「ウェブ進化論」とハーメルンの笛吹き男/媚中の具体例/ヤンキー先生とシンクロ銅メダルの教育再生会議

Posted at 06/10/15

昨日はずっとネット関係でいろいろやっていた。やらなければいけないことは多いが、ネット作業はいろいろなところに負担がかかるので、あまり長時間は出来ない。体の調子を整えながら、少しずつやっている。

午後新宿か銀座に出かけるつもりだったが、気がついたら8時を過ぎていたのでやめて、近場に買い物に行く。駅前の書店で梅田望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書、2006)を購入。西友に戻って夕食の買い物。

うちに戻って英語の勉強をしたり作業を続けたりしながら『ウェブ進化論』を少し読む。これは友人に以前勧められていて、あまり読む気がしなかったので買わなかったのだが、状況を理解するためには必要かと思って買ってみたのだけど、基本的に「革命」を鼓吹するアジテーターの文章で、高橋哲哉の『靖国問題』とかマルクスの『共産党宣言』を読んでいるような気分になってくる。こういう本がなぜ評判になるのか、感覚的には理解しにくい。「ハーメルンの笛吹き男」がまた出たか、という感じである。ネズミも退治してくれるが、子どもたちもどこかに連れ去ってしまいそうである。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

筑摩書房

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指摘していることは多分現象として興味深いことであることは事実なのだが、間違ったユートピアを志向しているその奇妙な思想性のようなものが一番奇矯な印象を受ける。「世界政府が開発しなければならないシステムをすべてつくろうというのがグーグルのミッションだ」というグーグルの若手の言葉が紹介されているが、このミッションは「使命」であり「伝道」でもあろう。この本はそういうものの「伝道の書」であり、著者は「宣教師」であるのだろう。そういう臭みがこの本には随所に見られる。シリコンバレーというのは現代のヨルダン川渓谷なのかもしれない。

まだ40ページ読んだところでこれなので、最後まで読むとどんな感想になるか先が思いやられるが、まあ聖書もコーランも仏典もいちおうは読んだ方がいいという観点から言えば、「批判的に」読んだ方がいい一書だろうと思う。

北朝鮮問題は国連で非難決議が採択され、北朝鮮に対して始めて国連憲章七章に基づく制裁が課せられた。国連加盟国はすべてがこの決議に従う義務を持つので、武力行使は伴わなくても北朝鮮にとっては相当のダメージになることは確かである。次期事務総長を出した韓国と、制裁決議を課せられた北朝鮮。同じ半島上、同じ民族の国家がこれほど国連の場で明暗が分かれるというのもある意味痛ましいことではある。韓国が北朝鮮を吸収合併するのが最も望ましい国のあり方だと思うが、韓国にはそういう気概が基本的に感じられない。統一への意志が強いのは、いまだに北朝鮮の方なのだと思う。核もまたその表現なのだが、やはり南北で根本的なところがずれている。日本でも山崎拓が米朝対話を主張したり、相変わらず北朝鮮のエージェント的に動く人がなくならない、というか北朝鮮も今まで培ってきた人脈を総動員して米朝直接対話実現に必死なのだと思うが、安倍政権下の日本でそれが受け入れられると思うほうがどうかしている。

日中会談関連の記事がこちらにあり、「媚中」とは具体的にどういうことなのかについて具体的に考えさせられた。会談直前、安倍首相に中国側から「挨拶」の変更を求めてきたと外務省高官に知らされ、首相は、なぜこちらの挨拶の内容を中国が知っているのか、また中国の挨拶の内容をこちらが把握しているのかを尋ねると高官は「沈黙した」のだという。日本の施政責任者の中国訪問という形で既に中国側に相当譲歩しているのであるから、それ以上の外交上の対等性について一歩も譲ってはならないのは当然のことだ。結局事前に決定していた「あいさつ」はキャンセルになったという。

もうひとつ、歴史認識問題で、安倍首相が「過去の歴史の問題では、わが国60年の平和国家としての歩みに正当な評価を求めたい」と発言し、温首相から「評価している」、胡主席から「信じている」という言質を引き出したことが重要だと書かれているが、その部分を「歴史」として主張することが日本のアドバンテージにつながる可能性は当然あるわけで、最低限の地歩だとは思うが、「ここ六〇年の日本は正当に評価すべき」と認めさせたことは大きい。そのあいだの中国の混乱やチベット・ベトナム・インド等に対する侵略行動を非難するための橋頭堡として、最低限そこは必要である。

安倍首相は、やはり基本的にこうした国難に対処することが運命づけられている首相なのだと思う。チャーチルがヒトラーの天敵であったように、安倍晋三は金正日の天敵なのだ。そしてチャーチルが最終的にヒトラーを破滅させたように、安倍首相は金正日を破滅に追い込むだろうと思う。

教育再生会議に関しては、こちらをはじめ各所で厳しい批判が出ている。義家弘介氏や陰山英男氏、あるいは小谷実可子氏の起用は国民各層からの人気取りという部分が大きいとは思う。

「こうして見ると、保守派の学者は一人もいないと言ってもいい。左翼的な教育論やフェミニストの主張に対してきちんと反論できる保守派の理論家は一人も入っていないのである。というより、思想いかんに関わりなく、本当に教育を専門としている学者が入っていないのである。とくに、これまでの教育関係の審議会でさんざん強調されてきた、また世論も強い関心を持っている家庭教育の専門家が一人も入っていない。学問・学者を正当に評価し、重んずるという精神が現れていない。」

このあたりにはもちろん林道義氏の主張や理想がはっきりと現れているわけだが、私自身としてもこの会議で何ができるのかはどうもよくわからない。ただ、首相と山谷えり子補佐官が人選をしたということは、一定の狙いがあるのだろうとは思う。ここで審議されるのは基本的に教員免許の更新制、外部評価の義務化、教育バウチャー制といったある意味アメリカ的な改革であるし、左翼的な日本の教育制度風土とは必ずしも適合しない。そういうものをこういう人たちに論議させるということで国民的な合意形成を図ろうとしているのかもしれない。

あるいは、こちらの指摘どおり外交上も「安全運転」であるように、選挙の洗礼(具体的には参議院選だが)を経るまではあまり鮮明に安倍色を出さないようにして、ある種のダミーとして考えているのかもしれない。途中でメンバーが変わっても、国民の印象としては最初のヤンキー先生やシンクロ銅メダルのほうが印象に残るから、なんとなく「国民の味方」みたいな漠然とした雰囲気が残るということなのかもしれない。いずれにしても、安倍晋三という人は、政治を良く知っている人だなあという感想に至ることが多い。

Too Many Expressions ―表現狂時代―というサイトを作りました。人間の行動の根本にある表現とその可能性について考えていきたいと思っています。このブログおよび『読書三昧』もその一環として位置づけなおす方針です。

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