「借金は石を背負って泳ぐようなもの」/創業1400年の企業/物置からカラヴァッジョ
Posted at 06/11/12 PermaLink» Tweet
昨日朝帰京したのだが、どうも調子が出ず。午前中に友人から電話がかかってきて2、3時間話し、午後は昔の教え子から電話がかかってきてこれもまた2時間近く話した。話すことはたわいのないことだが、こちらの調子がよければいろいろ考えるネタにもなるないようだったのだけど、どうも調子が悪く、ただしゃべっただけという感じ。
読むものもなく、昨日の帰京時には昔一度読んだ持田鋼一郎『高島易断を創った男』(新潮新書、2003)を読む。これは高島嘉右衛門の伝記なのだが、最初読んだときに、歴史にはこういう人もいるのだなあと面白く思った覚えがある。前半の江戸末期の部分は商人の成功譚の波乱万丈、みたいな感じでこういう感じのものは昔よくあったような気がする。後半は明治政府や外国人とのやり取りが多く、戦後に成功した商人の一代記のようなものと似ている部分がある。
高島易断を創った男新潮社このアイテムの詳細を見る |
印象に残ったところいくつか。「(商人が)採算を度外視して損失を出すことは武士が戦場で戦死するのと同じことであり、巨額の借金をすることは石を背負って泳ぐに等しいことである」という父の教え。なるほどうまいことを言うものだと思う。もうひとつ父の遺言。「俺の金は天に預けてある。自分で努力してその金をつかめ。」なるほどなあ。これはどこかの宗教の教えにありそうな言葉だ。あるいは心学あたりにもこういう言葉があるのだろうか。
ペリー来航の夜、大きな火の玉が出現した、という。これは流星の中でも速度の遅い、火球というものではないかと読んでいて思った。叔父の経営する数寄屋橋の仕出屋が真夜中なのに明かりが煌々とつき人の出入りが多いので聞いてみると、異国船の噂で江戸中が騒ぎになり、城中では将軍家慶が危篤で2千人分の仕出しの注文があったとか、なかなかリアルである。嘉右衛門自身の言葉では役に立たない学者のことを「手足の生えた本箱」と評したと杉浦重剛がいっているらしく、高島らしくもあり、杉浦らしくもある。まだ未読了。(以前一度読了しているが)
午後遅くとにかく気分転換をしようと丸の内の丸善に出かけ、ぶらぶらする。今考えてみたら何か天文学の本を買えばよかったと思うが、そのときは思いつかなかった。結局野村進『千年、働いてきました 老舗企業大国ニッポン』(角川Oneテーマ21、2006)を購入。これも読みかけだが、日本には創業100年を超える老舗企業が10万社以上存在するのだという。一番古いのは法隆寺創建当時からある金剛組で1400年以上。まあこれは別格だが、200年、300年ならごろごろあるようだ。これは世界的にも特殊なことらしく、ヨーロッパの創業200年以上の企業だけが加われるエノキアン協会で一番古いのはフィレンツェのエトリーニ社で、1369年創建だそうだ。日本にはそれより古いのが100社近くあるという。
千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン角川書店このアイテムの詳細を見る |
そしてもうひとつ特徴的なのは、これらの企業の半数が製造業、つまり職人の企業なのだという。これはよく言われるように日本は職人の地位が高いということもあるが、もうひとつには権力の手厚い庇護があったこと、逆に言えば職人の側が権力を信頼していることも大きいということを著者が書いていて、それはなるほどと思う。職人と権力の相互信頼関係のない社会、たとえば植民地社会などではこういう老舗企業は成立し得ないというのはその通りで、実際そのようである。
この本ではそのような老舗の職人的な企業が、実は携帯電話を作るような技術に深く関わっているという話が展開されるらしいが、まだそこまで読んでいないので、楽しみにしたい。
今朝のニュースで一番受けたのはこれ。
英王室の物置から名画、カラバッジオ作112億円(読売新聞) goo ニュース
エリザベス1世かジェームズ1世が購入したのということか。どっちの好みなんだろう。何しろカラヴァッジョだ。それにしてもうちの物置からもカラヴァッジョが出てこないかなあ。出てこないことだけは断言できるが。
ものを書いているとだんだん頭がすっきりしてきた。体調を維持する秘訣は私の場合、日記を書くことかもしれないと思う。
***
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