サッカーのSomething/カフカを読むこと
Posted at 06/06/23 PermaLink» Tweet
今朝はブラジル戦、今回はテレビでもネットでも見られる環境になかったので見ないことにして健闘を念じていたのだが、やはり気になってあまり深い眠りにならなかった。空が明るくなってきたのでラジオをつけてみると、後半15分で3対1で負けている。これは駄目だ、と思って結果だけ聞こうと思い、横になると左足のふくらはぎがこむら返りを起こしかけた。慌ててストレッチをする。そのあともうつらうつらしながら寝ていると、いつもの時間に起きられない。よそのうちのテレビかラジオの音が聞こえたので私もまたつけてみると7時を回っていた。結局4対1か。うーん。前半に先制はしたもののロスタイムで追いつかれ、後半は一方的。いつものパターンだ。こういう結果だと、むしろ見ればよかったと思う。これからいろいろ批判が噴出したり、「日本のサッカーのあり方」論が順次ウェブ上などでも口角泡が飛ばされることだろう。
トルシエ時代はヨーロッパ的な組織サッカー、ジーコ時代は南米的な個人技サッカーと、監督の個性によってチームのつくりが180度違うのは、今後は考えた方がいいような気がする。「日本的な」(勝てなければ駄目だが)サッカーをどう組み立てていくのかがなければ、いつまでたってもベーシックなところで動揺しつづけることになる。
しかしそれにしてもワールドカップという大会はハードな大会だ。よく戦場に喩えられるが、それだけの「本当の力量」のようなものがないと勝ち抜けるものではないのだろう。やはりまだSomethingが足りない感じがする。Something,something,something.
***
昨日は雨が降ったり上がったり。午前中に図書館にナイポールとオンダーチェを返しに行き、『カフカ短篇集』(岩波文庫、1987)と『世界文学全集29 カフカ 城 変身』(河出書房新社、1962)を借りてくる。短編をいくつか読んだが、まさに「わけがわからない」感じ。先に長めのものを読んだ方がいいのかな。「城」はずいぶん長いから「変身」を先に読むべきか。村上春樹の短編もわけのわからないものが多いが、というよりこれを読むと村上がカフカに相当影響を受けていることがよくわかるが、というかそんなことはいうまでもないのだろうけど、まだ現代日本の風俗とかがかかれているから情景そのものにそんなに違和感はない。しかしカフカは20世紀初頭プラハの情景を知っていればまだそういう想像ができるのだろうけど、と書いているうちにやはりこの人は詳細に研究されなければならない文学上の巨人なのだということがひしひしと認識されてくるが、年譜に沿って作品を読むくらいの気合がないと「理解」が難しい人なんだなと思う。やはりこの人は20世紀文学の創始者なのだ。プーシキンがロシア文学の創始者であるように。プーシキンは気合をいれて全集を全部読んだが、20世紀文学を理解するためにはまずカフカの全集を全部読むくらいの気合がいるのかもしれない。多分世の中には、そうやって読まなければならない作家――本当にオリジナリティのある作家――が、幾人かいるのだろうと思う。21世紀文学にとっては、それは誰だろうか。
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今朝は曇り空。ザムザが毒虫に変わった日は雨だったと書いてあるが、bad newsの朝はとりわけ憂いを感じさせる。ゼルキンのピアノを聞きながらキーボードを叩いていると、なんとなく体を揺らしたくなってくる。アンジェラ・アキほど揺らしたら書けないが。
***
時間のあるときにアップしようと細切れの時間でカフカの年譜を読む。いろいろな背景が気になってくる。結核での死の間際の二つの言葉が印象的だ。医師がベッドを離れようとするのを「行かないでください」とひきとめ、「行かないから大丈夫」と返事を受けると、「だけど僕の方が行ってしまう」と小さな声でつぶやいたこと。断末魔の苦しみの中でモルヒネを欲しがり、「私を殺してください、でなけりゃ、あなたは人殺しだ」と言ったとのこと。カフカの本質は機知と諧謔で、それはオリジナリティのある作家の条件のようなものである気がする。それともそれは、表現者の「業」とでも言うべきものか。
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