MSウォークマン/感動と感想

Posted at 06/08/09

昨日帰郷。さすがに夏休みも本番のせいか、特急の車内はほとんど満席だった。普段は窓側の席が取れるのだが、今回は通路側。ただ、通路側は窓の外の景色は見えないけど、車内で手洗いに行ったりごみを捨てたり網棚の荷物を降ろしたりするには便利なので、混んでるときはむしろ落ち着く面もある。

今回は金曜から旅行に出ることもあって荷物が多く、またしばらく使っていなかったメモリースティックウォークマンを出してきてアンジェラ・アキ『Home』を録音し、ずっと聞いていた。というか昨日は書かなかったが横浜への行き帰りもずっと聞いていたのだった。

Home (通常盤)
アンジェラ・アキ
ERJ

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私は基本的にイヤホンとかヘッドホンというものが苦手なのでこういう物はあまり使わず、初代ウォークマンもCDウォークマンもあまり使わないうちに調子が悪くなってしまったのだが、MSウォークマンは機械仕掛けの部分がほとんどないせいか、そういうことはないようだ。ただ知らないうちに型はどんどん古くなり、メモリースティックのタイプも店頭ではMGマジックゲートというタイプがなくなっていた。月曜日、単なるマジックゲートを家の裏のヤマダ電機で買って合うかどうか試してみたのだが、ちゃんと録音出来たので助かった。

普段、電車の中では本を読むことがほとんどなのだが、横浜への行き帰りも今回の特急もアンジェラと別のメモリースティックに入れてあったルイ・アームストロングを聞いていたらあっという間に眠りに落ち、気がついたらもう長野県に入っていた。少し冷房が効きすぎていて、半袖のポロシャツの上に薄手のカーディガンを羽織っていたのだが、ズボンが麻だったせいか足元が冷えて困った。旅行のときも長時間冷房に晒されるからちょっと考えておかなければ。

東京で出かけるときには雨が降っていて、仕方なく駅までバスに乗ったのだが、郷里は晴れ。結局一日中、ずっと晴れていて、夜中に少しだけ雨が降った。今朝は晴れている。例によって朝は肌寒いくらい。今(7時45分)でもトレーナーを着ている。ただこれから本格的な夏の陽射しになりそうだ。空は怖いくらい青く明るい。遠くの山は、塗りたてのグリーンの絵の具のように緑色だ。夏は湿気が多いから、それでも少しかすみがかかっているのだけど。

関東の人の日記を読んだら今日は土砂降りのようだ。台風はあっちの方へ行ったのか。

最近睡眠時間が少ない傾向にあるが、昨夜は涼しかったのでよく眠れた。少し冷房病の気が出ているので気をつけなければと思う。

電車の中で(少しは起きていた)『文学界』9月号を読む。高橋源一郎「ニッポンの小説」は小島信夫『残光』。これを全文引用で批評しようという試みだ。高橋という人はあまり読みたいと思ったことはないのだが、こういうエッセイ的なものは時に面白いことがあるのだなと思う。小島という人は全く奇妙な作家で、どの小説も最後まで読めたことがないのだが、ある種の人びとにはたまらなく面白いらしい。私は基本的に(今のところ)小島ワールドには縁なき衆生のようだが、好きな人が情熱的に語るのを読むのは面白い。その向うに空トボケている小島が見える気がして可笑しい。

文学界 2006年 09月号 [雑誌]

文藝春秋

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残光

新潮社

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鴻巣友季子「カーヴの本棚」。これは書評だが、ワインに喩えた本の雑談という感じ。鴻巣はクッツェー『恥辱』の訳者でもあり、この癖のある小説をみごとに訳している人はどんな人なのだろうという興味はある。「ワインの質を計るのに信用できる指標がたった一つあるとしたら、それは余韻の長さである」と言うワイン・ジャーナルの記述がなるほどと思わせる。私が今まで飲んだワインで一番印象に残っている、つまりその余韻が今でも口の中で思い出せるワインは10年程前だったか銀座かどこかの道場六三郎の店で飲んだボルドーだった。あれはとんでもなく美味くて、鴻巣が書くように「フラッシュバック」がある。私は舌の記憶はそんなにある方だと思わないが、あれはよく覚えている。シャンパンでは浦安のベイヒルトンで飲んだルイ・ロデレールが一番美味かったが、そこまではよく覚えていない。あのボルドーを思い出すと、シャンパンもきっともっと美味いのがあるに違いないと思う。いったいいつ飲めるのかは見当もつかないが。

話はずれたが、要するに作品をワインに喩えて語っているのである。詩人の荒川洋治に「感動とは忘れ去ることであり、感動をこえて残っていくのが感想だ」という言葉があるらしい。つまりその場で感動し、直ぐ忘れ去られるワインや作品は幾らでもあるが、その後に感想、つまり余韻が残るのがよいものということになる。ちなみに「感想の出ないワイン」について、「そういうのは、娼婦のワインというのよ。余韻もなにもあったもんじゃない」というワイン生産者の言葉を紹介しているが、含蓄がある。娼婦を買ったことがないのでへえそういうものですかとしか言いようがないが。ただ感想の残らないセックスというのはあるのかもしれないなとは思う。少なくとも後味の悪いそれは…止めておこう朝っぱらから。

『文学界』も3月号からずっと買っているが、続けて読んでいるとあまり普段は関心のない作家の連載を読むことで好奇心から読んでみようという気が起こったりもする。雑誌の力というものはやはりあるなあと思う。

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