小川洋子『薬指の標本』

Posted at 06/09/13

昨日帰郷。朝家でいろいろした後、雨が降っていたのでバスで地元の駅に出、東京駅の丸善へ。ちょっと何か読むものがあるかと思って探したら、小川洋子『薬指の標本』(新潮文庫、1999)があった。帯にはベルトラン監督の『薬指の標本』のスチル写真。手ごろな厚さだし、380円と言う値段も手ごろなので購入。

小川洋子『薬指の標本』

新潮文庫

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特急の中で読み始める。表題作「薬指の標本」。ストーリーはある種村上的な世界の雰囲気もありつつ、女性の生理的・心理的な渾然とした感覚が展開する場面があり、こういうところは違うなと思う。ややソフトなサディスティックな描写もあり、いやマゾヒスティックというべきか、ブーンと虫の羽音のような耳鳴りの向うで物音を聞いているような、生理的なわかりにくさというものがある。ただ一つ一つの事柄についての描写はとてもクリアーでわかりやすく、「標本」をめぐって静かに思考が漂っていく。登場人物が、何をルールに動いている人なのかは今ひとつよくわからない。決められたとおりの日常を送っていても、心は必ずしもそこにはない、というある種ありふれた人間なのだろうと思う。そういう人こそ、自分から見ても周囲から見てもどういう人なのか、わからない人なのだろう。

途中で眠くなって読みきれず、八王子から茅野までほとんどずっと寝てしまった。今日になってから少し読み、今読了したところ。実際、フランス映画のような短編だ。結局愛とはこういうものなのかな、とフランス映画を見た後で感じるようなことを感じた。「六角形の小部屋」は未読。

夜の仕事はスタッフが一人いなかったので少々慌しかったが、まあなんとか。夜は寒くて、冬用の布団一枚では少し冷えた感じ。今夜からは毛布も出さなくてはと思う。信州の秋は、雨が続くとすぐ寒くなってしまう。

今朝は用事で松本に出かけ、先ほど帰ってきたところ。今日もなんだか忙しい。

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