秋らしい秋/『好かれる方法』/相変わらずの小泉人気

Posted at 06/10/17

良い天気が続く。本格的な秋になってきた。しかし、こんなによい日和が続くのも、何年ぶりかのことではないか。最近は「天候」といえば「不順」と返ってくるような感じだったが、よく晴れて、乾燥して、日の暮れが釣瓶落としで、朝夕は放射冷却で一気に気温が下がる、じつに秋らしい秋である。一年で最も気持ちがいい季節、とFMのアナウンサーが言っていたが、本当にそのとおりだ。

相変わらず毎日作業続きだが、昨日も夕刻に出かけ、丸の内の丸善で本を物色した。オルハン・パムクが何冊も積んであったのはさすがに商魂だが、一冊が高くて手が出ない。しかしぱらぱら見た限りでは『雪』も『私の名は紅』もいい感じの小説だ。そのうち読みたいと思う。

買ったのは矢島尚『好かれる方法』(新潮新書、2006)。小泉政権のPR戦略で有名になった、「プラップジャパン」の矢島社長が書いている。立ち読みして買うことに決め、レジに持っていったら、背後に水色と白の太いストライプのサッカーユニフォームがガラスフレームの中に納められていた。背番号は10で、Diego.Mとサインされている。気もそぞろで会計を済ませ、女性店員がおつりを渡して「ありがとうございます」と言うのを待って、「あれ、マラドーナですか」と聞くと、にこっとして「そうです」といった。へええ。マラドーナのユニフォームかあ、と思いつつ何度も頷きながらレジをあとにした。いいなあ。

好かれる方法 戦略的PRの発想

新潮社

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『好かれる方法』はまだ60ページ。日本では馴染みの薄い「PR」という仕事について説明している。PRはPublic Relationsの略だから、つまりは「公的な諸関係」ということになる。この言葉とPRという行為がどういう関係があるのか、昔から謎ではあったのだが、著者は、つまりこの「公的な諸関係」をより良くするのがPRという仕事なのだ、と明快に説明してくれ、なるほどと思う。企業はさまざまなステイクホルダー(利害関係者)に囲まれて成立しており、公的機関・顧客・従業員・地域等、多くのステイクホルダーとの関係をよりよくするための活動だというわけである。

一例として二子玉川の玉川高島屋ショッピングセンターの例が上がっていたが、二子玉川のブランドイメージを確立したのがこのプラップジャパンで、その中には多摩川をきれいにしようというボランティア活動も含まれていたのだという。

一方で広告代理店との違いも説明されている。『戦争広告代理店』という本ではルーダー・フィン社が描かれていたが、あれは実際にはPR会社なのだという。エスニック・クレンジング(民族浄化)という言葉を発明しプッシュしてセルビア側を追い込んだ会社である。広告代理店は広告の取次ぎをすることでマージンを取るビジネス、PR会社はその会社のPR活動をすることで時給を得る、フィー・ビジネスなのだという。

広告代理店は新聞で言えば広告欄に関わる仕事だが、PR会社はむしろ記事本体になることを作り出していく会社だという説明も、なるほどと思う。

PRという活動はどんな仕事においても重要なことだと思うが、つまりはその仕事の本質について、さまざまなステイクホルダーに理解を深めてもらう仕事、つまりある意味啓蒙的・教育的な部分を持つ仕事ということになるだろう。またそうした活動をしながらその仕事の内容をよりブラッシュアップさせるという意味合いも持つといっていいのではないか。多摩川をきれいにしようという運動や福祉施設で作ったものの販売所をショッピングセンター内に設けたり、区役所の出張所を設けたりする方法は、いろいろな面で仕事の仕方や考え方の改革につながっていくわけで、ある意味非常に意義深い仕事だと感心した。

しかし『戦争広告代理店』で明らかにされたように、「顧客」の利益を徹底的に追求すると、ある意味破滅的な影響をもたらすこともある。「教育は恐い」とはよく言われるが、PRも同じような部分がある。ファンダメンタリストの教育がテロリストを生み出すように、PR活動もうまく行き過ぎると何らかの暴走的な現象が起こることもありえる。正の方向へも負の方向へも、大きな可能性を持った仕事だと思う。

***

小泉前首相「当面充電」 退任後初めて補選応援(共同通信) goo ニュース

「小泉人気」は変わらず 首相退任後初の補選応援(共同通信) goo ニュース

小泉前首相の人気は相変わらず凄いものがある。辞めるといって本当に予定通り辞める人間というのが、これだけ日本人に好かれるというのは、ある意味本当にこの人が日本人離れしているということでもあるだろう。首相の重荷を下ろして、軽口も絶好調である。

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