こころの骨と筋肉/吾妻ひでおの市民性/金正日は北朝鮮にいるのか
Posted at 06/07/09 PermaLink» Tweet
昨日はだいぶ調子を落としていて何もする気がしなかった。しかし実際、ほとんど何もしなかったせいか、だいぶ回復したような気がする。ここのところどうも神経的に相当疲れていたようだ。金曜の夜(というより土曜の朝だが)は8時間寝て、昨日は一日ほとんど何も読まず何も見ず、(刺激の強いものは)何も勉強せずほぼ心を開放して休ませていたという感じだ。何がまずいって、自分の最大の弱点は心が疲れやすい、弱くなりやすいことだと改めて認識する。人は思ったようにしか動けないというが、そういう意味では心は柔軟性を持ったしなやかな強さ、のようなものを持っている状態にしておかないとろくなことがない。強くても脆かったり、弱くて被害妄想的になっていたりすると何もかもマイナスの方に回転し始める。マインドコントロール、じゃなかったマインド・トレーニングとかマインド・ストレッチングのようなものがいつも必要だなと思う。
と考えてみると、心というのは骨というより筋肉のようなものだなと改めて思う。しかしやはり「骨」に当たる部分も精神的には必要だろう。それはスピリッツとかディシプリンとか言うべきものか。「心が折れそうになる」という言い方があるが、そういう「信じるべきもの」がしっかりしていないとだめだなと思う。それは人によってはプロフェッショナリズムのことであったり、宗教的・思想的信念だったり、自分のスタイルであったりするのだと思うが、そういうものが無意識のうちに自らのアイデンティティになるのだと思う。アイデンティティの議論も個人に発するものと集団に発するものでは全然違う方向に流れていってしまうが、私がまず重要だと思うのは個人のアイデンティティであって、それは別に人と共有されていても構わない、というか人と共有されればなおのこと強化されるものだと思う。
しかしたとえばプロフェッショナリズムのようなもの、あるいは宗教的信念のようなものは共有されやすいけれども、個人的な信念やスタイルのようなものは共有されにくいものだと思う。そうなると人は孤立しがちなわけで、そのあたりが団体行動が好きな会社人間と協調性がない学者や個人事業主、自由業者との違いということになるのだろう。私がまあ後者のタイプであることはほとんど論を待たない気がするが、まあ組織で仕事をしていたときは私なりのプロフェッショナリズムはあったんだけど以下略。
shaktiさんから送っていただいた青木保とリービ英雄の対談は興味深いがまだ読みかけ。昨日買った『文学界』8月号はカズオ・イシグロのインタビュー「『わたしを離さないで』、そして村上春樹のこと」があり、これも面白いがまだ読みかけ。この号には佐藤優「私のマルクス」と彼の『自壊する帝国』の書評があり、この書評は左翼の立場からのこの書の感銘が述べられていてちょっと面白い。この国にはまだ左翼という人たちがいて一定の影響力があるんだということはともすれば忘れそうになるが、忘れすぎてもまずい。滅び行く種族であることはまあ違いないとは思うが。クッツェーの訳者である鴻巣友季子の翻訳に関するエッセイも面白そうだ。ついでに言えば柄谷行人の「グローバル資本主義から世界共和国へ」と題されたインタビューがあり、これは萎えるの二乗だ。人が読みたくなるような題をつけたらどうかと思うが、「私は心情左翼ではなくただの左翼だ」と断言したという柄谷のような人間も文壇論壇では大きな存在であるということも時々は思い出さないとまずいということなのだろう。
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吾妻ひでお『うつうつひでお日記』は大ベストセラー『失踪日記』後初のリリースということで期待して買ってしまったのだが、中身は『失踪日記』を書いていたころの絵日記で、人に読ませることをあまり意識して書いていないのである意味非常に読みにくい。途中からそれでも意識しだしたようで、後半は割りと読みやすいが、全部通しては読んでいない。この人は確かに鬱とアル中とで「人間やめてしまった」感が『失踪日記』で全開だったが、今改めて二冊あわせて読み直してみると、実際には非常に常識的な日本人であって、たとえば花輪和一などモノホンのアウトロー(といえばいいのか、なんと言えばいいのか)とは全然違う。自分が家出してホームレスになっているのに、霞網に「けしからん!」と怒っていたり、女子高生好きのロリコンだったり、アル中の病棟で権力的な看護長に憤りを持つ一方で北朝鮮を恐れていたり、一から十まで徹底した小市民であるところがある意味凄い。ここまで徹底できるのもある時代の日本人なのだなととても感心する。ある意味懐かしい時代(ほぼ70年代の感性というべきだろう)を反映しているような気がする。それが70年代リバイバル的な90年代以降の傾向にうまくマッチしたのだろう。
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昨日は何もやらなかったので疲れもせずに朝も5時過ぎに起きてドイツ・ポルトガル戦を見る。シュバインシュタイガーの先制点とヌーノゴメスのポルトガルの得点は見たが、ドイツの2点目3点目は少し目を離している隙に入ってしまった。油断も隙もない。上川主審もお疲れ様という感じである。やはり地元ドイツの後押しは強かった。
北朝鮮のミサイル問題だが、こちらの指摘で心に引っかかっていたことの正体が分かった気がした。6月23日、金正日が乗ったと思われる特別列車がロシアに向かったという報道と、今回のミサイル乱射の関係が、無意識のうちに引っかかっていたのだ。もしそうなら、北朝鮮がそういう権力の空白地帯を自力で埋めることが出来るかどうか。中国とロシアの安保理における対応も微妙になってくる。日米が迅速に動いたのもそういうことがあるのだろうか。
まあしかしそれも憶測の上に憶測を重ね、その上に推測を重ねているに過ぎないので正確な判断は出来ない。ロシアの情報というのは結構当てにならないがときどき妙に真実をついていたりするので難しい。朝生ではそういう話は出ていなかったが、田原は北朝鮮問題ではほとんど勘が働かない(そういう傾向の人なのだろう)のであまり参考にならない。あの拉致韓国人の会見も宋の会見も教祖のいないカルトでの「小さき人々」の抵抗ということになる。その絵を描いたのがもし中国ならどうなるか。まああんまり憶測しても実際仕方がないが。
一方では、金正日がミサイル発射を陣頭指揮に出かけた、という報道もあることは事実で、まあそれの方が常識的にはうなずけるだろう。でもこれも本当かどうかはよくわからない。こういうことも、北朝鮮が崩壊した後ならいろいろとはっきりしてくることなのだろう。それが明日になるか、10年後になるのかは分からないけれども。
そういえば今朝の時事放談で宮沢元首相はアメリカは北朝鮮はどうせ滅びるからまじめに相手を理解しようという気がなく、直接交渉をする気もない、というようなことを言っていた。ひょっとしたらそのへんは本音かもしれないが、だからといって北朝鮮の内部の分析を怠ったら結構まずいのではないかと思うのだが。まあその辺アバウトなのがアメリカであることは確かだ。マッカーサーが進駐したとき、幣原喜重郎のことも知らなかったくらい無知な人たちが占領を実行したのだから。
いずれにしてもとりあえずは安保理の決議案の審議がまずは最大の焦点であることに違いはない。
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