ジダンの頭突き/雨の横浜/農村の土俗と性
Posted at 06/07/10 PermaLink» Tweet
4時起きでワールドカップ決勝を後半から見た。両チームとも得点は前半のみだったので、得点シーンは見られなかった。しかしオフサイドになったイタリアのゴールやジダンのヘッドをブフォンがセーブしたところなど、見ごたえがあった。ジダンが宇宙人といわれるのがよくわかる、ものすごく細かいプレー。六代目歌右衛門が一つの芝居にたくさんの要素を織り込んでいくように、相手のフェイントをかけるためにたくさんの表現をし、的確にパスをしたりドリブルで抜いたりするプレーはジダンだけでなく両チーム多くの選手が身につけていて、これは外人がする歌舞伎のようなサッカーをしている日本では手も足も出ないなと思った。
攻め続けるフランスはシャンパン・ラグビーならぬシャンパン・サッカーとでもいう感じだなと思う。しかしフランス代表というよりガーナかどこかの代表チームじゃないかという感じだったが。
きちんと見てみると、今大会イタリアもフランスもほとんどちゃんと見てなかったなと気がつく。イタリアではガットゥーゾが好きだな。フランスではビエラもよかったが、やはりアンリが素晴らしい。
後半始まってすぐ、イタリア選手の言葉に激昂したジダンが頭突きを食らわし一発退場。サウジ戦でも何かやらかした気がするが、ジダンは基本的に気が短い。短気は損気というか、私も切れそうになったら「ジダンジダン」と六回くらい唱えるようにしよう。フランスの勝利も、ワールドカップも、有終の美も、すべて失った頭突きであった。
イタリアの勝利は素晴らしい。ジダンの退場後、かなり荒れたが、イタリアは冷静にPK戦に持ち込み、5人全員が決めて見事に24年ぶりの制覇。場内のフランスサポーターのブーイングをものともしないしたたかさがイタリア勝利の原動力だった。
いや面白かった。日本がここまで来るのはいったいいつのことやら。
***
昨日は午前中ルコント『仕立て屋の恋』を返しに行く。結局最後まで見なかった。そのまま銀座に出て、ブルックスブラザーズのセールへ。オレンジのストライプのシャツを1枚買う。店員のお姉さんに軽口を叩いたらお姉さんの笑いが止まらなくなって可笑しかった。そんなに面白いこと言ったわけじゃないんだが。教文館に入り、大塚英志『キャラクター小説の作り方』(角川文庫、2006)と舞城王太郎『熊の場所』(講談社文庫、2006)を買う。大塚のは以前立ち読みし、大塚という評論家の評価を自分なりに定めておきたいとも思って買ってみた。基本的につまらないことを言う人だといまのところ思っているが、さて読んでみてどうか。舞城王太郎もよく話題になるが読んだことがないのでとりあえず読みやすそうなのを選んでみたのだが、どんなものだろう。言葉の使い方とかはそんなに凄いとも思わないが、こういう芸風で小説として成立し、芥川賞の候補とかになるというのもどういうもんなんだろうなという好奇心だ。少し読んだ限りでは基本的にあまり感心しないが、最後まで読んでみてどう思うか。プレッセで昼食の買い物をして帰る。
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午後3時過ぎから横浜に行きたくなり、東京駅に出て横浜フリー切符を買い、久々の東海道線に乗って横浜まで。乗り換えて石川町。前に乗っていた水色のボーダーのポロシャツの間から黒いキャミソールが見えていた女の子が不思議なセンスでかわいいなと思った。石川町で降りて坂道を登り、山手本通りを歩く。私はこの道がとても好きだ。雨の中、石畳の舗道を歩く。車が通り過ぎていく。早足で歩いているうちに、前を歩く年配のシスターに追いついた。フェリスのあたりまでは観光客も少なくて気持ちよい。外人墓地の辺りに来るともうまるっきり観光地になってしまうけれど。
港の見える丘公園に出て、庭の見える喫茶店でダージリン。雨の庭が落ち着いていて気持ちいい。客は私ともう一組のカップルだけ。ウェイトレスがかわいい。横浜の雰囲気はどうしてこんなに好きなんだろう。なんということもない木立も、ただ電線の向こうを飛ぶ烏も、なんとなくあはれにいとをかし。平安時代の女官たちも、なんということのない風景も御所の中だからこそあはれに思ったりしたことも多かったんだろうなとしみじみする。
港の見える丘公園のイギリス山からフランス山に歩き、運河を渡る歩道橋を渡って人形博物館の横を通り、山下公園に出る。貨車を六角形に積んである変な現代アートやガウディもどきのタイル張りの水路などはちょっとどうかと思うが、ただただ歩いて気持ちいい。山下公園を端まで歩き、赤レンガ地区への通路を通る。ちょうど大桟橋のところで、ポリスやパイロットと書いた小船がたくさん止まっていて現役の港を実感。キャランティーンというのがわからず帰ってから調べたら検疫だった。ぞ。
マッスルシアターの横を通って赤レンガ地区へ。この倉庫、整備前に来たことがあったが、整備されてなんか人畜無害化されていてがっかり。しかし中に入るととても楽しい店が並んでいて、難なく一本取られる。カレーのレトルトとベトナムのビールを買って帰る。万国橋を渡って桜木町へ。結構歩いた。
帰りは横浜駅で降り、地下街を散歩。横浜は東京とは違い、空気が明るくて開放的だなと実感する。それでいて田舎っポくないのがいいところで、それは千葉や埼玉では無理なのだ。横浜の特権だ。
東海道線に乗る。目の前に黒のフォーマルを着て肩にショールをかけた背の高い絵に描いたような美人が乗っていてなんだかどきどきする。なんだか女の人のことばかり書いているが。品川くらいまで眼福にあずかれるかと思ったら、川崎で降りてしまった。残念。
東京駅で降り、まだ丸善があいていたのでマンガを見て、勝又進作品集『赤い雪』(青林工藝舎、2005)を買う。少し前の時代の、農村の性、という感じのテーマの短篇集。絵はかわいい。永島慎二とかつげ義春とかに近いか。帰って調べたら今年の日本漫画家協会賞大賞受賞作だった。去年は吾妻ひでお『失踪日記』だったから受賞作を二年連続で読んだことになる。佳作という感じ。日本に土俗と性の密接な関係があった時代。今でもあるのだろうか。読了。
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