阿部謹也先生死去

何か大事なことを忘れている様な気持ちだったのだが、何ををわすれていたか思い出した。

阿部謹也先生がなくなられた。謹んでご冥福をお祈りしたい。

わたしは阿部先生の熱心な読者ではなかったが、私が西洋史を専攻したことのひとつのきっかけを作ってくれたのが先生の著書であったことは事実だった。一橋大学の学長なども勤められ、社会的な地位もある種の頂点であったとは思うのだが、1995年の『世間とは何か』以降はある種の逆風の中に居られたのではないかと思えてならない。今著書を振り返ってみるとそれ以降は私もあまり読んでいないということに気づくのだが。

ある学問を究めた人が、晩年になって畑違いとも思われることに発言を始めることがよくあるが、日本では、最近は特にそういうものは黙殺するという傾向が強いように思う。そこにどういう真実があるのか、そういうものは逆に高度すぎて、あるいはあまりにも浮世離れしていて、あるいはその該当の分野の方法論とかけ離れていて、分からないところ、理解されにくいところがあるのだけれども、何かそういうものには大切なものが含まれているのではないかという気がする。

死やそれに付随するもろもろの現象が単に生理的なものとして片付けられていく傾向とそういうものは何か関係がある気がする。