保坂和志『もうひとつの季節』/ポール・マッカートニーを好きだったころ
Posted at 06/05/08 PermaLink» Tweet
昨日。午前中友達と電話で話し、昼前に出かけ、東京駅近辺で本屋を梯子。丸善の丸の内本店で保坂和志『もうひとつの季節』(中公新書、2002)、丸善の日本橋店で山口翼『志賀直哉はなぜ名文か』(祥伝社新書、2006)を購入。コレドの地下のプレッセで買い物をして帰宅。
昼食後、主に『もうひとつの季節』を読む。これは『季節の記憶』の続編で、今回は猫の「茶々丸」が登場し、この猫が「探されている」ことを知って「返さなければいけない」ということをめぐっての四人の葛藤が最大の山場という感じ。『季節の記憶』に比べると言わずもがな、という感じの記述がやや見られて、テンション自体はちょっと落ちている感じがした。挿絵も多く読みやすくて昨日のうちに一気に読了。『季節の記憶』では天文の本に夢中なクイちゃんがこちらでは人体解剖図に夢中というのはそれらしくて面白いが、やや説明的になっているところがある。
サイトのアドレスが載っていたので見てみる。なるほど、彼の小説や評論を読むのに参考になるように出来ている。こういうサイトの使い方は面白いなと思う。
解説がドナルド・キーンで、世界文学の中でこの作品を評価しているのが新鮮だ。一種の田園(アルカディア)曲、といわれるとそうかなるほど、と思うし、「少年」の評価が高いのもそうかなるほどなあと思う。プッサンの「アルカディアの牧人たち」の墓碑銘に書かれた「我もアルカディアにあり」という文句を引用し、田園にも死すべき運命はある、というようなことを示唆しているが、確かに淡々とした幸福な日常であればあるだけ、人は死を連想せずにはいられないのかもしれない。「大人たちが時間の意味を論じている間にもクイちゃんと茶々丸は時間を超える遊びに耽って永遠の少年と子猫の姿を見せている。」という指摘はまさにその通りなのだが、まあ私が読んだ小説がそういうものだっただけかもしれないが、「時間の意味を論じ合う」小説などというのは欧米なら沢山ありそうだが日本では珍しいんじゃないかなと思った。
夕方、ネットを見ていたらNenaの"99 Luftballons"のビデオクリップを見つけ、いきなり古い友人にあったような懐かしさに遭遇した。22歳のときにヨーロッパを旅行したときにドイツで買ったミュージックテープに入っていたのだ。よく見るとこのサイトは実に大量のビデオクリップが登録されていることに気がついて、次から次へと見ているうちに何時間もたってしまった。ちょっとついでにリンクしておくと、Wingsの"Mull of Kintyre"、これは中学生のときにポール・マッカートニーやビートルズを聞き始めたときの懐かしい曲(「夢の旅人」という邦題だった)、同じく"Listen to what the man said"(「あの娘におせっかい」)も懐かしい。あのころはポール・マッカートニーが好きだったなあ。周囲にはジョン・レノンが好きな連中の方が優勢だったが、変に思想っぽくないポールの方が、わたしはずっと好きだったのだった。ライヴ・エイドのころからミュージシャンの「社会活動」が盛んになってくると、ポップス自体をあまり聞かなくなってしまったが。それはともかく、セックスピストルズを見たりビリー・ホリデーを見たり、何の定見も無いが、相当いろいろ見てしまった。
『志賀直哉はなぜ名文か』もなかなか面白い。下手な評論より、こういう分析の方が作家に迫れる、ということもあるんだなと思う。
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