青いクロッキー帳/超絶技巧の江戸小紋

Posted at 06/10/03

青いクロッキーノートを買った。中の紙は薄クリーム。そこに万年筆のブルーのインクで思いついたことを記していく。

私はアート的なことは何も出来ないけれども、アート的なパーソナリティーを持っているのだとだんだん自覚してきた。そういう方向で生きるためにはどうして行けばいいのかは、まだ模索している段階なのだが、クリエイティヴィティを発揮する方向で動いていかなければならないと思う。つくるという方向。

***

『有元利夫 絵を描く楽しさ』読了。とても染み通るように読んだ。村上隆の本にも強く感銘を受けたが、有元の本はもっと心の奥のほうに届いた感じだ。有元の夫人から見た有元の像も書かれているので、本人が主観的に考えていたことと回りから見えていたことがともに見えて、何をどうしなければいけないかがよくわかる。アートというものは、四六時中それに夢中になっていなければいけないもので、作品をつくっていなくても、何か作っている、という姿勢からしか生まれないのだと思った。多分文章を書く仕事も似ているところがあって、もちろん気分転換や息抜きがあっても、たましいの奥の底のほうでは何かを常に探っていたり、化学反応のように何かが進んでいたりする。そういうものなのだなと思わされた。

デザイン科をでて、何をやっているのかなかなか認められなくても自分の中で必然性やあるいはリアリティを見つけてそれを絵にしていく。そしてそれで生活を立てていくわけだから、世間の評価と認知というものはものすごく大きなプレッシャーだったと思う。今のように何でもありの時代ではないから、70年代にこういうほかにない絵をかけたというのは本当に自らのリアリティに忠実に、そしてそのインスピレーションが必ずあることを信じて描き続けたわけで、ある意味38歳という夭折も仕方がなかったのかなとさえ思う。有元の絵にはある絶対的なものがある。それが当時の人にはなかなか見えなかったのだと思う。今から見ると、あまりにも明らかなものであるのに。


有元利夫 絵を描く楽しさ

新潮社

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昨日家を出たのは3時前だった。有元の絵をたくさん持っている小川美術館で小杉小二郎展をやっているというのをネットで見て。この画家のことはあまり知らなかったが、なるほどなあと思いながらみた。ちょっとカッサンドルっぽい気もしたが、『ノルマンディーの船着場』などは面白い。全体に、とても色がきれいだなと思った。

半蔵門で降りて番町の街を歩いたがこのあたりは久しぶり。場所が見当がつかずネットで見た地図を暗譜して小川美術館にうまくたどりついたが、なんとなく予想外の雰囲気。美術館というよりは高級な画廊ということなのだろう。500円のミニ作品集を買う。美術館を出たあと緑の方に歩いたら、それは靖国神社で、実はいつもうろついているあたりからそう遠くないということが判明。せっかくなので靖国神社におまいりする。落ち着いた雰囲気で、昨日はなぜか背広の人が多かった。

そういえば昨日は書かなかったが、一昨日は雨の中、九段下の『昭和館』に出かけたのだった。展示も見たが、いまいち焦点が絞りきれていない感じがした。子どもに見せるというならこの程度でもいいが、昭和と言う時代にもっと迫る展示を、せっかく国立で立派なビルを建てているのだから、もっとやりようがある気がする。カタログのようなものもあっていいと思うのだが、『昭和のくらし研究』という4分冊の立派なものを1000円で買ったけれど、どちらかというと紀要的なもので、図録的なものがあればいいのにと思った。

一昨日は雨の中そういう重いものを抱えて歩き回ったのだが、昨日は曇り空でその点はましだった。神保町に歩いて三省堂や東京堂で軽く本を見た。そうだ、高山本店の前でみわ書房が店を開いていて、そこで『私の履歴書』1,2(日本経済新聞社、1957)を買ったのだ。堤康次郎、五島慶太、鈴木茂三郎、大谷竹次郎、それこそ大正・昭和の日本の大立者という人たちが並んでいる。いつ読む時間が取れるかわからないが、興味深いものだ。

そのあと半蔵門線で三越前に出、三越本店で伝統工芸展を見る。一昨日の夜『新日曜美術館』でやっているのを見て、見に行ったのだが、日本の工芸というものは凄いものだなと認識を新たにした。受賞作品はどれも凄いのだが、透き通る薄い絽に両面染めを施した江戸小紋が一番凄いと思った。少しでもずれれば全く台無しになる。作業をテレビで見たときもへえと思ったが、実物の迫力はそれ以上である。

三越の地下で夕食を買って帰った。しとしとと小雨が降っていたが、あまり気にならなかった。

『読書三昧』もよろしくどうぞ。

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by Luke Peterson

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