ソロー『森の生活』/スコット『アイヴァンホー』/北朝鮮核問題
Posted at 06/04/05 PermaLink» Tweet
昨日帰郷。特急の中でソロー『森の生活』を読もうと思うが、いろいろな意味で敷居の高い本で、なかなか著者の叙述に近づくことが難しい。その主張もかつて自分が考えていたのと似たような部分もあるがそうでない部分がほとんどだ。マサチューセッツの田舎町コンコードで一生のほとんどを過ごした人だとか、断片的なさまざまな情報から人物像を想像するがとらえきれないので、出掛けに丸の内の丸善で亀井俊介『わが古典アメリカ文学』(南雲堂、1988)を購入。この本はピューリタン詩人、フランクリン、クーパー、ポー、ソロー、メルヴィル、ホイットマン、タッカーマン、トウェイン、と来てロレンスの『アメリカ古典文学研究』で終わる。アメリカの19世紀までの文学の鳥瞰図という感じである。
ソローについてのところだけ読んでみたが、相当の変人だったということはよくわかった。時代的にはメキシコとの戦争や奴隷制反対運動、南北戦争のころの人だと言うことになる。エマーソンのトランセンデンタリズムの影響を受けている、というか超絶主義が受肉したような人物だったようだ。メキシコ戦争を進める政府の政策に反対して税金を払わず、一晩監獄にぶち込まれるという経験をしているが、そのあたりのエピソードが人物像のある部分を雄弁に語っているようだ。これは『森の生活』に出てくるエピソードらしい。
今は最初の「経済」というところを読んでいるが、要するに人間が生きるのに最低限必要なものは何かということを見極めようとして、不必要だと思われるものをすべて殺ぎ落とそうという試みをし、その結果がウォールデン池のほとりに掘っ立て小屋を建てての「森の生活」になったらしい。ある種のアメリカ的精神の権化であるような気がする。古典は読むが、古典を解釈してきた歴史、伝統のようなものを顧みようとしない。そういうものは無駄だと思っているようだ。合理主義的=反伝統主義的な思考で、それが宗教的な古典と結びつくと宗教的原理主義になり、自然の力を重視する志向と結びつくとナチュラリズムに結びつき、現代のエコロジズムにも結びつく。いろいろな意味で現代のアメリカを理解するのに、ソローという人を理解することが有効であるように思われる。
しかし正直言って読んでいて辟易することも多い。そういう原理主義的な殺ぎ落としを続けられると、豊かな無駄の楽しみとか装飾の魅力の方に心がひかれる。寝る前にはソローを読む気にならず、これも持ち帰ったスコットの『アイヴァンホー』を読んだが、最初の冗長な描写が終わったあとのガースとウォンバという二人の奴隷の描写が非常に魅力的で一気にほのぼのした。しかし十字軍時代のイングランドの奴隷は幅広の真鍮の「首輪」をさせられ、「誰々の奴隷、誰々」と書かれていたというのはびっくりだ。そういう意味で本当に野蛮(というか暴力的というか)なのはヨーロッパ人だよなあと思う。「鉄の処女」とか、拷問道具のバリエーションもヨーロッパが一番発達しているように思われるし。
昼から夜にかけて仕事。昨日はちょっと閑で困った。仕事が終わって帰ると、NHKニュースの時間が変わっていて不便になった。10時からはNHKスペシャルで北朝鮮の核問題を見たが、瀬戸際政策に翻弄されているのは日本だけでなく、韓国もロシアもアメリカも皆そうなのだなと思った。確かに金親子は天才的な独裁者である。
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