観客の目には映った、というわけだ。この話は非常にわかりやすいと思う。

周りを見渡す目と自分の仕事を客観的に見る目、それを組み合わせる工夫とそこに「世の中に役に立つ」可能性を見出すセンスがものをいう、ということになるだろうか。こういうことはまさに言うは易し、という感じのことで、日々の仕事に追われている中でそういうことを見出すのは難しいことだろうと思う。しかしチャップリンのステッキという考え方は、いろいろなことについてヒントになるのではないだろうかと思った。

半田利弘『はじめての天文学』。理系の高校生クラスが対象の本のようだが、これはかなり難しいところがある。トップレベルの、天文学に関心のある生徒にとってはきっとかなり面白い本なのだろうと思う。1990年代以降の天文学の研究動向がいろいろと説明されていて、現在の天文学がどのような方法で観測や研究、理論整備が行われているのかということを含め、私が子どものころに知っていたことに比べるとものすごく先のところをいっているということがよくわかった。

はじめての天文学

誠文堂新光社

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彗星の尾にはHCO+という地上には存在しにくいイオンが存在するとか、太陽や太陽のコロナを作っているのは電離しイオンの状態になった電離ガスだとか(これはもっと前から知られているんだろうが中学生の自分には理解できなかったということなのだろう)、以前は散光星雲といわれていた天体系が現在では電離水素領域と呼ばれているとか(なんという散文的な名称か)、へええと思うようなことが多い。天文学の研究も物理だけでなく化学的な知識が相当必要なんだなと再認識したりする。まあしかし観測結果を上手く説明できる理論モデルがなかなか作れないとか、まだまだそういうことが残っている話を読むと、宇宙はロマンがあるなあと詩的な世界に浸ることもできる。

いろいろな分野を見渡していくと、世界はまだまだいろいろ興味深く刺激的なことが多いなあと思う。


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